ブリット・アンドレアッタ博士のブログから

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COVID-19による変化やソーシャル・ディスタンシングがもたらす不安とセルフケアの重要性

COVID-19のパンデミックが世界を席巻する中、私たちは生活と仕事の両面で身体にショックを受けています。そして、それは世界中で起きています。一日24時間、週に7日間、休みなしに、自宅で家族のケアをしながら仕事をしている人もいます。悲惨な喪失を何とか乗り越えるために、藁にもすがる思いの人もいるでしょう。痛みを抱える隣人や同僚、コミュニティのために、行動が求められる場合もあるでしょう。

COVID-19によって私たちは、おそらく今後目にしないであろう、根本からくつがえるような変化の旅に放り込まれました。こうした変化によって私たちは、不安、混乱、恐怖、そして新しく様々な対応を強いられています。この状況を乗り越えるために、私たちはまず自分自身をケアすることにベストを尽くさねばなりません。

脳科学では、「偏桃体があらゆる変化を潜在的に危険なものと捉えて、恐怖と不安を引き起こす」と言われています。文字通り私たちの生存が危険にさらされている今、その反応は猛スピードで起きています。まずは、全世界で起きている変化から受けているインパクトの度合いを把握しましょう。また、次のような行動が、冷静になる手助けをしてくれます。

この状況下ではなるべく、以下を心がけて下さい:

  • 健康を意識して食事をしましょう 

    退屈や不安からくる食べ過ぎに注意しましょう。食料品店の棚が空になっているのを見ると、生存本能を深く刺激され、今ある食料さえも食べ過ぎてしまうことがあります。健康的な選択をするためにベストを尽くしましょう。今ある食材で上手に工夫しましょう。食べる時にはゆっくり噛んで、食べ物を味わいましょう。感覚は、「考えすぎ」の状態から解放するきっかけを与えてくれます。
  • 情報源を制限しましょう

    脳のミラーニューロンは他人の感情に気付き、これにより社会的な感情の伝染を引き起こすことがあります。ニュース映像を見すぎると、必要以上に多くの引き金を作動させてしまいます。10分程度で1~2回だけと制限し、信頼できる情報源からのニュースだけをチェックするようにしましょう。
  • 気持ちの落ち着く活動をしましょう

    神経系を落ち着かせるためにできることもあります。自分に合うものをいくつか選んでみて下さい。小説を読む、アートに取り組む、整理整頓をする、運動をする、そしてテレビ番組に熱中するのもいいでしょう。不安感を抑える助けとなるものなら、どれも素晴らしい方法と言えます。
  • 感謝をしましょう 

    感謝しているものに着目することは、耐え難い経験を乗り越える方法の一つとして科学的に有効性が立証されています。一日のどこかで時間を決めて、自分が感謝していることを最低三つ挙げてみましょう。これは一人でも、友人と電話しながらでも、家族との食事中や就寝前でも構いません。気持ちの落ち着く素晴らしい行動となり得ます。
  • 十分な睡眠を取りましょう

    睡眠は、不安や抑うつ状態に対する免疫を構築するための重要な機能です。睡眠時間を減らしたり睡眠に影響を与える行動、例えばニュースをチェックするといった気の滅入るようなことは避けましょう。代わりに、心が落ち着き、くつろげるような決まりごとを行いましょう。私個人のお気に入りは、温かいハーブティーを飲むこと、ストレッチをすること、そして家族と共に感謝の時間を持つことです。

このドラマチックな変化の旅は、脳の他の部分も活性化しています。特に在宅勤務やフィジカル・ディスタンシング(身体的距離の確保)のように、変化の影響が物理的な空間や社会のネットワークに及ぶ場合には、私たちは途方に暮れるような感覚を味わうことがあります。それは、ニューノーマルへ適応するために、心の中に空間やネットワークの地図を作る内嗅皮質の働きが活発化するからです。

例えば衛生に気をつける、在宅勤務をする、自宅で子供を教育するなど、新たなスキルや習慣を身につけなければならない場合、脳が新たな習慣を自動的に行えるようになるまで、大脳基底核で十分に時間をかけて反復動作をしないといけません。特に考えなくても出来てしまう習慣を新たに確立できるまでには、平均で40~50回の反復が必要だということをご存知でしょうか?例えばあなたがビデオ会議のツールを使う時、20秒かけて手を洗う時、あるいはあなたが感謝している物事に思いを巡らす時、あなたはそうした神経回路を構築しているのです。

