キラリと光る日本の技術力~世界シェアを創りだす人々~

30数年前、「高松の小さな企業」が世界の市場に打って出た。今やアクリルパネルのサイズなどで9つのギネス記録をもち、水族館用大型アクリルパネルで世界シェア7割を占める日プラ株式会社だ。日プラは、なぜ高い技術力と圧倒的な強さを維持できるのか。創業者である敷山哲洋社長に話を伺った。

目次

  • 想い・情熱
  • 日本の強み

世界が認めた水族館用アクリルパネル

チャイムロング横琴海洋王国に設置されている、直径12mのアクリルドーム(上)と幅39.6×高さ8.3mのアクリルパネル水槽(下)。

チャイムロング横琴海洋王国に設置されている、直径12mのアクリルドーム(上)と幅39.6×高さ8.3mのアクリルパネル水槽(下)。

チャイムロング横琴海洋王国に設置されている、直径12mのアクリルドーム(上)と幅39.6×高さ8.3mのアクリルパネル水槽(下)。

 「こんな規模の水槽は世界初だ。本当に大丈夫なのか」。中国・珠海での水槽設置にあたり、中央政府と協議をしていた施主が電話をかけてきた。それを受けて日プラ株式会社の敷山哲洋社長は答えた。「この規模はやったことがありません。だから世界一なんですよ」。

 その後、日プラによってこのチャイムロング横琴海洋王国に製造・設置された幅39.6メートル、高さ8.3メートル、厚さ65センチのアクリルパネルは、世界最大として2014年にギネス認定される。日プラは、03年沖縄の美ら海水族館を皮切りに、08年ドバイ、14年中国・珠海、15年中国・成都、同年中国・広州と世界記録を更新してきた。現在は9つのギネス記録をもち、1つを申請中だ。

 誇るのは大きさだけではない。世界各地で大型水槽の水漏れや破裂による事故が起こっているが、そうしたなか60カ国以上、300を超える施設・設備で使われている日プラの製品には事故が一切ない。同社の水族館用大型アクリルパネル「アクアウォール」は、コンクリート以上の強度と耐久性をもち、40年経過しても透明度が変わらない。その高い技術力と信頼性によってアクリルパネルの世界シェア7割を誇る。

 日プラが支持され続ける理由とは何か。「ひとえに品質です」と、敷山社長は言い切る。

「質」で戦える市場を求めて海外へ

日プラ製は汚れが付着しないため清掃の必要がない。

日プラ製は汚れが付着しないため清掃の必要がない。

 創業は1969年、香川県に本社を構える。同じ年に開館した屋島山上水族館において求められたのは、支柱のない水槽だった。当時は、汽車の窓枠のように柱で区切られた水槽が一般的。施工に携わっていた設計事務所やガラスメーカーが「今の技術では不可能」と次々と手を引くなか、世界で初めて支柱のないアクリルパネル製の回遊水槽を完成させた。

 「350トンの水をたたえた水槽でしたから、万が一、壊れて水が一気に流れ出たら人災につながる。アクリルの耐久性を高めることにもこだわりました」

 水槽が公開されると国内外からの視察が相次ぎ、アクリルのもつ可能性の高さは瞬く間に世界に広まっていった。その後、国内において水族館ブームが起こると、大手アクリルメーカーが市場に参入するようになり、「高松の小さな企業」は脇に追いやられた。

 「我々がどれだけ立派な板をつくっても、その安全性を訴えても一部上場企業とでは信用度が違う。『大手企業=信用できる』という価値観の日本では、品質ではなく信用度で負けてしまう。それで海外に市場を求めたのです」

 契機は、モントレーベイ水族館の増築工事での入札だった。ライバルは、日本で常に立ちはだかっていた大手アクリルメーカーのほかに、アメリカ企業が1社。3社の性能テストを終えた館長は、「あなたのところの品質は最高です。ただし、他社より価格が10パーセント高い」と言った。海外に活路を開こうと必死であった敷山社長は「価格は合わせます」と答えるが、館長から返ってきたのは「品質がいいのだから10パーセント高いのは当たり前です。採用します」との言葉だった。価格競争ではなかった。この経験で迷いが消え、顧客が安心できる製品づくりに徹すると心に決めた。

 出荷にあたり新たな問題が発生した。品名をメタアクリル樹脂板としたところ、関税が36パーセントかかるという。慌てて関係省庁に直談判に行くが門前払い。今度はアメリカ大使館に駆け込んで、「学術的な教育施設に使用するものを日本から運ぶのにこんなに税金がかかるのは納得がいかない。納得のいく説明がほしい」と訴えた。

 1カ月後、ワシントンから呼び出されて出向くと、「メタアクリル樹脂板は材料で、あなたたちがアメリカにもって行こうとしているのは、水槽の壁『アクアウォール』という商品だ」と言われ、最終的に関税は2.7パーセントになった。

 「関税の差額だけで当時の日本円に換算して1億円以上でした。関税はお客さんが支払うものでしたが、居ても立ってもいられなくなって飛び込んでいった。それが結果的によかったんでしょう」

 館長は、各国から業界関係者が集うオープニングパーティで開口一番、日プラへの賛辞を述べた。ここから日プラの快進撃は始まった。

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