英語を理由に諦めてほしくない。今からでも若手ビジネスパーソンに英語を始めてほしい/セコム株式会社

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セコム株式会社
IS研究所 デジタルプラットフォームディビジョン
ディビジョンマネージャー
松永昌浩 さん

デジタル署名や暗号技術、サイバー攻撃対策など、デジタル社会のセキュリティやプライバシーの研究と標準化活動を担う部署をマネージャーとして牽引。

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セコム株式会社
IS研究所 企画グループ主務
日野美奈子 さん

IS研究所見学会の企画・アテンド、学生向けのセミナーを含む採用業務などを主に担当。また、研究所のグローバルプレゼンス向上のための取り組みを企画推進している。

セコム IS研究所で必要とされる英語のスキルとは?

セコムといえば警備や防災のイメージが強いですが、英語力を必要としている背景には何がありますか?

松永:まず、私たちの部署ではデジタル社会のためのセキュリティやプライバシーを主に研究しています。たとえば、WebサイトやIoTデバイスの正当性を担保するためのデジタル証明書を支える暗号技術や運用技術、そこでやりとりされるデータをプライバシー保護しつつ活用する技術などですね。これらの技術を作るだけではなく、情報の発信や標準化活動もしています。
標準化活動では、国際標準を決定する国際会議や標準化団体の会合で議論や主張を行う必要があります。ああしたい、こうしたいと主張する海外のステークホルダーたちと交渉をしつつ、「セコムや日本の状況を踏まえるとこうあるべきだ」「IoTデバイスのセキュリティ機能は今後こうしていくべきだ」という議論を英語でする必要があります。
研究員は英語の読み書きだけではなく、そこからもう一歩先のスキルとして、国外において英語で議論する技術やコミュニケーション能力が求められます。

日野:英語での対話能力を身につけておかないと、他国機関・企業とのコミュニケーションが取れず、日本のプレゼンスに影響が出る恐れがあります。そのような理由から研究所では英語力向上に力を入れています。

国内の業務でも英語を活用するシーンはありますか?

松永:英語の技術情報や論文を読み書きすることが基本です。海外のグループ企業や関連する組織に研究員を派遣して一緒に取り組むという事例もあります。

日野:研究所には外国籍の社員や海外の大学からのインターン生がいますし、海外から視察に来たお客様へデモンストレーションを行うこともありますね。

  • 海外の技術資料や論文を読む力と書く力が必要。
  • 自社の取り組みや研究について英語でプレゼンテーションする機会もある。
  • 国際会議や国際団体など、グローバルなシーンを渡り歩くために議論・交渉といった英語によるコミュニケーション能力が問われる。

グローバルに活躍するための条件とは?

高い英語力を求められそうですが、実際に採用で求めているレベルはどのくらいですか?

日野:まず採用面では、英語力で制限をかけることはありません。あくまでも、研究者として「研究を遂行する資質はあるか?」という視点で見ています。
ただ、文献を読む・調査するという業務において英語は必要なスキルという認識はあり、「研究者にとって英語は嗜み」と研究員から言われたことが何度もありました。また、国際学会での発表経験などがあると頼もしく感じます。もちろん、IS研究所ではTOEIC Programを導入しているので、高いスコアは学生時代に身に着けたスキルとしてアピール材料になると思っています。

では入社した後、社員に「これくらいの英語力を持ってほしい」など、求めるものはありますか?

日野:「入社5年目でTOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)800点」を目標に取り組んでいます。ただ全員に求めているかというと、そうではないです。点数が取れないからといって、不利益になるようなことは特にありません。

松永:デメリットはないのですが、海外出張するときにある程度のスコアがないと送り出せないという事情はあります。TOEIC L&Rの点数などを参考にしながら、「この人なら行かせていいかな」とか「(スコア的に)ちょっと厳しいけど頑張れ!」とか判断はしますね。

「グローバルで活躍する」人材の条件があれば教えてください。

松永:グローバルでの活躍”を“研究活動での活躍”として広く捉えますと、チャンスが目の前にあるときに手を伸ばすことですね。
研究活動でも日常でも色々な選択肢がありますが、英語に苦手意識があると躊躇してしまう選択肢が出てくると思います。そんなときに、やってみようという気持ちになれることが、すごく大切。躊躇がなくなるという意味では、英語は選択肢を減らさないための大切なものかなと思います。

  • 採用時に英語力で制限は設けていない。研究者としての資質で判断している。
  • 社員には入社5年目でTOEIC® L&R 800点をキーワードに!
  • 英語を理由に目の前の選択肢を減らさないことが、グローバルで活躍する条件の1つ。

グローバルプレゼンス向上を目指す「G-ISL」

社員の英語力を高めるためにどのような取り組みをしていますか?

