Step by Step [Basic] Chapter1
自社のグローバル展開を理解する

プログラムの企画設計の第一歩は、「プログラムに求められていることは何か」を明確にすることだ。これを「ニーズ分析[*1]」 という。

そのためにはまず、データを集めることが必要だ。そして、自社のグローバル展開において、①いつまでに②どのくらいの人数の③どのような役割、成果、能力が期待されるリーダーが必要なのかを、関係各所にヒヤリングして得たデータや情報などを基に、自社のグローバル戦略に合わせて考えなければならない。グローバルリーダー育成プログラムの目的は、自社のグローバル戦略の実現を人材育成の面から推進することだからだ。

したがって、自社のグローバル展開で目指す方向性や成果、課題などを整理し、理解することが重要だ。その理解抜きには、経営トップや現場が求めるグローバルリーダーを確実に育成することは難しくなる。

ではまず、プログラムの企画設計において、「自社のグローバル展開で理解しておく項目」を見ていこう。

Q:プログラムの企画設計において、自社のグローバル展開のどこを押えればよいのか?

A:3つの項目を理解する

(1)グローバル展開のスピード

自社のグローバル展開が、どのくらいのスピードで進むのかをまず把握しよう。そのスピードに合わせて、組織が必要とするリーダーポジションとその人数、すなわち、量的ニーズとその育成期限を予測しなければならない。

最近、物流、外食、小売といったサービス業における中国・東南アジアを中心とした海外事業展開が加速している。新興国の拠点拡大に乗り出した企業[*2]にとっては、まとまった人数の海外拠点幹部や幹部候補を短期間で育成することが求められるだろう。

一方、長年グローバル展開を進め、高い海外売上比率を維持している総合商社や大手メーカーのような企業[*3]は、一定数のグローバルリーダーを、社内の人材育成の一環として計画的に育成していくことになる。

(2)進出地域

近年の日本企業の海外進出先は、欧米の先進国から、中国や東南アジア、インドに代表される新興国へ移っている。進出地域が異なれば、文化的背景や安全・健康といった働く環境は異なる。したがって、地域によって求められるリーダーの具体的要件も異なる。とりわけ、宗教や治安、衛生環境が著しく日本と異なる国では、異文化適応、メンタルタフネスなどの異質性への適応能力が、高いレベルで求められるだろう。

(3)グローバル展開の段階

企業のグローバル展開には、いくつかの段階があり、それぞれの段階において、求められるリーダー像も異なる。したがって、現状や将来の段階における人材ニーズをつかむ必要がある。

以下に、日本の製造業におけるグローバル展開を段階を追って[*4]紹介する。

①「販売機能のグローバル化」:海外に販売拠点を設立し、現地市場の開拓を行う
②「生産機能のグローバル化」:海外に生産拠点を設立し、現地生産を行う
③「販売・生産機能の現地化」:海外の販売・生産拠点の運営を、日本人ではなくローカル人材を中心に行う
④「グローバル連携」:グローバルに展開した販売・生産・事業機能を連結させ、グローバル最適な展開を志向する

サービス業などの非製造業は、当初から現地市場開拓を目指すため、①と③が同時に進行する傾向がある。

例えば、②生産機能のグローバル化の段階では、現地でローカル人材を技術指導しながら生産管理や労務管理のできる工場責任者などの日本人の技術系人材が求められる。

一方、③販売・生産機能の現地化の段階における主戦力はローカル人材である。そのため、ここで求められる日本人社員は、拠点責任者または幹部として現地組織に自社の理念や価値観を根付かせ、優秀なローカル人材を活かすリーダーシップと組織マネジメント力を備えた人材だ。また同時に、ローカル人材の育成のしくみも整える必要がある。将来、現地トップにローカル人材を登用することを視野に入れると、ローカル経営人材の育成にも着手しなくてはならないだろう。

企業におけるグローバルリーダー育成プログラムの目的は、自社の組織の実態に応じて、グローバルに展開する各拠点で成果を出せる人材を育成することであり、語学力と異文化コミュニケーション力を備えた一般的な国際人を育成することとは異なる。したがって、前述の3つの「自社のグローバル展開で理解しておく項目」を基点に、自社の育成課題とニーズをいかに捉えるかが、最初のカギとなるのだ。

今回のポイント

  • グローバルリーダー育成プログラムの企画設計の第一歩は、自社のグローバル展開の方向性や実態を理解すること
  • その際留意することは、グローバル展開の「スピード」「地域」「段階」

次のChapterでは、自社のグローバル展開においてグローバルリーダーはどのくらい必要なのか、「量的ニーズ」を具体的に把握するためのポイントについて、ご紹介する。


リンクは記事掲載当時のものとなります。

*1:ニーズ分析

「ASTDグローバルベーシックシリーズ リーダーシップ開発の基本」(永禮弘之監訳、ヒューマンバリュー、2013年)第4章、「企業内人材育成入門」(中原淳編著、ダイヤモンド社、2006年)第4章 を参照

*2:新興国の拠点拡大に乗り出した企業

例えば、中国を中心にアジア出店の拡大が続くユニクロ。中国では、2012年度は65店舗、2013年度は100店舗を目標に出店し、今後10年間は毎年100店舗ペースで出店を計画中。最終的には中国で3,000店舗にすることが目標という。同社では、企業内人材育成機関「FR Management and Innovation Center(FRMIC)」を設立し、世界中から対象者を選出し、経営人材育成を実施。また、経営者視点を早期から身に付けるための店長教育として、「Global One Institute(GOI)」を立ち上げ、グローバルでFRMICの経営人材育成と連動した店長教育を実施している。

出所:株式会社ファーストリテイリング ホームページ

http://www.fastretailing.com/jp/

*3:高い海外売上比率を維持している総合商社や大手メーカーのような企業

「日本企業のグローバル経営における組織・人材マネジメント報告書」(経済同友会、2012年)に三菱商事(海外売上比率80%)、コマツ(同77%)の事例が掲載されている。

*4:グローバル展開を段階を追って

「日本企業のグローバル経営における組織・人材マネジメント報告書」(経済同友会、2012年)

http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2012/120425b.html

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