英語学習に限界を作らず、生きた英語を学び続け、教えていきたい
IIBC AWARD OF EXCELLENCE※を受賞された方にお話を伺うインタビューシリーズ。今回は、IIBC AWARD OF EXCELLENCE受賞後に、英会話講師から学校の英語教師へのキャリアチェンジを果たし、英語4技能から学ぶ英語教育の推進に熱い想いをお持ちの松田孝二さんです。
※IIBC AWARD OF EXCELLENCEは英語で「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を測定するTOEIC L&R・TOEIC S&W・TOEIC Speakingで基準のスコアを取得した方を表彰する制度です。
伝えたいから英語で考える、という実践が英語力の向上に
現在、英語科の教員をされていらっしゃいますが、英語はもともと好きな科目でしたか?
学校の科目としての英語はあまり得意ではなく、どちらかというと苦手でした。高校を卒業後、トヨタ自動車株式会社に勤めていた時に、自分のスキルを磨いてキャリアチェンジをしたいと思い、英語の自主学習を始めました。ところが、モチベーションが続かず、英会話教室に通うことにしたところ、講師の先生とギターという共通の趣味から親しくなり、一緒にギターを弾く時間を持つようになったのです。
英語学習が面白くなったのは、そこからですね。一緒にギターを弾くには、相手に要望を伝えなければなりません。「どう表現すればいいのかな」と調べるようになってからの上達はとても早かったです。回を重ねる度に、次はこういうことを伝えようと決めて英文を考えました。
その後、23歳の時にワーキングホリデーでカナダへ行きました。英語力に加えて経験として語れるものを得てからキャリアチェンジに挑もうと思ったからです。そういう思い切りのよさや行動力はあるほうだと思います。
カナダから帰国後はどのようなお仕事をされていましたか?
25歳の時に帰国し、塾や英会話学校の英語講師を務め、企業でも教えていました。その後、30歳を過ぎてから大学の教育学部に入学して教員免許を取得し、昨年度から三重中学校・高等学校(学校法人三重高等学校)で英語科の教員をしています。
英会話の講師から、学校の英語教師を目指した理由は何でしょうか?
最大の理由は、学校教育に携わることで、英語力を育んでいく土台作りに関わりたかったからです。社会人になると、受験勉強やこれまでの経験から自分の英語学習法がある程度確立されてしまうことが多いため、若くて柔軟な時期から言葉としての英語を受け入れる資質を育てたいと思ったのです。
TOEIC Testsは高スコアを取得してからも、受験し続けることが大事
TOEIC Testsを受験したきっかけを教えてください。
英会話学校の講師をしていた26〜27歳くらいの時、同僚との会話にTOEIC® Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)の話題が出てきたことがきっかけです。特に準備することなく受験したため、難しいと感じる問題もいくつかありましたが、一方でリスニングのPart 2の応答問題で、読み上げられた発言に対する適切な返答を解答する際は、それまで培ってきたコミュニケーションの経験が活きているのを感じました。
英会話学校を退職し、30歳を過ぎて大学に進学してからは、目標のスコアを取得することに達成感を覚え、少なくとも年に一回の受験を続けています。当初の目的は英語力の維持でしたが、実際には年を追うごとにスコアが上がり、英語力も向上し、モチベーションの維持にもなっています。TOEIC Testsというのは高スコアの取得後であっても、自分の英語力を測り続けられる、維持できる、向上できるというメリットがありますね。
一般的なことで言えば、TOEIC Testsは、自分で達成したいスコアを決められる上、スコア別の問題集なども多数あるので、目標の目安もつけやすいと思います。目標スコアを達成すれば自信が得られて、次はもっと高いスコアを目指すというふうに英語学習を進めていける点が、TOEIC Testsの魅力ですね。
TOEIC L&Rは公式問題集で、TOEIC S&Wは海外からの同僚と会話して受験準備
TOEIC Testsを受験するにあたっては、どのような学習をされていましたか?
TOEIC L&Rについては実践形式で、きっちり2時間、公式問題集などの模擬問題を解くという学習に取り組みました。そうすることで、分からないところが減っていく感覚がありました。
TOEIC® Speaking & Writing Tests(以下、TOEIC S&W)については、どうでしょうか?