現在、おそらくあなたは新しい習慣を身に着けていることでしょう。もしあなたに精神的・感情的余裕があるのなら、今は新しい習慣を実践するのには良い時期なのだと考えてみてはいかがでしょうか。通常の行動がさまたげられる今の時期を、よりよい習慣を構築するために使おうと意識するのです。

もう一つ、おすすめするのは、心配事とうまくつきあうスキルです。一般的に、変化というものは私たちにあれこれ先を読んで心配させてしまうものなのです。NeuroLeadership InstituteのDavid Rock博士は、彼のSCARFモデル(以下)の中で、ストレスにさらされた時に私たちが着目する五つの要素を示しています:

  • Status(地位):他者との関係における自己の重要性についての感覚
  • Certainty(確実性):将来を予測できる能力
  • Autonomy(自律性):様々な事象に対してコントロールできている感覚
  • Relatedness(関係性):他者から得ている信頼の指標
  • Fairness(公平性):物事がいかにフェアで公平であるかについての認識

Rock博士の研究によれば、人間はこれらの要素を自然に選び取り、改善するような行動に向かうようにできています。同時に、私たちを脅かすものからは距離を置くようにできています。

しかしながら、パンデミックのストレスによりこうした要素それぞれのバランスが危機的状況にある中では、自意識を深く掘り下げることが最も重要で、これらの要素を自分の外側にではなく、自分の内側にこそ見出すべきなのです。

以下の活動を再定義し、再構築することが、神経系を調整することを助け、内側から自信を与えてくれます-自分達の重要性を知ること、まだ見ぬ未来を受容すること、出来事をコントロールする欲求をやめること、信頼できること、心の平静を認識すること、などです。

セルフ・ケア

まず、徹底的な自己への思いやり(セルフ・コンパッション)が大事です。あなたが取り組んでいることが何であろうと、数パーセントかでも達成していたならば、それで十分なのです。睡眠をとってから次の日に、この新たな習慣作りに再び取り組みましょう。気が散ってしまうことが続いても、自分自身を許してあげましょう。集中しにくい現象は、トラウマや断絶への反応として、自然なものなのです。Brené Brown博士は最近のポッドキャストで「精神的にボロボロになった際に、人とのつながりや思いやりを維持すること、辛く感じるのを受け止めること」についての素晴らしい知恵を提供してくれています。

自分自身への期待値を下げてあげましょう。パンデミックのストレスに対処する中では、以前にこなしてきた仕事の量や質を維持するのは無理なことなのです。脳の生存本能が多く働いている状態では、分析や創造といった高次の働きは減少するものなのです。そして、子供やパートナーが自宅に一緒にいる場合には、おそらく一日のかなりの部分を子供の教育や遊びの時間に取られることでしょう。それは最もよい仕事をできる環境とは言えません。だから、無理をしなくていいのです。かつてない時代を生きているのですから、自分自身と他者に優しくしてあげましょう。今出来ていることだけで十分なのです。

次に、基本的なことです:よく栄養を摂り、よく睡眠を取り、よく運動をすることです。私たちは皆、これらが体に良いことを知っていますが、ストレス下にあっては、より重要になります。体操をすると、セロトニンという気分のよくなる化学物質が増えるのをご存知ですか?それは私たち皆にとって今こそ必要なものです。ですから、体を動かす方法を見つけましょう。良い運動をするのにオシャレな器具は必要ありません。創造性を発揮して、自分の体重を使えばよいのです(例えばスクワットやプランク)。または家の中にあるもので、ウェイトとして自由に使えるものもあるでしょう(例えばスープの缶)。ヨガには、体を強くするだけでなく、神経系を落ち着かせてくれるマインドフルネスの活動としての利点もあります。

幸いにも、多くの会社がオンラインのクラスを無料で公開しています。いくつか例示しますので、検討してみて下さい。(編者注:以下は英語コンテンツとなります)

マインドフルネス

マインドフルネスは、変化がもたらす有害な影響に備える効果があり、そうしたストレスに対する解毒剤ともなるものです。瞑想やヨガ、今ここにあること、感謝を表すことなど、マインドフルネスは脳に大きな役割を果たします。有史以来智慧として伝えられてきた慣習が、必ず何らかのマインドフルネスの行為に繋がっているのには理由があるのです。

あなたが瞑想の恩恵を受けるために、教祖やヨガ行者である必要はありません。”Altered Traits”という本の著者の一人であるRichard Davidson博士の画期的な研究によれば、一度でも瞑想を行うと、測定可能な形で脳に恒久的な変化がもたらされるとのことです。瞑想する人は長く集中力を保つことができ、将来の事象に関する不安をそれほど持つことがなく、ストレスの多い時に、あまりストレスを感じることがなく、通常の状態に素早く戻ることができるのです。

