英文メール強化塾 相手を動かすライティング戦略

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Lesson 26

Who’s the boss here?

目的

本社が相手・解決策の提示

製品を廃棄せざるを得なかったことを本社に受け入れてもらう

状況

【本社と顧客、私のボスはいったいどっち?】

海外に本拠地がある化学製品会社AGJに勤務するカトウさんは、本社のJohn Smithのもとで、日本国内における顧客担当部署のマネジャーを務めているが、本社と顧客との間で板挟みの立場にいて、何かと苦労が多い。本社が権威を守りたい場合も、顧客の要求に適切に応じるためには、現場判断で早急な対応を迫られることがある。

つい先日、製品XY-123の1ロットに問題が発生した。顧客ABC社から異臭が感知されたと苦情が入り、GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析)で調査したところ、不純物が混入していることが明らかになった。そこで、カトウさんはABC社および他の顧客とのトラブルを防ぐため、ロット全部を廃棄することにした。

本社はロット全部を廃棄させたくはないが、一方、顧客は不良品を手にし品質トラブルにより供給が滞ることは受け入れがたい。板挟みになったカトウさんは、本社・顧客の双方に決定内容を説明しなければならない(ここでは、説得が必要な本社へのメールを紹介します)。

イメージ

力関係

戦略

本社上席のJohn Smithとの良好な関係を維持するために、カトウさん自身が日本国内におけるマネジャー権限で決定を下したというよりも、致し方のない状況のもと、決定せざるを得なかったという態度で相手に解決策を提示します。カトウさんに決定権があったか否かについてJohn Smithとの権限争いに突入するより、このアプローチのほうが効果的であると考えられます。

表現の強さ

ポイント
  1. 相手の権威を侵害する「決定」ではなく、問題のある状況への「対処」として表現する
  2. 証拠を提示する
  3. 顧客の力を利用する

e-mail

強化メールの解説

1.悪い知らせを伝える①

We regret . . . that we cannot . . .
丁重に断るときと同じ方法で、悪いニュースを知らせることができます。読み手が受ける衝撃に配慮して遺憾の意を表し、できるなら良いニュースを伝えたかったが、状況のせいでそれはかなわなかったという気持ちを伝えます。
丁重に断るときに使える同じ表現方法:
We regret that we are unable to supply the XY with the specs you requested.

2.権威ある証拠を提示する

Our GCMS
GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析)は、化学物質配合の標準的測定方法であり、ロット廃棄の正当性を裏付ける反証不可能な証拠と考えられます。カトウさんは、決定が主観的なマネジャー権限によるものではなく、技術的決定であったと伝えるため、この証拠を提示します。

3.証拠を率直に説明する

shows
技術的データの解釈に自信を示したいなら、“show”を使いましょう。もし、より謙虚に表現したいなら、“indicate”を使うこともできます。この単語の選択は、その主張および結論を確信しているか否かによるところもあります。

4.自分の目で見てもらう

please see attached
データを提供すれば説得力があるので、相手に自分の目で確認してもらいます。相手があなたを信頼していれば、その証拠データを見ないかもしれません。しかし、もしデータを送らなければ、相手が疑念を抱き、証拠を要求してくる可能性もあります。英語に限らずどの言語であっても、こちらの主張と根拠となるデータが一貫していなければならないことはもちろんですが、データを送ることで主張および結論を裏付けることになります。

5.悪い知らせを伝える②

Unfortunately, we will have to . . .
これもまた丁重に断ることと同様に、不本意ながら悪い知らせであることを表します。「しなければならない(have to/must)」行為を、ためらいがちに伝えます。
丁重に断るときに使える同じ表現方法:
We are very sorry to say that we must decline your kind inquiry.

6.落ち着きのある態度で伝える

inquiry
実際のところ、カトウさんが顧客から受けた内容は苦情であり、問い合わせではありませんでした。しかし、挑発的な単語でこの問題をエスカレートさせないために、あえて、「問い合わせ」と表現します。

7.協力を乞いつつ、相手の立場を認める

We would really appreciate it if you could . . .
丁寧な依頼にも程度によっていろいろな表現がありますが、こちらが頼んでいることを相手がしてくれるかどうかの期待値に従って、アプローチを変えることができます。例えば、“Would you investigate the quality problem, please?”は、文法上は相手が断る権利を認める表現ですが、相手が聞き入れてくれるとほぼ100%確信があることを告げることにもなります。
カトウさんよりも高い地位にあるJohn Smithは、カトウさんがJohnを動かす自信を見せると、無意識に反発を感じるかもしれません。従って、ここではカトウさんはより丁寧な表現方法、つまり、お願いしたとおりにJohnが動くか否かについて自信がない姿勢でアプローチします。

8.やむを得ない理由を述べ、依頼の弱さを補う

. . . , since ABC has required us to report . . .
“お客様”に対する敬意のレベルは、国や文化によって異なるかもしれません。英語圏では、「お客様は神様です」とは決して言いませんが、王族に例えて、“The customer is king!”と言うことはあります。従って、顧客であるABC社が品質問題レポートを要求してきた事実は、John Smithに品質調査を実施させるに十分なはずです。
しかし、国際的企業のビジネスパーソンには、日本における顧客第一主義は不必要であり、顧客が要望・質問する権利を制限したいと考える人もいます。もしJohn Smithがこのタイプだとしたら、「この件においてほかに選択肢はない」ことを示唆する“since ABC requires a report . . .”と表現することで、説得力が増すかもしれません。

9.相手が同意すると仮定する

How can we get this lot replaced, and by when?
ここではカトウさんは、John Smithが該当製品は不良のため交換を要することを理解してくれると仮定します。次のように、より丁寧に依頼することもできます。
“Could you please replace the defective lot as soon as possible, and let us know when you can send it?”

10.メールの最後で、言外に確認する

Do you want us to ship back the defective lot, or discard it here?
John Smithがどちらの選択肢(不良品を返送するか、廃棄するか)を選ぶにしても、問題のロットが不良であるとのカトウさんの指摘を認めることになります。このテクニックは、一般的には、まだ決めかねている顧客に対して営業マンが行うズルイ営業戦略ともとられますが、今回のケースでは、カトウさんの決断が常識的と考えられるなら容認できるでしょう。

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