TOEIC S&Wの学習は、英語を実践的に用いることが大事だと思います。その一つとして、海外出身の同僚と積極的にコミュニケーションをとるようにしています。そのために、日常的にネイティブ同士の自然な会話を耳にいれるよう心がけ、最近は英語ネイティブの方のYouTubeのチャンネルを観るようにしています。日々インプットしておくことで、会話の中でふいに口から出てくることがあるからです。
TOEIC S&Wには、写真を見て状況を説明する設問や、「子どもはおもちゃを持つべきか」というようなテーマに対して自分の意見を言う設問があります。自分に馴染みのない話題だと言葉に詰まってしまうため、あえて海外出身の同僚にそのような話題をふるようにしました。彼らとの会話を通して、自分にどんな単語や表現が足りないかに気づかされます。
また、生活の中のちょっとしたことについて、英語でひとり言をつぶやくようにしています。例えば、カップにコーヒーを一口残した時に、これを英語ではどう表現したらよいのかなと、ひとり言でしっくりくる表現を探します。
TOEIC S&Wの試験の直前は、模試形式の学習にもかなりの時間を費やしました。以前に解いたことのある問題集でも自分なりに違う表現を工夫したり、YouTubeでTOEIC S&Wの学習方法を扱っているチャンネルも活用したりしました。
TOEIC S&Wの学習や受験を通して得たことを、英語の授業で活用することはありますか?
オーラルの授業で、TOEIC S&Wの写真を見て状況を説明するという問題を応用しています。例えば、机の上に文房具を雑多に置き、”These are scissors”などと、簡単なことから言ってもらいます。ほかにも、ファミリーツリーのサンプルを使って、”Mary’s husband is David”などと家族の関係性を英語で言ってもらう方法も導入しています。
英語学習に限界を作りたくない
英語学習で心がけていることはありますか?
言語の習得に限界を作らないようにすることです。TOEIC Testsを毎年受験してきて、徐々にスコアが上昇していき、最近はTOEIC L&Rで980点から990点(最高点)を行き来している状況です。スコアとしての伸び幅はもうほとんどない状態であっても、英語力の維持にとどまらず、スコアでは表しきれない向上を実感しています。
昨今、クリティカルエイジ※というものが脚光を浴び、言語能力が最も伸びる時期は8〜13歳くらいまでと言われています。特にリスニングやスピーキングについては、ある程度の年齢までしか伸びないという説があります。
そこで私は、自分を実験台として、本当に大人はスピーキング力を向上させるのが難しいのかということを検証しています。具体的には、個人的に客観性がすぐれていると感じているTOEIC S&Wで、スコアは伸びていくのか、それとも伸びなくなるのかを測っています。
※クリティカルエイジとは、特定の能力が最も効果的に学べる年齢範囲を指し、主に言語や運動スキルの習得に関係します。
モチベーション維持のため、リフレッシュして頭の中のワーキングメモリーを復活!
お仕事をされながら、どのように英語学習の時間を捻出されていますか?
英語学習や英語教育に関する自分の研究で、毎日2時間は机に向かうようにしています。英語学習も研究も私のライフワークなので、時間の捻出が苦になることはありません。
ある程度の年齢を重ねてきて、人生の残り時間が少なくなっていくことを思うと、時間を無駄にできないという気持ちもあります。もちろん、忙しい時もありますが、そういう時は先に目の前のことを片付けて、休日に早起きするなどで時間を作っています。
英語学習で壁にぶつかったことはありますか?
第三者から見れば、今の私は英語を流暢に話しているように見えるかもしれませんが、自分ではもっと素早く相手に切り返すような会話をしたいと思っています。その点で壁にぶつかったことが何回かあります。そういう時期は、どう努力しても思うように伸びず、ここが自分の限界なのかとも思ってしまうことさえありました。
その壁を突破するための一つの方法として、その苦しい状況を客観的に分析するようにしています。例えば、「今はワーキングメモリーがいっぱいで、自分の中で処理しきれず、すぐに言葉が出てこないのでは」と考えてみると、自分でも納得がいくのです。
また、母語ではない英語をしゃべるにはエネルギーを要しますから、ワーキングメモリーの残量がなくてモチベーションが下がっていると、海外出身の同僚とのコミュニケーションをとっさに避けてしまうこともあります。
そういった時の対処法としては、雑多になっている頭の中を整えるために、リラックスしたり、身の回りを整理整頓したりしています。好きな数学の問題を解くことも、頭の中のリフレッシュになりますね。
IIBC AWARD OF EXCELLENCEの受賞は英語力の明確な指標
IIBC AWARD OF EXCELLENCEを受賞された感想をお聞かせください。
受賞により、自分の英語力への絶対的な自信と英語学習へのさらなるモチベーションが得られました。受賞者数は一年間で千人に満たないですから、英語力の明確な指標として十分すぎる説得力がありますね。あと、IIBC AWARD OF EXCELLENCEという名称がかっこよくて気に入っています。
実は、IIBC AWARD OF EXCELLENCEの受賞は2023年で6回目になり、これまでに一回だけスピーキングのスコアが少し足りずに受賞を逃しました。連続して受賞することの難しさを知っているだけに、この受賞を自分の英語力のゆるぎない証しと捉えることができています。
IIBC AWARD OF EXCELLENCEを受賞したことで、得たメリットはありますか?
