海外駐在だより 暮らしてわかるその都市の素顔

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今回は

プリンストン(アメリカ合衆国)

名前:M・S(男性・37歳) 駐在地:プリンストン(アメリカ合衆国) 勤務先:医薬品メーカー 現地での職務:アカウンティング・マネージャー 家族構成(同居者の有無):あり 駐在開始時期:2012年10月 趣味:旅行・スキー

生活編

全米屈指の名門校 プリンストン大学を擁するなど、さまざまな教育機関や研究所 が集まる学術都市として知られる。

 私は学生時代に二度、アメリカで長期滞在を経験しています。そのためか、ニューヨークのJ・F・ケネディ空港を降り立ち、ニュージャージー州プリンストンに向かうリモ(リムジン=ハイヤー)からの風景を目にしたとき、しばらくぶりに故郷に帰ってきたときのような、感慨深い思いが込み上げてきたのを覚えています。

 その二度のアメリカ滞在は、西海岸と中部地区だったので、プリンストンは私にとって初めての東部地区での長期滞在となりました。

 東部の人はせっかちで、よそよそしいということをよく耳にしますが、せっかちであることは間違いないようです。それは、車の運転にもよく表れています。車間距離をかなり詰めて走る人が多く、赴任するときに乗ったリモの運転には、恐怖さえ感じたものです。また、交差点で信号が変わったときに少しでも発進が遅れると、後続車に必ずクラクションを鳴らされます。

 とはいえ、アメリカでは車は、大都市の中心部に居住するのでないかぎり必須のもので、私が住むプリンストンのエリアも例外ではありません。ですから、赴任する本人か、同伴する家族が、渡米直前になって運転免許を取得するというケースが少なくないようです。

 また、実際にアメリカで初めて運転するとなった場合、さまざまな面で腐心している人をよく見かけます。たとえば、いかに交通量の多い幹線道路を通らずに移動するか、タクシー運転手が抜け道をうまく利用するように、周辺の道をいろいろと研究するのです。

 昨年の冬、プリンストンをはじめとする東海岸は幾度となく寒波に見舞われ、大雪でオフィスがクローズすることもたびたびでした。気温がマイナス10℃を下回ることも多く、非常に厳しい冬を経験しました。一方、夏は6月から7月にかけて、日本のように湿度の高い日もありますが、基本的には湿度の低い、気持ちのよい気候が続きます。夏の素晴らしい天候を満喫すべく、“Summer Hour”を採用する企業も多いようです。つまり、月曜日から木曜日は通常よりも1時間長く働き、金曜日は午前中のみで仕事を終わらせる、というわけです。

 プリンストンは立地的には、N.Y.マンハッタンとフィラデルフィアのほぼ中間に位置していて、どちらの都市にも、車か電車で1時間ほどで行くことができます。また、日本食が買えるスーパーも車で1時間ぐらいのところにあります。ここに来る前に赴任していたスコットランドでは、日本食を手に入れることがまず困難な状況だったので、それを考えるととても便利で重宝しています。

 ここはまた、日本人の居住者も多く、あちらこちらにコミュニティがあります。現地で子どもが生まれ、親の援助なしに独力で子育てをするにしても、周りには同じ年ごろの子どもをもつ人が少なからずいて、お互いに助け合いながら子育てができるという環境にも恵まれています。

 プリンストンには、ご存じのように全米屈指の名門校であるアイビー・リーグのプリンストン大学があります。ほかにもさまざまな大学やカレッジ、教育機関、研究所などがあって学術都市として知られ、ノーベル賞受賞の天才物理学者アルベルト・アインシュタインが1955年に没するまで住み続けた街でもあります。市内のダウンタウンはそれほど大きくはありませんが、非常に落ち着きがあり、アカデミックな雰囲気が漂っていて私も気に入っています。

 アメリカは大体がチェック(小切手)社会です。仕事面ではもちろんのこと、普段の生活のさまざまな場面でチェックを使うことになります。ですから、私が赴任したときもチェックの書き方や、裏書の仕方をマスターすることから始まりました。

イエローストーン国立公園では、アメリカならではの雄大な景色を存分に楽しむことができる。

 なぜ、これほどチェックが使われるのか、現地の従業員に尋ねたことがあります。その答えは、銀行振込にすると相手に口座情報が知られるので、預金が不正に引き出される可能性があるということと、さらに電信送金の手数料が高いうえ、銀行が手続きを間違えることもあるのだ、ということでした。アメリカは自己責任の社会といわれますが、銀行取引に関しても、自分ですべからく確認するという姿勢が必要のようです。

 私は夏休みや冬休みを利用して、いろいろなところによく旅行に出かけます。昨年の夏休みは、イエローストーン国立公園をレンタカーで回り、アメリカならではの雄大な景色を存分に楽しみました。冬休みには車で6時間もかけて、バーモント州キリントン(Killington)にスキー旅行に出かけ、思いっきり滑ってきました。また、ヨーロッパや中南米へ旅行するにしても、こちらからだと日本から旅立つよりも簡単に行けるので、とても便利です。

仕事編

 ビジネス面から見て、何が日本と最も違っているかというと、仕事の範囲がJob Descriptionによって規定されているので、その範囲を超えての仕事はしない、ということです。むしろ、それを超えて仕事をすることは禁じられてすらいるのです。

 Job Descriptionというのは、直訳すれば「職務記述書」のこと。つまり、会社のあるポジション(ポスト)に関する職務内容や職務の目的、目標、責任、権限の範囲などが事細かに記された文書のことで、これによって仕事の評価が下され、給料も決まってくるわけです。

 このような明確に定められた職務や権限のもとで、企業という組織が形成されているといってもいいと思います。アメリカではこうしたバックグラウンドがあるから、キャリアアップのために転職を繰り返すという働き方につながっているのだと、自分なりに納得したものです。

 日本には“阿吽の呼吸”とか、“以心伝心”とかという言葉があります。でも、現地スタッフにそれはぜんぜん通用しません。もしも伝えたいことがあれば言葉できちんと詳細を伝えないと、相手にはわかってもらえません。ですから、スタッフへの指示もできるだけ詳しく、具体的に行うように心がけています。

 また、現地スタッフは仕事に対して、とても合理的です。終業時間になると、ほとんどのスタッフはオフィスを後にします。そのため、限られた時間内でいかに結果を出すか、そのことを常に意識して仕事に取り組むようにしています。

 現地での私の仕事はアカウンティングにかかわることなので、今後はUSCPA(U.S. Certified Public Accountant=米国公認会計士)の資格取得を目指していて、いま、チャレンジしているところです。

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