活用事例

宇都宮大学

【オンライン方式事例】

プレイスメントからアセスメントまで TOEIC® Listening & Reading Testを客観的指標として活用
今後は新しい受験様式としてオンラインの推進を目指す

大学教育推進機構 基盤教育センター
EPUUプログラム・コーディネーター
三村 千恵子教授

全学部共通の統一英語プログラム「EPUU」

本学は、農学部・地域デザイン科学部・国際学部・工学部・共同教育学部の5学部で構成されており、学生在籍数は約4,000人です。「新たな社会を拓き支える人間の基盤を形成」するために創設された大学教育推進機構 基盤教育センターでは、グローバル・シチズン(地球市民)として活躍するための基盤教育英語プログラム「EPUU(English Program of Utsunomiya University)」を実施しています。EPUUは全学部共通の統一英語プログラムで、1・2年次に必修科目として8単位を取得するようカリキュラムが組まれています(スライドI)。

コロナ禍の中、本学では「誰一人取り残さない」というSDGsのスローガンをもとに、前期は遠隔授業を基本としました。インターネット環境の整備(データ通信量、デバイス等)にも細心の配慮をし、多くの通信量がかかるZOOMではなく、「C-Learning」という大学共通の学習支援システムで授業を行いました。

はじめてのTOEIC Listening & Reading IPテスト(オンライン)

本学のEPUUとTOEIC Programの歴史は非常に長く、2008年度に希望者に対して初めて、マークシート方式のTOEIC L&Rを実施しました。2009年度新入生からは全員2年修了時までに3回、2018年度新入生からは2年修了時までに5回と実施回数を増やしました(スライドII)。

EPUUでは、(1)社会に対する学生の英語力の説明責任、(2)習熟度別クラス編成のためのプレイスメントテスト、(3)学生の英語力の客観的評価(成績の20~30%にカウント)という目的でTOEIC L&Rを活用しています。

第3期中期計画(2016~2021年度)ではKPIとして全学部生の10%がTOEIC L&Rスコア650点以上、25%が550点以上を取得することを掲げており、昨年度(2020年2月)中にほぼ達成することができました。

2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で毎年4月に実施している新入生のクラス分けを目的としたTOEIC L&R IPテスト実施を見合せることとなりました。

しかし、8月に全学部の1・2年生に対して、TOEIC L&R IPテスト(オンライン)を実施することが承認されました。承認された要因として、IIBCからの提出資料で、マークシート方式とオンライン方式のスコアの互換性が、パイロットスタディーを重ねてきちんと証明されていたことや、遠隔授業が浸透してきたことなどが挙げられます。加えて、同センターでは学生全員の受験環境を徹底的に調査し、パソコンやインターネット環境がない学生に対しては大学の施設を開放するなどのサポートを行いました。

TOEIC Listening & Reading IPテスト(オンライン)のメリットとこれからの課題

オンライン方式は、新型コロナウイルス感染拡大の状況下でも対応できることや、物理的な教室確保・人員確保が不要なことが運営上の大きなメリットとなります。従来のマークシート方式の場合、1・2年生全員に対して約20教室40名以上の人員を確保する必要がありました。

一方で運営上の問題点として、学生への受験周知がありました。従来は、大学内での掲示や授業内での呼びかけなどを行っていましたが、今年度は遠隔授業のプラットフォーム(C-Learning)に情報を載せることくらいしかできなかったため、テスト当日まで本当に心配でした。また、受験要項やマニュアルの作成、事前登録の周知などにも気を遣いました。

受験者の不正行為も懸念しておりました。本学では、今回のオンライン実施の受験要項には、不正行為があった場合は、『前期の全科目の単位を無効にする』と記載しましたが、今後に向けてさらなる対策を検討していきます。

その他、IIBCのサポートデスクが平日のみの対応となるため、土曜日に試験を実施した本学では、英語教員7名全員が出勤し、学生からの質問などをE-mailや電話で対応する体制としました。

TOEIC Listening & Reading IPテスト(オンライン)を終えた感想と学生の声

TOEIC L&R IPテスト(オンライン)の実施について、私としては成功であったと考えています。

非常に心配していた受験率は昨年度(98.8%)とほぼ同じ水準(98.1%)を達成できましたし、スコアも非常に伸びました。例えば、現2年生(2019年度新入生)は入学時からの平均点が93点アップし、1・2年生全員の平均点も昨年のマークシート方式から71点アップしました(スライドIII)。

