海外駐在だより 暮らしてわかるその都市の素顔

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今回は

ウランバートル(モンゴル)

お名前※:谷麻衣子 性別:女 年齢:31 駐在地(都市名および国名):モンゴル国ウランバートル市  ご勤務先※: Japan Fashion & Mongolian Souvenir Shop(Meet the Smiles Cafe)   現在の駐在地に赴任した時期:2012年6月

生活環境編

ご覧の通りの交通渋滞。交差点で、にっちもさっちもいかなくなっているのをよく見かける。

 モンゴルというと「草原と遊牧民」のイメージをもっている人が多いと思うが、そういう人がウランバートルに来るとカルチャーショックを受けるだろう。ここでは近代的なビルが建ち並び、おしゃれなカフェや世界各国料理のレストランも多く存在するなど、日本の地方都市と何ら変わらない規模の都市だ。

 市内の交通手段は、車、バス、タクシーもしくは徒歩。首都であるウランバートルには約100万人が住んでおり、ここ数年でものすごく車が増えたおかげで交通渋滞がとても激しい。モンゴル人達がよく言うジョークがある。車に乗っている人が徒歩で行こうとする友人に「一緒に乗っていくか」と聞くと、友人は「急いでいるので」と断る、というものだ(笑)。モンゴル人は馬に乗るような感覚で車に乗っているのではないか、と思うほど運転マナーは悪い。交差点に東西南北から車が突っ込んできて、にっちもさっちもいかなくなっている場面をよく見かける。そのうえ、車を降りて喧嘩までしている。バスの運転も荒い。モンゴル人の負けず嫌いの気質なのか、絶対に横から割り込ませないし競争するように走るので、乗っていて気が気ではない。

真冬は寒すぎて外を歩くのは20分が限界。吐く息で髪もまつ毛も凍るほど(筆者)。

 モンゴルは9月上旬から雪が降り始め4月頃まで雪が残る、いわば半年以上が冬の国だ。真冬はマイナス30度にもなるのだが、そこで活躍するのがウランバートルのほぼすべての建物に通っている「セントラルヒーティング」の設備。火力発電所で沸かされたお湯が配管を通して供給される暖房システムだ。各家庭で電源を入れるのではなく、冬の間中はずっと供給されているので部屋のなかはとても暖かい。ただ外に出ると当然話は別で、ものの10分でまつ毛も凍るような寒さが待っている。路面も凍結していて、まるで街中がスケート場のようなのだが、モンゴル人は慣れたもので普通の靴を履いているのに滑るようにして道を渡っていく。

 食生活は基本的に羊肉と小麦粉で、味つけは塩のみ。羊肉は独特の匂いがあるため、好んで毎日は食べられない。どこのレストラン・食堂に行ってもほとんど同じ味つけのモンゴル料理が多いのだが、自分が通っている語学学校の近くの食堂だけは別で、羊肉の水餃子と野菜スープはすごく美味しい。また、田舎で食べるホルホグ(さばきたての羊肉の蒸し焼き)も絶品。モンゴル料理の名誉のために(笑)、美味しい料理も存在することをつけ加えておく。

 こちらでは、街の喧騒から離れて田舎に行き、馬に乗ることがストレス解消法だ。前述したように、ウランバートルは渋滞・喧騒が激しい、空気が悪い、道が悪いとかなりストレスフルな環境なのだが、車で30分も走ればそれが嘘みたいに見渡す限りの草原が広がっている。モンゴル人はよく田舎に行って美味しい空気を吸うことでリフレッシュしている、という話を聞いていたのだが、ウランバートルに1年も住むとその気持ちがよく分かる。特に夏の田舎は最高で、馬に乗って風を切るのも気持ちがいいし、何もせず自然のなかに身を置くだけで気分が爽快になる。

人の気質・仕事編

夏の草原は、何もせずその場に身を置くだけで本当に気持ちよい。

 モンゴルに行き始めてからもう10年経つのだが、1年ちょっと前に住むようになって感じたのは「私はモンゴルのことをほとんど何も知らなかった」ということ。旅行や出張で来るモンゴルと、住むモンゴルとではまったく違う。遊牧民、大草原、自然をベースにした素朴で暖かな人柄……という一方的なイメージはすぐに壊れてしまった。

 モンゴル人は個人の我や自己主張がすごく強くて、あまり人の立場に立って物事を見るということをしない。社会主義時代の名残りなのか、遊牧民的な気質なのか、仕事においてもものすごくルーズで、万事が万事「マルガーシ、マルガーシ(明日、明日)」という先送りの連続だ。彼らは個人主義を尊重するので、集団で仕事をすることがまず得意ではない。いいかげんな気質については私も負けていないので(笑。もちろん仕事は細かいけれど)あまり気にならないが、そこかしこであまりに我を通されると心が折れそうになることもある。ここでは主張したもの勝ちなのだ。

地元の生産者と打ち合わせ。「何とかなるさ」というのがモンゴル人の気質。(奥が筆者)

 人を傷つける言葉も平気で言うので、相手を理解できなかったり、ものすごく落ち込んだりすることもしょっちゅうだ。「カッとしない、イライラしない、何が起きても驚かない」、そう自分に言い聞かせるようにしている。その反面、「なんでそこまでしてくれるんだろう」と思うくらい無条件で助けてくれようとする、まるで家族か親友かというくらいの人達もいて、自分は生きているだけでなくて、生かされているんだなあと実感している。

 ウランバートルは一見するとすごく発展しているように見えるのだが、こちらに住むようになって生産者や友人達の生活ぶりを見ていると、インフレに悩まされ生活は決して楽ではないことが分かる。ところが、これがモンゴル人の面白いところで、あまり状況を悲観していないのだ。「何とかなるさ」と思っているようなフシがある。現に、モンゴル人は計画的に貯蓄するという概念もあまりない。明日のご飯を食べるお金もないのに、あまり思い悩んでいる様子もないし、あくせく働くようなこともない。そのような遊牧民的な気質にたまにイラッとすることがある半面、この「どうにかなるさ」精神が一番気に入っているところでもあるかもしれない。不思議な民族である。

 いまは、「Heart of Mongolia」というオリジナルブランドで、フェルトやニット商品の開発・販売をしている。人口が少ないので国内マーケットは小さいが、だからこそ、世界をめざした品質やデザインの製品を発信していきたいと思っているし、今後は食品の方にも事業分野を広げていきたい。鉱物資源以外にも、せっかく遊牧に根差した文化があるのだから、遊牧業を背景とした産業の活性化の一助になりたいと思っている。

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