キラリと光る日本の技術力~世界シェアを創りだす人々~

製氷冷蔵業からスタートし、今年で創業90年を迎えた前川製作所は、 産業用冷凍機、圧縮機、食肉加工機などでトップシェアを誇る。 日本の、世界の市場の変化とともに自らも柔軟に変化し、 成長を続ける非上場企業の強さの秘密とは?

目次

  • 日本の強み
  • 新興国事情

産業用冷凍機でトップシェアを誇る

取材に先立ち行われた「事業報告会」で挨拶をする田中嘉郎 代表取締役会長。自身も中南米に駐在していたという経験から「人間力を加味したサービスは、欧米メーカーと比べて自信があるところ」と語る。

 他の追随を許さない独自の技術により世界の市場でトップシェアを誇る企業がある。その名は前川製作所。産業用冷凍機では国内トップであり、冷凍運搬船用の冷凍設備は世界の80パーセント以上のシェアをもつ、知る人ぞ知る総合機械製造企業である。

 1924年に「氷屋から始まった」前川製作所は、64年のメキシコ進出を皮切りに、アメリカ、ブラジル、ベルギー、カナダ、ベネズエラ、アルゼンチンなど次々と海外拠点を設立。冷蔵・冷凍機器にとどまらず、産業用コンプレッサー(圧縮機)、食品加工機械、ヒートポンプなど各種機械を製造・販売し、売上高1000億円弱のうち海外での売上が5割を占める。同社の技術を求める業界は食品、物流、自動車、ガス、石油と多岐にわたり、現在、国内60拠点、海外36カ国93拠点から世界各国に製品を供給する。

 今年5月に創業90年を迎えた前川製作所の田中嘉郎代表取締役会長は、「『共創』が原点にあり、お客様が一番ほしいものは何かをともに考え、顧客の価値を創造することで事業を伸ばしてきた」と語る。田中会長が中南米に赴任したのは60年代後半。冷凍設備における当時の競合は、欧米メーカーであった。大量生産されたパーツを組み合わせて提供するライバルに対して、前川製作所は顧客に最適な製品を一つひとつ開発・製造した。「したがって、あまり儲からない。しかし、それを続けることでお客様との関係性が強固なものになる」と断言する。

 同時に重視したのがサービス力である。当時、ベネズエラでは故障した機械の代替機が届くまで1~2週間かかるのが当たり前で、やむをえず客が自らマイアミまで部品を買いに出かける姿も多く見られた。「そこでマエカワはスピーディにパーツを供給し問題を解決することで、お客様の琴線に触れるサービスを提供していった。人間力を加味したサービスは、欧米メーカーと比べて非常に自信があるところ」(田中会長)。

徹底的に顧客に寄りそうことで生まれるユニークな製品

鶏もも肉の自動脱骨ロボット「トリダス」。他に類を見ない脱骨システムは、国内のシェア80%、世界12カ国に納入し、シリーズ累計1000台出荷を誇る。

 顧客の工場の最適化を求めていくと、往々にしてボトルネックが出てくる。そうした場面で「徹底的にお客様に寄りそう」をモットーとする前川製作所は、本業の冷却技術だけにこだわらず、自社のもつ知恵と技能を融合させながら、現場のニーズに応える関連機器を開発してきた。同社ではそれを顧客との共創を通じて、自らの問題解決力を高めて成長していくプロセスと捉える。

 例えば、鶏もも肉の自動脱骨ロボット「トリダス」。一般的に骨のない状態で販売される鶏肉だが、脱骨は、これまで熟練の技能と力を必要とする作業だった。この脱骨作業を自動化するロボット開発の依頼を受けた同社は、1982年より開発を開始、実に10年余りの歳月をかけて実現。開発過程では、ロボットの動きを熟練の職人の手技や判断力に限りなく近づけるために、機械設計者が自ら鶏肉加工場で鶏をさばいて加工方法を習練した。一般的な産業用ロボットが同一の対象物にプログラムされた動作で作業を行うのに対して、前川製作所のロボットは一つひとつ形、大きさ、硬さが異なる「不定形軟弱体」を取り扱うのが特徴であり、計測技術を使って骨の位置を検出して取り除く。品質、歩どまりの高い、他に類を見ないトリダスの脱骨システムは、国内のシェア約80パーセント、世界12カ国に納入し、シリーズ累計1000台出荷を達成した。

 高い技術力の提供は食品業界だけにとどまらない。現在、原油国を中心に引き合いが活発なのは、スクリュー圧縮機「FX(Flexible)シリーズ」だ。従来からブラジルやサウジアラビアの国営石油会社を顧客にもち、石油や天然ガスの生産、輸送、加工、消費にいたるすべての段階において冷凍機やガス圧縮機を供給してきたが、今年から「FXシリーズ」の出荷も開始した。これまで油田において発生したフレアガス(廃棄ガス)は燃焼処理されていたが、近年、環境意識の高まりから圧縮して回収し、再利用することが一般的になってきた。一方で、フレアガスは液化しやすく、組成の比率が変わりやすいという特徴をもつため従来の技術では圧縮が困難であったが、前川製作所では独自の技術で開発した「FXシリーズ」でその対応を可能にし、資源の回収と有効利用を実現した。

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