キラリと光る日本の技術力~世界シェアを創りだす人々~

製氷冷蔵業からスタートし、今年で創業90年を迎えた前川製作所は、 産業用冷凍機、圧縮機、食肉加工機などでトップシェアを誇る。 日本の、世界の市場の変化とともに自らも柔軟に変化し、 成長を続ける非上場企業の強さの秘密とは?

目次

  • 日本の強み
  • 新興国事情

関係者全員の感性をすり合わせる


ブラジルに11年駐在していた木瀬良平 グローバル販売ブロック統括リーダー。現地に溶け込む姿勢、また逃げない姿勢で同地でのマーケット拡大に努めた。

ブラジルに11年駐在していた木瀬良平 グローバル販売ブロック統括リーダー。現地に溶け込む姿勢、また逃げない姿勢で同地でのマーケット拡大に努めた。

 多様な業界で求められ、90年にわたって世界規模で成長を続ける前川製作所の強さの秘密は何か。 「レッドオーシャンで血みどろの闘いをするのはマエカワにはなじまない。恐竜はなぜ滅んだのか。強いものが残るのではなく、環境に合ったものが生き残る。時代ととともに状況が変化するなかで、常にお客様のつぶやきに耳を傾けて、『お客様は何を求めているのか』『マエカワの特長が出せるのは何か』を営業、技術、サービス、製造にかかわるすべての人間が徹底的に話し合ってきました。それぞれがもっている優れた感覚を“すり合わせ”共有しながら、自分たちの居場所と光り方を見つける」。そう語るのは、グローバル販売ブロック統括リーダーの木瀬良平氏だ。

 木瀬氏はブラジル駐在員として11年滞在し、マーケットの拡大に努めたが、「日本の素晴らしい技術をもっていけば、すぐに現地で展開できるかというと、そうではない。実際、最初の2年間はまったく理解されずに苦労した」と振り返る。当初、自社製品の質やシェアの高さ、省エネ効果などを躍起になって訴えていたのだが、あるとき相手に「木瀬の言っていることに間違いはないだろう。日本は人も設備も素晴らしい。だが、あくまでもそのなかでまわっている機械だ。ブラジルの電力事情を見ろ。人々はサッカーが始まれば、みなが手を止めて試合に夢中になる。そんな環境でお前のところの機械はまともに動くのか」と問われて、初めて自分がやってきたことは押しつけであり、客が期待することに耳を傾けていなかったと気づいたという。

 以降、木瀬氏はマーケットを理解してマエカワの技術を最大限生かすためのアレンジをする。現地のスタッフや顧客と同じ悩み、同じ喜びを共有するなかで、ともに本当にいい仕事をしようとしていることが伝わったとき、相手の態度は激変し、事態は好転していった。

 「うまくいっている会社は、必ず駐在員が現地に溶け込んでいます。逆にうまくいっていない場合、駐在員が『数年で日本に戻る』という意識でふんぞり返って仕事をしているケースが多い。また、英語圏以外では現地の言葉を学ぼうとする姿勢がとても大切。英語が通じる一定の層の人とだけ会話をしていると、物事を見誤る可能性もある」と指摘する。

決して逃げない前川製作所


世界で80%のシェアを誇る前川製作所の看板製品のひとつである冷凍運搬船用 冷凍設備。世界中の海を移動しながら対応する圧倒的なサービス力もシェアの一因だという。

世界で80%のシェアを誇る前川製作所の看板製品のひとつである冷凍運搬船用 冷凍設備。世界中の海を移動しながら対応する圧倒的なサービス力もシェアの一因だという。

 冷凍運搬船の冷却設備において、マエカワが世界で高いシェアを獲得できた要因が2つある。

 まず1970年代後半から日本の造船所で起きた冷凍運搬船の建造ブームのなか、これまでのマニュアル的な制御装置を一新してより高い温度制御が可能な高性能の制御システムを開発し、顧客(造船所、船主)の信頼をがっちりつかんだこと。そしてもう一つは、多くの船が海外船主に転売されていくなか、着実に世界におけるサービスを充実させていったことだ。

 技術向上への拘りと、顧客のニーズに対する真摯な対応。この2つをもち続けた結果、現在のシェア数に繋がったとマエカワ内では分析されている。

 「安定したシステムを供給できるようになるまで、お客様に迷惑はかけられないと営業もサービスも技術も全力で対応するなかで、お客様から『トラブルが起こったときにヨーロッパ勢は逃げるけれど、マエカワは逃げなかった』と言われました。導入した冷却システムに問題が起こってメーカーに電話をすると、欧米の会社はまずファックスを送ってきて責任の所在を明確にするためのサインを求める。お客さんにしたら何千万円も出して買った機械が動かなくて困っているのに頭にきますよね。一方、マエカワはまずお客様のところへ飛んで行き、状況を把握して問題解決に全力を尽くす。問題があればメンバーがお客様の船に乗り込んで、世界中の海を移動しながら対応する。圧倒的なサービス力と逃げない姿勢が確固たる信頼につながりました」

 そして、前川製作所が途切れることなく技術を継承し、開発力を高めていけるもう一つの秘密が高齢者の人材活用にある。同社では能力と本人の意思があれば、定年後の60歳以降も雇用を継続する。現在、従業員3700名のうち226名が60歳以上であり、最年長は82歳の男性で90年史の編纂、圧縮機の技術資料のとりまとめに従事する。

 前川製作所では、20代、30代、40代を「動」の時代、50代以降を「静」の時代と呼び、汗をかいて経験を積む「動」の人材と、成熟と伝統、新たな視点を併せもつ「静」の人材との融合によって、さまざまなイノベーションを生み出してきた。さらなるグローバル展開に向けて、今後は「静」の人間と30歳以下の「動」の人間がともに海外へ出て行くことも検討するという。

 「21世紀の前川製作所は、『環境』『省エネ』『食料』『ロボット』をキーワードに取り組んでいきます。今後一層、インフラ輸出が拡大するなかで、幸せなほどいろんなやり方をもっている企業です。入社1年目の社員も5年目の社員も、日々の活動のなかで前川が目指すものや思想を共有でき、『だから今はつらくても、やっていく』と言える組織になれたら、売上は今の5倍にも10倍にもなると確信しています」。

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