お客様の安心で安全な空の旅をサポートするには、「伝わる英語」が必要不可欠です。
~全日本空輸株式会社 客室乗務員 久世有希さん

公開日:2023年11月16日

航空機の客室乗務員といえば、外国語を使う職業として真っ先に思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? 世界中を飛び回る華やかなイメージが持たれがちですが、“空の上”という特殊な環境の中、お客様に快適なサービスと安全な旅を提供するというとても重大な役割を担っています。日々の仕事の中で実感する「英語力」の大切さを、客室乗務員として勤務4年目の久世有希さんに伺いました。

空の上という状況だからこそ求められる「伝わる英語力」

現地のクルーや空港担当者の方とはどのような会話をされるのでしょうか?

機長から伝えられた上空の揺れの情報をシェアしたり、お客様の情報...例えば、現地に着いた際、お手伝いが必要であると気づいた場合などは、現地クルーに事前に伝えておきます。ほかにも業務の引き継ぎなど、搭乗中に英語で現地クルーとやりとりをすることが多いです。

仕事をする上では「英語力」が欠かせない環境ですね。

入社試験では、TOEIC L&Rスコア600点以上がベースラインになっており、試験を受ける際に公式認定証の提出が求められました。実際に勤務してみると、社員は英語力が高い方が多いように感じています。特に私たちの仕事はスピーキング力が重要視されますから、一人ひとりが日々研鑽を積んでいます。また、客室乗務員の責任者である「チーフパーサー」になるためにもTOEIC L&Rスコアは必要です。国際線の場合は750点以上が基準となっています。

英語スキルにより、担当できる業務が変わることもありますか?

そうですね。私たちの業務は、能力に応じてサービスできるクラスが決まっています。例えば、私の場合は国際線のエコノミークラスとビジネスクラスを担当することができるのですが、ビジネスクラスとファーストクラスは社内の教育を受講し、それぞれの科目に合格しなければ担当できません。語学力を含めた総合的なサービス力が問われます。そういう意味でも英語でのコミュニケーション能力というのは私たちの仕事に欠かせないものですね。

具体的には、どのように英語力を磨かれていますか?

まずは搭乗前の「予習」でしょうか。会社から貸与されているタブレット端末の中に、業務中に使えるボキャブラリーやフレーズがまとめられているコンテンツがあるので、それを使うことが多いです。オフラインでも見ることができるので、休憩時間を使って勉強することもあります。それでも足りない部分は、事前にインターネットで調べるようにしています。また、定期的にTOEIC Listening & Reading Testを受験して英語力をチェックしています。特にTOEIC Listening & Reading Test は定期的な受験が義務付けられていて、上司との面談の際にスコアの申告が求められます。2年に1回は受験しなければいけないのですが、毎年受けている人も多いように思います。

職場の先輩から、英語学習やスキルについてアドバイスされることもありますか?

機内アナウンスに関しては、その路線を長年担当している先輩にアドバイスをいただくこともあります。機内アナウンスは決まったマニュアルがあるのですが、アレンジしたほうがお客様にわかりやすいケースもあります。そのため、どのような英語の言い回しがふさわしいか、先輩と相談しながらフレーズを考えることもあります。

仕事をする上で、大切にされていることはありますか?

きれいな文章や表現よりも、とにかくお客様に「伝わる」ことを目指すことでしょうか。勤務を続ける中で、このことを強く実感しています。ときには、単語を並べ、身振り手振りを尽くしてお話しすることもあります。空の上という特殊な状況ですから、いかにその場でお客様と意思疎通をはかり、お客様の不安を解消したり、くつろいでいただけるかが大切だと思っています。お客様の中には、英語が母国語でない方もたくさんいらっしゃいます。だからこそ共通語である英語の強みを感じますし、よりシンプルに、わかりやすい表現をするということを心がけています。これに関しては本当に日々トライ・アンド・エラーですね。だからこそ、お客様に伝わったと実感したときは本当に嬉しいです。

入社当初は「きれいな英語で喋らなくてはいけない」という意識が強く、なかなかお客様との会話が弾まないことが多くありました。しかし「文法的な正しさ」だけを気にするのではなく、ときには表情や単語一つでお客様と笑い合っている先輩方から大事なことを学び、より一層、「伝わる」英語というのを意識するようになりました。お客様に安心して空の旅を楽しんでいただくためにも、これからも英語力を磨いていきたいと思います。

幼い頃に感じた「外国語でコミュニケーションが取れることの喜び」が原体験

現在のお仕事を選ばれたきっかけは何ですか?

大学はフランス語学科に在籍しており、アメリカとフランスに留学経験があります。そのため、「外国語を使う仕事をしたい」という思いと、客室乗務員という職業へのあこがれから現在の仕事を選びました。留学時に現地に向かうフライトでお客様に対応している客室乗務員の方たちを見て、「カッコいいな」と思ったのも理由の一つです。

なぜ外国語の学科を選ばれたのでしょう?

もともと私の家族が、日本にホームステイをされる方々のホストをしていたんです。そのため、夏休みになると色々な国の方が私の家にやってきて、一緒に1ヶ月ほど過ごすという環境で育ちました。主に東南アジアの方が多く、皆さん日本語を学びに来ているので基本的には日本語で会話をするのですが、私は幼い頃から英語教室に通っていたので、日本語では伝わりづらいときに英語を使ったり、皆さんの現地の言葉を調べてお話をしたりしました。そうすると、皆さんとても喜んでくださいました。外国語でコミュニケーションが取れることの素晴らしさというのを、そのときに知ったように思います。

久世さんご自身は、どうやって英語力を磨かれたのでしょう?

学生時代は、大学内の留学生に話しかけたり、YouTubeなどの動画を見たりしてスピーキング力やリスニング力を磨いていました。また、意識して英文の本を読むようにしていました。まずは小学生向けの優しいものから始め、だんだんと難しいものにレベルアップしていきました。そのかいもあって、TOEIC Listening & Reading Test でもリスニングとリーディングの長文問題に苦手意識はありません。一方で、文法がとにかく苦手でして・・・(苦笑)。今でもTOEIC Listening & Reading Test を受験する前には、文法を重点的に復習することが多いです。今、自分の英語力がどのくらいなのか、苦手な分野をどのくらい克服できているかを、スコアで可視化してくれるのは、TOEIC Listening & Reading Test のメリットだなと思います。

今後も多くのお客様に快適な空の旅をお手伝いしたい

今後のご自身の目標について聞かせてください

今は、国際線のエコノミークラスでの責任者、国内線のチーフパーサーを目指して勉強中です。また、海外クルーと仕事をするうえで、よりわかりやすい英語を使い、皆さんとチームワーク良く仕事ができるようなマネジメントスキルを身につけたい、そういう思いが年々強くなっています。英語力を磨いていくことに加え、そういったビジネス上でのマネジメント力や、より円滑なコミュニケーション力を身につけて、今後も多くのお客様の快適な空の旅をお手伝いしたいと思っています。

全日本空輸株式会社 客室乗務員
久世 有希さん

2019年に全日空に入社、客室乗務員として国内・国際線の機内サービスを担当。日々のリフレッシュはリスニング対策を兼ねての海外のYouTube鑑賞。「別の外資系会社に勤める客室乗務員の方のVlogも好きで、自分の職場との違いに驚きながら楽しんでいます」

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