今の仕事へキャリアチェンジするにあたり、一昨年に面接を受けました。その際、英語科の教員として活躍された現・校長先生には特に、TOEIC TestsのスコアのみならずIIBC AWARD OF EXCELLENCEを受賞したことは、その他の資格や採用試験での成績に加えて高く評価してもらえたのではないかと思っています。英語科の教員の場合、TOEIC L&Rの高スコアはそれほど目をひくものではないのですが、IIBC AWARD OF EXCELLENCEの受賞は英語力の証明にかなりインパクトがあったと思います。
また、周りの人に自分の英語力を分かってもらうという点では、TOEIC TestsのスコアそのものよりIIBC AWARD OF EXCELLENCEの受賞のほうが伝えやすく、4技能にわたる総合的な英語力を知ってもらえるようになりました。
英語の4技能を重視する教育の利点をデータとして示したい
今後のビジョンをお聞かせください。
私が学んだ大学の教育学部は心理学との関わりが深く、私は認知心理学への関心から英語のリスニング学習に認知心理学を絡めた研究を専門とし、今も論文を書いています。ビジョンとしては、その研究から英語教育において、英語を4技能で総合的に学習していく利点を示していくことですね。
データとしての裏付けを持った説得性のある指導法を構築していきたく、英語教育の実践の場でコツコツとデータを蓄積しています。例えば、英語力向上にシャドーイングがよいと言われることの裏付けや、スピーキング学習の重要性をデータで示すことで、英語教育がより4技能を重視する方向へ変わっていってほしいと望んでいます。
また、教育に限らず、若い人に何かを与えられる大人、何かの姿勢を示し続けられるような大人でありたいですね。
中学・高等学校の生徒は、言葉としての英語が育つその時まで、英語と上手に付き合ってほしい
英語教師として、英語学習において中学・高校生へ伝えたいことはありますか?
中学・高等学校の生徒は高校受験や大学受験など、目の前の勉強で精一杯でなかなか余裕がないと思いますが、普段の英語学習に加えて、英語圏の文化的背景を知るなど、いろいろなことを通して英語に触れてほしいという想いがあります。
英語というのはコミュニケーションツールですから、教材だけでは学べないことがたくさんあります。ぜひYouTubeなどを活用して、生の英語に触れてみてください。
すでに英語への苦手意識があるのなら、学校の試験での評価が英語力のすべてだとは思わないでほしいと思います。私は中学・高校生の時は英語が苦手でしたが、アウトプットをするようになってから英語学習の面白さに気づきました。
アウトプットができれば、聞いたり読んだりというインプットもできるようになっていきます。ごく普通の簡単なことを英語でたくさんしゃべってみることが大事です。“Hello” や”I love you”などを日本語に訳さなくても意味が分かるのは、何度も聞いて自分のものになっているからです。そういった単語やフレーズを増やすことから始めてみてはいかがでしょうか。
今は実感できなくても、中学・高等学校で学ぶ英語はいつか役に立つ時がやってきます。例えば、私は実際のコミュニケーションの場面で、伝えたいことを必死に考えている時に、中学・高等学校で習った単語やフレーズがふいに出てくるという経験を何度もしています。学校での勉強が蓄積して、いつか本当の言葉としての英語につながっていく時を信じて、英語と上手に付き合っていってほしいと思います。
英語力の維持・向上にはIIBC AWARD OF EXCELLENCEへのチャレンジがおすすめ
最後にこれからIIBC AWARD OF EXCELLENCEの受賞を目指す方や英語学習を頑張ろうと思っている方へのメッセージをお願いいたします。
IIBC AWARD OF EXCELLENCEの受賞を目指す方は、非常に意識が高い方だと思います。英語力がある程度あったとしても、それを維持していくのには努力を要しますし、向上させようとするならなおさらです。これから英語学習を頑張ろうとする方にとっては、IIBC AWARD OF EXCELLENCEの受賞を目指すことで、自然と英語学習に力が入り、英語力の向上につながっていくと思います。
学習指導要領が改訂されたこともあり、一般的にも英語の4技能の重要性が言われるようになっています。IIBC AWARD OF EXCELLENCEの受賞を目指すことは、英語の総合力を向上させていくことにもなりますので、ぜひ受賞を目指して日々の英語学習を続けていってほしいと思います。
おすすめ記事
- 2023年受賞者
松田孝二さん
三重中学校・高等学校(学校法人三重高等学校)英語科教員
2024.9.19
英語学習に限界を作らず、生きた英語を学び続け、教えていきたい
- 2023年受賞者
大関 理恵さん
監査法人にてIT監査に従事
2024.8.23
夢の海外駐在へ向けて、IIBC AWARD OF EXCELLENCEの連続受賞を道しるべに英語力を向上
- 2023年受賞者
石垣 彰太さん
名古屋工業大学大学院修士2年生
2024.7.31
日本が好き、だから日本のものづくりを設計・開発で盛り上げるために、世界を舞台に活躍できる英語力を目指す
- 2022年受賞者
荒井 愛理さん
IBM JAPAN
2023.12.22
英語は私の人生の起点。大好きな英語で色々な国の人々をつなげたい