日野:IS研究所では2019年から「G-ISL(Global IS Laboratory)」という取り組みを始めました。これは研究所のグローバルプレゼンス向上を目指すもので、まずは所員の英語力アップに注力してきました。
取り組みは大きく分けて3つあり、まず1つ目として社員にグローバルに活躍する将来像を描いてもらうために、毎年プレゼンテーションイベントを開催しています。国際学会の発表経験が豊富な社員や、入社後英語力を伸ばしてグローバルで活躍している先輩社員に登壇してもらい、新入社員や英語学習に関心がある社員に直接経験を伝えるイベントです。


「英語Café」の様子

では、学習の仕組みに工夫はありますか?

日野:それが2つ目の取り組みである、会社が提供する自己啓発制度「セコムセルフラーニング」を活用した「3か月チャレンジ」です。参加者たちは、目標スコア別に用意されたTOEIC講座から自分に合うものを選んで受講します。各自で勉強に取り組むだけでなく、毎週ミーティングで進捗を報告し合い、お互い学習を支え合って継続し講座の修了とスコアの達成を目指すラーニングコミュニティの仕掛けです。講座を修了すれば会社が費用の9割を負担してくれるので、勉強面・コスト面でも最後までやり遂げるメリットは大きいのですが、「なかなか一人では継続が難しい、断念してしまった」という声を多く聞いたので、日頃の学習もサポートできればと思い今年度からスタートしました。
最後に、3つ目の「英語Café」です。英会話を楽しむイベントで、希望者を数名ずつチーム分けして、2か月間毎週同じメンバーで英会話をしています。ポイントは、毎回メンバーの持ち回りでファシリテーター役を置くこと。研究者は、国際学会やハッカソン(エンジニアやプログラマーなどが集まり、ソフトウェア開発を集中的に作業するイベント)などで 議論を仕切ることがありますので、英語でファシリテーションに挑戦する実践の場になれば、と思っています。さらに、メンバーに加えて1人英語が話せる社員にチューター役として入ってもらいます。ファシリテーター役は議論を進めやすくするためにトピックスや話題の仕込みをするなどそれぞれの個性が出ますし、チューターも毎回変わるので、全8回飽きずに続けられます。何よりファシリテーター役として、各自が責任を持って取り組む経験は、ただの参加者の立場では得られないと思っています。また「英語Café」では、「同じ職場に長くいるけど話したことがなかった人と初めて深く話せた」「違うグループ・世代の人と話せるほかにない機会になった」と嬉しい声もあり、副次的な効果につながりました。


英語Cafe 3ヶ月チャレンジのメンバーたち

英語学習のモチベーションを維持してもらうために、何か行っていることはありますか?

松永:私は「必要だから自然とやるようになる」という環境を作ることを意識しています。先端の技術分野は英語の文献や発表が中心となることもあり、常日頃から研究員たちは研究活動で英語の必要性を感じていますが、さらに研究員を国際標準化の舞台に送り出せば、自然と英会話教室に通い始めます。また、情報収集時は、しっかりと世界に目を向ける癖をつけさせれば、自然に海外のサイトで先端技術を調べたり発表の動画を見たりするようになります。そのようにすることで結果的に英語を聞き取れる耳になり、英語特有の表現も身についていきます。

日野:書籍やアプリでも、現在は英語学習のためのサービスやツールはたくさんありますが、重要なことはやってみること、継続することだと私は思います。素敵な先輩所員たちの事例は余すことなく共有したいし、モチベーションを高めるきっかけになります。実際、「英語Café」に参加したメンバーの中には、セコムセルフラーニングが提供するオンライン英会話の受講を始めた人もいます。「英語Café」で話す機会があると、自分の話したいアイデアが見つかり、話せない言い回しに気づくため、モチベーションが上がるきっかけになります。「英語Café」のように継続的に英語を使う場があれば、各自が必要なスキルに気づき、興味を持って・楽しんで学び続けられる。そんなコミュニティを醸成するのが私たちの役割です。