前期の遠隔授業の成果に加え、TOEIC L&R IPテスト(オンライン)は本学の学生が力を発揮しやすいテストであったと、ポジティブに分析しています。KPIに関しても、TOEIC L&Rスコア650点以上が12.9%、550点以上が36.7%と高い水準で達成できました。

今回、IPテスト(オンライン)終了後に学生へのアンケートを実施しました。その中で、「TOEIC L&Rが学習を振り返り、今後の学習に役立てるきっかけとなるか」と聞いたところ、「そう思う」「ややそう思う」というポジティブな答えが82%あり、やはりTOEIC L&Rが英語学習のモチベーション向上につながっているということは確かであると思いました。

一方、「ここ半年の学習成果が今回のTOEIC L&Rに反映されたと思うか」という質問に対して、「反映されてない」「あまり反映されてない」という回答が約半数もあったことは、今後の課題として捉えています。

また、学生に対して、「マークシート志向かオンライン志向か」のアンケートを実施した結果、オンライン志向が過半数(55%)を占めましたが、マークシート志向の回答(22%)にも考慮すべき点がありました。オンライン志向の理由としては、「マークシート方式の2時間は長すぎて、集中が続かない」「オンライン方式は自宅で一人で受験できるため、集中できる」という回答がありました。

一方、マークシート志向には、「オンライン方式の1時間では短すぎて実力が図れていないのではないか」「パソコンの操作が苦手」「オンラインは受験する環境の確保が難しい」「受験会場の緊張した雰囲気の方が集中できる」という回答がありました。

今後はオンライン実施も含めたTOEIC Programによる学習支援を目指す

EPUUには、ステークホルダーからの要請や社会に対する学生の英語力の説明責任があるため、TOEIC Programは必要であると考えています。

一方で、学生は「学習の振り返りのきっかけになる」「スコアアップを目指したい」と思う一方で、「授業との関係がない」と思っていたり、教員は「目的はTOEIC L&Rの受験ではない」と考えているなど、様々な意見や感想が出ています。今後、さらにTOEIC Programの活用を推進していくためには、学生・教員ともにモチベーションアップを図る必要があると考えています。授業とテストの明確な関連性や、TOEIC Programの活用が必ず基礎力アップにつながるという説明に加え、TOEIC Programのような客観テストと独自の評価を組み合わせていく必要もあると考えています。

新型コロナウイルスが終息した後、オンライン実施を続けていくかは未定ですが、私としては従来の様式に戻すのではなく、新しい受験様式としてオンライン実施を推進したいと思っています。そのためには、オンライン受験に慣れるよう模試などを実施していかなければなりません。さらに、オンライン方式とマークシート方式のスコアの互換性をきちんと学生に説明していくことも大切だと考えています。

最後に、EPUUは、コミュニケーションスキルを重視しているため、客観的なスピーキング能力とライティング能力のアセスメントは必要だと考えています。今後、試験内容と授業の関連をきちんと踏まえ、TOEIC S&W IPテスト(オンライン)の導入を検討していきたいと考えています。

(2020年9月取材)

(テスト名称を含め掲載情報は取材当時のものです)

Q&A

TOEIC L&R IPテストを3回実施から5回実施に変更した理由を教えてください。
学生の英語のアチーブメントを定期的に測定するためには、入学時、1年後期修了時、2年後期修了時の3回実施だと間隔が空きすぎてしまうと感じていました。2018年度より学生に対して英語力の測定と評価を同じツールできめ細かに対応していきたいと考え、1・2年時の前期実施を加え、計5回に変更しました。
スマートフォンしか持っていない学生はどのような方法で受験しましたか。
受験環境を調査した際、スマートフォンでしかインターネット接続ができないと回答した学生が1年生で10名ほどおり、対策として大学施設を開放しましたが、結局ご親戚や友人の家などで受験した学生が多かったです。
テスト実施にあたり受験料の負担について教えてください。
本学では受験料は学生負担になっています。TOEIC Programの受験料は入学時納入金として、一括で徴収しています。
TOEIC L&R IPテスト(オンライン)の運用について今後どのように考えていますか。

オンライン志向、マークシート志向といろいろな学生がいますが、従来のように大人数で集まって受験することがいつ可能になるか不透明であるため、今後は新しい受験様式としてオンライン実施を推進していきたいと考えています。

また同時に、パソコンの操作が苦手な学生へのサポートや、マークシートの方がよいという学生に対する説明もきちんとしていかなければいけないと考えています。

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