海外駐在だより 暮らしてわかるその都市の素顔

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今回は

香港(中華人民共和国香港特別行政区)

名前: T.S.(男性) /駐在地(都市名および国名):香港  /ご勤務先:都市開発・不動産関係 /家族構成(同居者の有無):妻、長男(半年前より同居)/現在の駐在地に赴任した時期: 2010年 8月/ご趣味:世界の都市巡り、映画、読書/

室内は寒い! 高温多湿、喧噪の香港

セントラル地区と九龍を結ぶ「スターフェリー」。秋の夕刻、風に吹かれながら眺める香港島の風景はまさに「This is Hong Kong」といった格別の趣き

 赴任から1年半は商業の中心・セントラル地区で生活と仕事をしていたため、とにかくその建物密度や人口密度、人々が醸しだす雰囲気に圧倒されたものだ。香港人のかしましさ、たくましさに閉口して、ときおり自分のプライベートルームに逃げ込むこともあったほど。ただ、この街とそこに集う人達が放つエネルギーはもはや東京では味わえないものであるともいえ、中途半端でなく「高密」であるということのメリットをどう享受するか、という解のひとつが香港にあると感じたのも事実だ。

 天候は海に囲まれていることもあり一年中湿度が高く、夏になると90%以上という日も少なくない。そのせいで夏の室内冷房温度は非常に低く、おそらく設定温度は20度以下だと思われる。「暑いと仕事がはかどらない」「空気が汚いから空気清浄も兼ねている」などいろいろな理由があるようだが、効かせすぎには違いない。

 食事に関しては、各地方の中華料理・エスニック料理・ヨーロッパ料理・和食と選択の幅が広く、こちらでの最大の楽しみのひとつといえる。世界有数の金融都市でもあるため接待などでのニーズも多く、香港・中国の富裕層が美食を求めることもあって有名店にはこと欠かない。

 世界中から駐在員が集まる香港には各国のインターナショナルスクールが数多く存在する。ただ、近年になって富裕層になった香港人や中国人の子ども達がインターに通うようになったため入学枠が不足しており、シンガポールと熾烈な国際都市間競争をくりひろげる香港にとって大きな問題となっているようだ。

 こちらでは地下鉄網が発達しており、初乗りは30~40円位と大変安価に利用できる。バス、路面電車、ミニバスの順に安くなっていくが、ビジネスパーソンは初乗りが20HK$(約210円)程度のタクシーを利用することが大半だ。また、富裕層の多くがお抱え運転手つきの車をもっており、朝晩のセントラル地区や香港島と九龍をつなぐトンネルの渋滞には凄まじいものがある。

 セントラル地区で働いていると、ビクトリアハーバーを挟んだ対岸の九龍にはすぐ目の前にもかかわらず行くことはあまりない。ただ、時間に余裕があるときにたまに乗る「スターフェリー」(セントラル⇔九龍 所要時間5分)は、香港での生活のなかでも格別のひとときだ。特にこの季節(秋)の夕刻、風に吹かれながらフェリーの上から見る香港島の風景は「This is Hong Kong」と言いたくなる瞬間。

香港を理解するのに必要なこと

ここ香港での最大の楽しみのひとつはハイキング。都会から離れたハイキングロードを3時間ほど歩いて辿り着いたビーチは、思わず息を呑むような絶景

 香港独特の風習でよいなと思ったのはいわゆる「クラブ・ライフ」。もともとの統治国であるイギリス的な社交界、クラブ文化が色濃く残っており、それが香港・中国の風土や人種的なものと混ざり合い独特の大人の世界ができあがっている。「香港クラブ」、「香港ゴルフクラブ」、「香港ジョッキークラブ」など入るのが難しいクラブも目白押しだ。このように歴史に根差したハイブリッドなカルチャーが、香港での生活やビジネスを理解する上で最も重要な点だと私は考えている。

 こちらへ来て初めてその楽しさを知ったのが、ハイキング。香港というと、ビジネス街のセントラル地区かビクトリアハーバー、そしてローカルマーケットが多く存在する九龍エリアのイメージが強いが、車で30分も移動すれば豊かな自然が残されていて、その尾根を結んだハイキングコースがイギリス統治時代の遺産として整備されている。着任して初めて迎えた正月に香港人の友人が連れていってくれたハイキングには感動したものだ。3時間歩いて着いた場所は、車では入っていけない美しい砂のビーチ。そこには、荷物を人力かボートで運ぶしかない海の家(レストラン)があり、疲れた身体にそこの中華料理とビールがうまかったこと、うまかったこと。それ以来、ハイキングが病みつきになっている。

 初の海外駐在が欧米先進諸都市ではなく香港が最初でよかったと思っている。建築や都市開発の仕事で欧米の都市を多く視察してきたが、今の「アジアの時代」において香港がシンガポールと並ぶ国際都市だという印象は生活してみて改めて強く感じている。ビジネス環境が非常に整えられており、生活面でもコンパクトで暮らしやすい都市に駐在できたのは幸運だった。英語があらゆる場面で通じるし、香港人は世界から人を迎え受けるのに非常に慣れているといえるだろう。それは、中国と欧米に挟まれ苦労してきた彼らの歴史がなせる業なのかもしれない。特に夢をもって来る人、起業家にとっては非常に素晴らしい環境だ。先日、香港で著名なある成功者が、「ヴィジョンとエネルギーさえもっていれば、夜、夢で見たことが朝には現実になっている」と話してくれた。その方は夢を現実にし、いまなお新しい夢を追っている。香港はそういう街だと思う。

 今後チャレンジしたいのは、やはり中国語。英語ですべてこと足りるとはいえ、やはり広東語と北京語が話せるようになる必要性をビジネス・プライベートの両面で感じている。そして、ここでの富裕層との付き合いに欠かせないのがゴルフ。1年に1回思い出したようにやるゴルフではうまくなるはずもなく、折角のチャンスなので時間をつくって基礎からやりたいと思っている。

 仕事においては、こちらのスタイルのよい部分を消化しながら、自分のスタイルをつくっていくのがいまの目標だ。本社サイドとは適切なプロセスを踏んで効率よくコミュニケーションをとっていく必要があると思っている。あせって成果を出そうとしても、相応の時間とタイミングが必要であることもいまさらながら実感。香港には忙しい面とリラックスできる面の双方があり、中期的な将来を見据えながらそれを自分流にアレンジしていきたいと思っているところだ。そして、日本では難しかった「家族との時間をいかに上手につくるか」、こちらにもチャレンジしていきたい。

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