松永:以前は、「英語Café」の参加者について日野さんに「この人に出てほしいのですが……」と相談されていました。しかし、回を重ねるうちに、研究員たちが自発的に次々と参加するようになり、最近は参加者不足の相談をされることが無くなりましたよ。

取り組みのなかで、英語学習の習熟度や効果検証はどのように確かめていますか?

日野:まずは年1回だったTOEIC L&Rの受験機会を半年に1回に増やしました。1年後のテストを目指して毎日勉強し続けるのは難しいことだと思うので、もっと短期的に自分のスキルアップを実感してもらいたいと思いました。
さらに、「英語Café」参加者のレベルがどんどん上がってきていたので、発話力の習熟度を測るものが必要だと思い、TOEIC Programのスピーキングのテストも受験できるようにしました。
テスト後の振り返りも大切で、スコアの分析を行い点数が大幅に上がった人には勉強方法などのヒアリングもしています。同じ環境にいて、スキルアップをしていく人には秘訣があると思うので参考になります。また、勉強方法やおすすめの講座を聞かれた場合はアドバイスもします。

松永:TOEIC Programって合格・不合格ではなくて点数が出ますよね。これってRPGのような感覚があると思うんです。少しずつ自分がレベルアップしていくのが実感できるところが。そういう意味では点数で出るのがいいなと思っています。

  • グローバルプレゼンス向上を目指すG-ISL(Global IS Laboratory)を開始。
  • 英語で活躍の幅が広がった将来の姿をイメージできるように、先輩社員の活躍を伝えるプレゼンテーションイベントを毎年開催。
  • 継続する仕組み、ラーニングコミュニティの仕掛け「3か月チャレンジ」。
  • 英会話を楽しむ「英語Café」を開催。
  • 英語学習のモチベーションを高めてもらう&学習を維持してもらうために、環境づくり、仕組みづくりに力を入れて支援している。
  • 効果検証にはTOEIC Programを採用し、テスト後の点数の変動と取り組みをヒアリング。アドバイスや情報提供も積極的に行う。

若手ビジネスパーソンに今伝えたいこと

最後に、若手ビジネスパーソンに伝えたいメッセージはありますか?

松永:自分からチャンスを捨てないでほしいです。前向きな姿勢を持つとビジネスも生活全般としても幅が広がります。英語をやっておくと幅が広がるというよりは、英語を理由に躊躇すると自分で選択肢を狭めることになっているという感覚を持ってほしいです。英語をやっておくことで、自分で自分の選択肢を狭めない、色々なことに前向きに取り組める気持ちになってもらいたいです。
あとは、元の情報に当たるということが大切です。研究活動に限らず、生きていく上で情報に踊らされないようにすることが重要です。そのためにも、翻訳された情報や切り取られた情報だけではなく、原文に当たる癖をつけてほしいですね。

日野:私は自身の経験ですが、英語の勉強を始めたのが30歳くらいのときで比較的遅かったと思います。その前は英語が読める気もしなかったという感じでした。
以前CSRを担当していたときに、私も当初は誰かが翻訳・要約した海外の事例を参考にしていました。しかし、英語が読めればWebサイトなどで大元の情報はもちろん、何十倍もの情報に簡単にアクセスでき本当に世界が広がりました。英語でしか手に入らない最先端の情報を前に、日本語の情報発信は約200か国ある中のたった1か国に向けていたものだと実感し、まずは英語で情報収集・発信をしなければと思って私は始めました。
私のように30歳から勉強してもできるようになります。しかしながら、学生や若手社員は、学生時代の積み重ねが新鮮なうちに勉強した方が本人にとって記憶も新しいので学ぶのが楽だし、人生ずっと使い続けられるスキルだと思います。せっかくのチャンスなので英語を勉強していただきたいですね。

IIBC ENGLISH CAFE in メタバース新規CTA
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