海外駐在だより 暮らしてわかるその都市の素顔

  • 海外で働く
  • 日本の強み

今回は

ストックホルム(スウェーデン)

名前:明知 憲威(男性・39歳) / 駐在地(都市名および国名): ストックホルム(スウェーデン) /  ご勤務先:Japansk Designbutik KIKI(日本雑貨の販売店) /  現地での職務: オーナー / 家族構成(同居者の有無): 妻 / 現在の駐在地に赴任した時期:2007年1月(お店は2009年9月から)

生活編

国土の6割が森林、1割が河や湖というスウェーデン。「自然享受権」に代表されるように、人々の生活のなかに自然が溶け込んでいる。

国土の6割が森林、1割が河や湖というスウェーデン。「自然享受権」に代表されるように、人々の生活のなかに自然が溶け込んでいる。

 大学卒業後フランスに留学していたときに国際学生寮に住んでいたのですが、そこで多くのスウェーデン人の友人ができたのが自分にとっての最初のスウェーデンとの接触でした。そこで出会ったスウェーデン人達は総じて礼儀正しくシャイで控えめ、日本人にとても近い性格をもっているように感じました。スウェーデンには昔から「Jantelagen(ヤンテラーゲン)」という言葉(信条)があり、「君が他の人達のように素晴らしいと思うなかれ」「君は他の人を笑うなかれ」といった謙譲のルールを意味しています。現代でもそれが有効というわけではないでしょうが、スウェーデン人の気質をよく表している言葉だと思います。

 スウェーデンの人口は約1000万人で、ストックホルムには200万人が住んでいます。私はこのサイズ感がとても気に入っています。人が少ない・マーケットが小さい、ということから日本に比べて行き届かないサービスがあることも確かですし、日本のようにものすごくニッチをついたお店やレストラン、商品が成り立たない環境でもあります。ただ逆に、日本は良くも悪くも消費社会としてものすごく巨大で特殊だということに気づかされたのも事実。ストックホルムはその点でとてもいい案配だと感じています。適度な人の数、商品の数、そしてそれらの合間に存在する空間と時間の余裕が心地よい。ちなみにこの「ちょうどいい感じ」というのをスウェーデン語で「lagom(ラーゴム)」といい、これもまたスウェーデン(人)を象徴する単語だと言っていいでしょう。

 現在はストックホルム郊外の小さな一軒家に住んでおり、庭が2000平米あり鹿やヘラジカが遊びにくるような環境にあります。休日は家のことをしている時間が一番多く、草刈り、掃除・洗濯、またいまの季節だと雪かきも重要な家事のひとつです。今後はこの庭に小さなゲストハウスを建てたり、畑で野菜をつくることにもチャレンジしてみたいと思っています。

 スウェーデンならではの楽しみということでは、「自然に近い生活」を挙げたいと思います。日本ではわざわざ「アウトドア」などといってお金をかけて少々肩肘張ったような感覚がありますが、こちらでは特別な装備をもってキャンプをするわけでもなく、ただ散歩してブルーベリーやキノコを摘む、夏なら海に飛び込む、と普段の生活のなかに溶け込んでいる印象を受けます。よく知られていることですが、スウェーデンには「自然享受権」というものが存在し、誰でも私有地の山に入って果物などをとって食べてもいい、というルールがあります(庭のように柵がある場合はダメですが)。一泊ならばテントを張っても問題ありません。マーケティングの力でつくられたライフスタイル(日本の「山ガール」ではありませんが)とは違う、人々の日常に根づいた身近なものを感じます。

 スウェーデンの人口の10%以上は移民で、これまで政治難民などについても積極的に受け入れを行ってきました。その面での賛否両論はあるのですが、いずれにしてもスウェーデン人のマインドのなかには「異文化の人々ときちんとコミュニケーションをしよう」という意識があるのを強く感じます。下手なスウェーデン語でもきちんと聞いてくれる風土があることは私達のような異国で生活する外国人にとっては大変ありがたいことです。

仕事編

和雑貨をきれいに包装して手渡すなど日本流の「おもてなし」の精神には、ストックホルムの消費者も感嘆している。(店舗にて妻と)<br>お店のウェブサイト:http://ki-ki.se

和雑貨をきれいに包装して手渡すなど日本流の「おもてなし」の精神には、ストックホルムの消費者も感嘆している。(店舗にて妻と)
お店のウェブサイト:http://ki-ki.se

 スウェーデン人はオンとオフの区別がはっきりしています。仕事のメールが夜中や休日に届くことはまずありませんし、何より顕著なのは夏になると各自が交代で夏休み(5週間)をとること。お店も役所も目に見えていろいろな業務が滞りだすのですが、それについて文句を言う人はあまりいません。自分も休みを享受しているのですから。

 こちらでビジネスをしていて気づいたのが、「包装」に関する意識の違い。小売店を営んでいることからくる実感かもしれませんが、スウェーデンではラッピングは期待できません。日本では「包む」という行為がとても大事で、小さな和菓子屋さんでもその店の包装用紙をもっていてきちんと包んでくれる。しかしこちらでは有名デパートに入っているショップでもひどく不器用な包みしか出てきません。ですので、弊店で商品をきちんと包んでお客さまにお出しするとものすごく喜んでくれます。また、日本のサービスは全般的に過剰なほどなので、その標準をスウェーデンで行うとこれまたものすごく感動してくれます。おつりを渡すときにトレーに乗せたり、レシートなどを小さな文鎮などで押さえてお返しするだけで効果は絶大です。

 ビジネスを行ううえで困難なことは、前述しましたがマーケットが小さいということになるでしょうか。日本だと「隠れた名店」というステータスが機能しますが、スウェーデンだと「隠れたまま」になる可能性が高い(笑)。「自分から探し出して楽しむ」という感覚は通用しません。

 今後はお店の経営のかたわらで、空いた時間を活かしてイラストレーターの仕事にもチャレンジしてみたいと思っています。

関連記事

ページの上部に戻る/Back to TOP