キラリと光る日本の技術力~世界シェアを創りだす人々~

2000分の1ミリ単位で機械のズレを検知する「機械式 精密位置決めスイッチ」で、世界トップクラスシェアを誇るメトロール。「電気式」センサが主流のなか、あえて時流に乗らず「機械式」の道を選んだ思惑は何だったのか。確かな技術があれば世界に出るのはたやすい――そう言い切る松橋卓司社長に話を伺った。

目次

  • 想い・情熱
  • 日本の強み

大手メーカーとの共同開発が転機に

M5mm 世界最小「精密位置決めスイッチ」(上)と世界トップクラスシェア「CNC工作機械用ツールセッタ」(下)。

 東京都立川市に本社と工場を置く株式会社メトロール。この社員数122名という小所帯の会社の看板商品が、世界トップクラスシェアを誇る「機械式 精密位置決めスイッチ」だ。一般には馴染みが薄い工業製品だが、工場の自動化には欠かせない、いわば世界のモノづくりを縁の下で支える機器である。身近なところでは、エレベーターをピタリと定位置に止めるブレーキ制御に使われているほか、最近では脳神経外科手術用の顕微鏡や、スマートフォンの製造装置に採用されるなど、応用範囲は広い。

 1976年の創業時、収益が上がらなかった経営を軌道に乗せたのがこの製品だった。きっかけは、不良品を選別する測定器の共同開発というトヨタ自動車からの依頼だ。300万回動作させても、2000分の1ミリの誤差しか許されない、厳しい条件を求められたが、技術者だった創業者の松橋章前社長は1年かけて取り組み、製品を完成させる。これが、後にヒットを飛ばす精密位置決めスイッチの原型となった。

 「製品開発の世界では、コア技術だけでは商売になりません。用途によってその形を変え、使いやすいように展開してようやく収益が上がる。お客さんからの要望を聞きながらオーダーメイドしていくわけです」。こう語るのは、創業者である父の後を受け継いだ松橋卓司社長だ。こうして1981年、工作機械の刃先の摩耗を自動検出する「工作機械用ツールセッタ」を開発すると、これが爆発的に売れた。

 工作機械の先端には、金属を削る刃物が取り付けられている。いくら硬い刃でも、何百回と使われているうちに刃こぼれを起こしたり位置がズレたりする。そうなれば、不良品を生み、いずれ機械自体が故障する。かつて、こうした不具合は熟練の職人がたびたび機械を止めて調整してきた。それが、メトロールのツールセッタを搭載すれば、1ミクロンという高い精度で刃の起点位置のズレを検知し、自動的に機械が止まる。不良品を作らないだけでなく、人がいない夜間の24時間稼動も可能になり、生産効率が格段に向上するのだ。ユーザーにとっては願ってもない製品だった。

ネットビジネスの時流をとらえ、海外へ

タイ展示会にて、現地ローカルエンジニアと英語で商談。

 まず国内で売り上げを伸ばすと、徐々に海外の企業から問い合わせが来るようになる。海外との取引が始まったのは80年代後半だ。当初は、商社経由での取引だったが、流通の過程で数社が介在すると、顧客に製品が届くまでに値段が跳ね上がる。また、ファクスや銀行振込を使ったやり取りは手間も時間もかかった。売り手にとっても買い手にとっても不幸なこの状況を変えたい。そう考えた時期がインターネットの普及時期と重なった。

 松橋社長が、勤務していた大手食品会社を退職し、メトロールに入社したのがちょうどこのころ。98年、松橋社長は自社サイトを立ち上げ、英語版を手はじめに各国語版を次々と開設していった。クレジットカード決済の仕組みも整えた。当初、英語を使いこなす社員はまだいなかったため、たまたま英語が得意だったパート社員に海外とのやり取りを任せた。

 「ネットに情報をアップした翌日にはもう注文が入りました。驚くほど問題は起きなかった。むしろ簡単に世界とつながれることに驚きました。インターネットでの情報発信、国際宅配便、クレジットカード決済……インフラはすべて揃っていたわけで、あとはそれに乗ればいいだけだったのです」

 松橋社長はこともなげに振り返る。続いて、海外で開催される展示会への出展を始め、これで手応えを得ると、徐々に語学の堪能な社員を増やし、海外との取引を拡大させていった。こうしてメトロールの精密位置決めスイッチは、世界が認めるヒット商品になったのだ。

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