船川 淳志 対談シリーズNever too late to be a GLOBAL MANAGER.

全世界に438のグループ会社をもち、海陸合わせて2万人規模のスタッフを抱えるという一大グローバル企業、商船三井。その人事部長として「人づくり」の重責を担う安藤美和子さんは今、多国籍・多言語・多文化の環境に息づく多様な人達の能力を開花させ、組織の原動力へと転換する力を秘めた、真のグローバルマネジャーの育成に乗り出している。「誰にも変わり続ける力と可能性がある」と語る安藤さんの真意を聞いた。

目次

  • リーダーシップ
  • 想い・情熱

グローバル経営に求められる「価値の共有」

安藤 美和子(あんどう・みわこ)
津田塾大学学芸学部英文学科卒業。1989年大阪商船三井船舶株式会社(現・商船三井)入社。定航業務室コンテナチーム、秘書室、人事部などを経て、香港で3年間勤務。帰国後は秘書室に戻り、関連会社の株式会社フェリーさんふらわあで営業企画室長を務めた後、再び人事部へ。2016年4月より現職。

船川: 本日お招きしたゲストは、安藤美和子さん。株式会社商船三井で人事部長をお務めでいらっしゃいます。安藤さんと最初にお会いしたのは、たしか私が独立したすぐ後でしたから、2000年ごろでしょうか。

安藤: はい、当時私は海外現地法人の管理などを担当する部署から人事部に異動した直後で、船川さんのセミナーにも参加させていただきました。

船川: 1997年と記憶していますが、現社長の池田潤一郎さんが人事部におられて、日本のグローバル教育をどうすべきかということに高い問題意識をおもちでした。簡単に言うと、グローバルマネジャーとして求められるスキルに対して、日本で行われてきたOJT式の研修で身につく能力との間に大きな差が生じているという問題。私はこれを「スキルギャップ」と呼んで、この『Global Manager』の第1号(2000年5月)にも寄稿したのを覚えています。

安藤: それは、今でも、当社のグローバル人材育成のベースにさせていただいています。マネジメント・バイ・バリュー(価値の共有による経営)を実践し、企業固有の価値を本社だけでなく海外拠点にも浸透させなければいけないというお話もありました。

船川: 欧米企業はあのころすでに多様な知識をもった人材こそが経営資源であることに気づき、チームマネジメントやバリューの共有といったソフト面からグローバル組織を強化する試みに着手していましたが、日本は完全に乗り遅れていましたからね。

安藤: まさにそのバリューやビジョンを共有するために、当社が10年前に海外現地法人のコア人材を日本に呼んで行っていた「MOL College」という研修が、2014年に刷新されて「MOLグローバル経営塾」として再出発しています。本社や海外グループ会社のスタッフが感じている言葉や意識の垣根を取り払い、異文化環境におけるマネジメントスキルを身につけた、次世代のグローバル経営を担う幹部を育成することが目的です。

船川: 御社のように世界中に400社ものグループ会社をもつ巨大なグローバル企業では、特に重要なことですね。グローバル経営塾では、本社と現地のスタッフが同じ場所で学びあうのですか?

安藤: ええ、本社を含む世界各拠点のマネジャークラス20名が4カ月にわたるプログラムに参加し、その期間、3回ほど東京に集合するセッションがあり、川崎市にある当社の柿生研修所で寝食を共にします。組織運営やリーダーシップに関する講義、グローバルな事業環境における自己啓発のあり方、そしてグループ共通の価値観である「MOL CHART」を題材としたアクティブラーニングといった内容です。最終日には、社長を交えた経営陣の前で、グループで立案した会社への提言をプレゼンテーションします。

船川: 柿生研修所といえば、私には忘れられない思い出があるんです。東日本大震災が起こったあの日、安藤さんがかつて企画された思考力強化の研修で柿生にいましてね、尋常ではない揺れに恐れをなして誰もが凍りついているなかで、その研修に参加されていた一等航海士の野田さんが素晴らしいリーダーシップを発揮された。彼より年上の人は何人もいたけれど、みんなの安全を確保するために先頭に立ってテキパキと指令を発して、一夜が明けて解散する前には点呼を行い、首都圏すべての鉄道路線の運行状況まで読み上げてくれた。私はそれを聞きながら感動で涙が止まりませんでした。

安藤: 当時、野田は航海士でしたが、海上では常に危険と隣り合わせの状況に身を置き、いずれは、船長として、すべての判断が自分に委ねられる立場に置かれることから、自然とそのような行動になったのだと思います。

船川: なるほど。マニュアルに書かれていないことを自分の判断でどう乗り切るか。野田さんはそれを見事にやった。リーダーシップというのは、有事の極限的な状況下で最初の一歩を踏み出すことなんだなと、その姿を見てあらためて思いました。

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