ハーバード大学医学部のSara Lazar博士は、毎日のマインドフルネス習慣によって偏桃体が収縮し、その反応が低下することを発見しています。

加えて、感謝とマインドフルネスの両方が脳の学習する力を強めることが、いくつもの研究からわかっています。これは、変化にあって新たなスキルや習慣を身に着ける上では極めて重要なことです。Psychology Today 誌に寄せた「The Grateful Brain: The Neuroscience of Giving Thanks」の中で、Alex Korb博士は、感謝に関する重要な発見をまとめています。感謝の習慣を意識的に持つことは、集中力、決断力、熱意を高め、不安、抑うつ、身体の不調を和らげることが、研究によってわかっています。

まだマインドフルネスを探求したことのない方には、試してみることをお勧めします。昨今、多くのヨガスタジオや瞑想の先生、マインドフルネスの専門家が無料のオンライン・ストリーミングでサービスやセッションを提供しています。これに気付き、心がけることは、あなたの人生を救うかも知れません。

遊び

考えにくいかもしれませんが、遊びはセルフケアの強力な要素です。家族やコミュニティで何かトラウマがあった時の子供を見たことがありますか?そのような時に子供が最初に戻るのは、遊びなのです。National Institute for Playによれば、遊びは楽観を生み、好奇心を喚起し、共感を養い、忍耐を育み、物事の熟達に通じるものとされています。逆に、社会や家族、その他の文化において遊びが欠乏していると、抑うつ状態やストレス関連の病気、依存症や対人暴力がより多く現れるとされています。

ソーシャル・ディスタンシングをしながら遊ぶ方法を探ることはできるのでしょうか?自己隔離をしている人たちは、同僚との間でZoomでカードゲームをしたり、クイズを出し合ったり、電話会議ビンゴをしたりして遊ぶ方法を見出しています。ConferenceCallFun.comでは、ビデオ会議用の背景画像に合わせた、とても面白い日替わりの仮装のアイデアを提供してくれます。あなたのビデオ会議のプラットフォームで背景画像の機能を調べて、これを使って同僚と職場の仮装パーティを開催してみてはどうでしょう。ビンゴゲームを楽しむようなつもりで電話会議の一日を過ごしてみましょう。

個人の時間では、ソーシャル・ディスタンシングが広がってからは「どうぶつの森」というインタラクティブなゲームが非常に人気となりました。友達の間でSkypeやGoogle Hangoutsを使ったジェスチャー・ゲームをしたり、YouTubeに上がっているパロディやコメディをシェアしたりランクづけることも行われています。

歌うことも一つの素晴らしい方法です。歌唱は身体的にも感情的にも多くの利点をもたらす行為で、歌は感情を表現する力強い方法の一つです。世界中の町の合唱団にオンラインで参加できますし、ベランダやバルコニーで歌を歌っているお隣さんに合流してもいいでしょう。

遊んでいるときの私たちの身体や感情の状態からは、創造性があふれている状態です。ロジカルで分析的な左脳が一休みする間、右脳がさまざまな洞察をもたらすように繋がり始めてくれるのです。遊びがストレスを緩和し、問題を解決してくれるのはこのためなのです。

今、できるだけ多くの瞬間を陽気に過ごすことは重要なことです。脳神経科学によると、遊びに満ちた環境は、脳の最も高次の認知処理が行われる大脳皮質という部分をしっかりと形成することが知られています。ですから「もうたくさんだ」と感じた時には、壁に向かってボールを投げてみましょう。友達を言葉遊びに誘いましょう。一人で行う単純なものでもいいですし、協力して行う複雑なものでも構いません。一番大事なのはこれです:楽しくすること。

現在私たちの多くが直面している様々なストレスの状況下では、遊び心を持つことは難しいかもしれません。まず私からお誘いします。体を動かしましょう。物語を話しましょう。役柄を演じましょう。協力しましょう。ボール遊びをしましょう。料理をしましょう。またはゲームをしましょう。長丁場になりそうですから、きちんとセルフケアを行うことは、あなたが他者を助けたり、リードしたりする上でも、ベストな状態を作ってくれるものなのです。

この記事は、Britt Andreatta博士のブログに 2020年3月31日に掲載されたものです。 原文(英語)はこちら別ウィンドウで開く/Open the link in a new windowからご覧いただけます。


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