活用事例
羽衣学園高等学校

高校でのTOEIC® Programの導入と成果
-大学入学共通テスト対策と英語運用力向上を目指して-

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英語科教諭 大塚 英彰氏

目的に応じたTOEIC® Programの活用

本校は2023年に創立100周年を迎えました。もともとは女子校としてスタートし、現在は、男女共学となり、中学校・高等学校と一貫した教育体制を確立しています。交換留学制度や海外への修学旅行をいち早く取り入れるなどグローバル体験プログラムの充実化を図り、国際的な視野を持った人材の育成を前面に出しています。

コースとしては文理特進Ⅰ類コース、文理特進Ⅱ類コース、進学コースと3つありますが、この中で現在TOEIC Programを導入しているのがⅠ類コースで、難関国公立大学及び難関私立大学への進学を目指しています。過去5年では京都大学、大阪大学をはじめ、早慶上理、関関同立にも合格者を輩出しており、成果が結実しつつあります。

本校における英語教育の特徴は、TOEIC Programを大学入学共通テスト(以下、共通テスト)対策に、英検を大学入試対策としてそれぞれ位置付け、目的に応じて活用している点です。

Ⅰ類コースでは推薦入試ではなく、共通テストで確実に点を取ることができる、より本質的な英語の力が求められます。共通テストの試行試験ならびに2021年度の初回の共通テストをみて、TOEIC Programとの類似性を強く感じた方は多いと思いますが、大量の情報を瞬間的に処理していく能力を身に付けるにはTOEIC Programのような技能に特化したものが必要になってきます。そこで本校では、共通テストへの対応を模索する過程でTOEIC Programの導入を検討し、2022年度からTOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)、2023年からTOEIC Bridge Listening & Reading Tests(以下、TOEIC Bridge L&R)の団体特別受験制度(IP:Institutional Program、以下IPテスト)を実施しています。

Ⅱ類コースにおいては、主に関関同立などの難関私立大学への進学を目指していますが、こうした私立大学の推薦入試では英検を外部資格として採用しているケースが多く、英検を入試対策として役立てています。

客観的なスコアによる評価で現在地の正確な把握が可能

TOEIC Programの導入に際しては、学内の理解を得るのに、私を含めⅠ類コースの担当者、英語科の教員が中心になって1年ほど奔走しました。

共通テスト対策として以外にもTOEIC Programについてまずアピールしたのは、現状の力を正確に客観的に評価できる点です。また、例えばある県の英語の教員採用試験で求められる英語力は、英検であれば準1級、TOEIC L&Rでいえば730点といった基準の互換性がある点も紹介しました。その他、大学入学後のプレイスメントテスト対策としても有用であるという点も一生懸命説明しました。合格・不合格という判定はないものの、スコアは客観的な英語の能力、技能の尺度を示すことができると強調しました。

受験対象を拡大し、TOEIC® L&RかTOEIC Bridge® L&Rを受験

導入当初の対象は英検2級に合格したⅠ類コースの生徒でした。というのも、英検は学校を準会場にして年3回受験の機会があるのですが、準会場で受験できる2級まではⅠ類コースであれば、例年2年生の初めくらいまでに半数程度の生徒が合格しています。そこで2級に合格したⅠ類コースの生徒には、この時間にTOEIC L&R IPテストを受験してもらうという形で導入しました。

現在もIPテストは英検と同日に実施していますが、導入当初と比べ、受験対象を拡大しています。10月に実施する本年度第2回目となる学校全体の英検受験のタイミングでは、英検2級に合格しているⅠ類コースの1年生と、英検2級の合否関係なく2年生の全員、そして3年生の希望者がTOEIC Bridge L&R IPテスト、もしくはTOEIC L&R IPテストのどちらかを受験し、共通テストに備えます。

どちらを受験することになるかは、英検やTOEIC Bridge L&Rのスコアなどを参考にしながら複数の教員で検討し、生徒ごとに決定しています。基準の一つとしてはTOEIC Bridge L&Rのスコアが80点以上あれば、次からはTOEIC L&Rの受験を推奨しています。

導入により英語運用力の向上を実感

受験した生徒たちは、共通テスト形式の試験を受けてなくても、TOEIC Programの意味を理解して、本質的な英語力、つまり英語での情報処理能力や英語運用力向上の必要性を感じてくれているようです。また、受験機会は学年暦などに記載してありますし、生徒の意識としては他の模試などと同じ感覚で位置付けられています。本番の試験と同じ問題形式である公式教材『TOEIC Bridge Listening & Reading 公式ワークブック』も今年から授業の副教材的な位置付けで導入し、反復することに重点を置いて効果的に取り組んでもらっているので、TOEIC Programの導入により間違いなく共通テスト形式の問題の運用力は上がっていると実感しています。

良い意味で予想外だったのは生徒たちの順応の早さです。懸念された受験単語には出てこないようなビジネスの語彙が一部出題されてはいますが、生徒たちは問題なく順応していってくれています。ビジネス英語だからと躊躇せず、高校生のうちから早めに飛び込むことは大変有益だと改めて実感しました。

公式教材の反復が最も効果的

公式教材については、自分自身の経験からもかなり有用だと思い、生徒たちにもお勧めしています。英語という技能を訓練するわけですから、定型化しているものを丁寧に何度も繰り返すことが最も効果的な勉強方法ではないでしょうか。リスニングにしても、全く分からないものを聞くのではなく、理解できているものを何度も繰り返すことで定着していくと思っています。公式教材以外にも授業では最近、発音を評価してくれるようなAI教材も積極的に取り入れながら、技能的な部分をフォローする先生との2人体制のチームティーチングとして展開しています。

英語4技能の測定も検討

今後については、現在実施しているTOEIC Bridge L&R IPテストとTOEIC L&R IPテストを安定的に運営できるようになってきているため、前述したようにⅠ類コースだけではなく他のコースでも、と受験対象の拡大を進めていきたいです。さらに、英語2技能だけでなく発信力を含めた英語4技能を測定するべく、TOEIC Speaking & Writing Tests、TOEIC Bridge Speaking & Writing Testsの導入も検討しています。

英語が大学受験のカギなどとよく言われますが、受験に限らず、大学では英語で論文を書いたり、英語の専門書を読んだりしますし、将来的にも英語を学ぶことで、自分の可能性や選択肢が広がります。変化する英語のニーズにもTOEIC Programは普遍的に十分充足できるものだと思いますので、教育現場での認知度がさらに高まればTOEIC Programの導入はさらに広く進んでいくはずです。

私は、「授業と離れた場所で、生徒が自らの言葉として英語を使えるようになること」を英語教員としての目標としています。限られた授業時間・カリキュラムの中で、この目標を達成することは難しいことです。だからこそ、TOEIC Programや公式教材、AI教材など様々なツールの力も借りながら、より実践的な英語力の習得を促すような指導を心掛けていきたいと思っています。

(2023年8月取材)

(テスト名称を含め掲載情報は取材当時のものです)

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