ブリット・アンドレアッタ博士のブログから Blog Post 10
職場におけるいじめと心理的安全性

労働者の75パーセントが、職場いじめの被害者となるか、その目撃者となるかのいずれかの経験があることを知っていましたか?職場いじめは、職場におけるセクシャルハラスメントや人種差別と比べて4倍も多く見られるものなのです。当然ながら、いじめは有能な人々のポテンシャルを抑圧し、彼らが勤務する組織をダメにするだけでなく、関係者のメンタルヘルスや健康状態に直接的な影響を及ぼすものです。

いじめは公然と行われる場合もありますが、隠れたいじめの場合、その標的となったり目撃者となったりする人たちは、職場で気分を害していながら、それがいじめであることにも気づかず、自分を守る方法を知らないことが往々にしてあります。今回は、全米いじめ防止月間(National Bullying Prevention Month)にちなんで、職場でいじめに気付き、自分や周囲の人たちを助けるアクションを起こす方法についてお伝えします。そして、皆さん自身や周囲の人たちが安全な職場を作るために有用な情報源をリストアップします。さらに、安全な職場という概念について一歩踏み込んで、心理的安全性についても説明します。心理的安全性は、パフォーマンスを増進させ、従業員の燃え尽き症候群や離職を減少させます。

職場におけるいじめとは?

職場いじめ研究所(Workplace Bullying Institute;WBI)によれば、「職場いじめ」とは、一人以上の加害者によって一人以上の人物(被害者)に対して繰り返し行われる、健康を害する不当な扱いであるとされています。それは以下を伴う虐待行為なのです。

  • 脅迫的、屈辱的、または威嚇的
  • 仕事の妨げとなるような職務への干渉(サボタージュ)
  • 言葉による虐待

いじめは以下によって特徴付けられます。

  • 日常的に反復される
  • 現在進行中である
  • 攻撃性がエスカレートする
  • 悪意がある
  • 力関係に不均衡がある

あなたやあなたの周りで、いじめられた経験がある人がいるなら(例えば子供の頃、マイノリティ集団の一員として、オンラインで、あるいは単に相性の悪い人と一緒に過ごさねばならなかったなど、色々な場合があるでしょう)、職場におけるいじめでも似たような弊害があることがわかるでしょう。結果として、情緒的ストレス、悪化し続けるメンタルヘルス、身体症状、仕事の能率の低下などが現れます。職場におけるいじめの行動研究の専門家であり著作家でもあるJudy Blando博士によれば、「いじめが対象者に与える影響の上位8項目は、ストレス、うつ、極度の疲労、不安感、恥辱感、悪夢、集中力の低下、不眠である」とされます。同様に悩ましいことに、安全でない職場は、組織に財政的な打撃と余計な仕事をもたらします。WBIによれば、職場での対人的ストレスは、高い離職率、低いモラール、継続的な採用活動の負担、そして組織に対する法的措置の増加につながるとされています。

職場でのいじめに対して行動を起こしましょう

あなたがもし職場でいじめられていたり、いじめを目撃しているならば、黙っていてはいけません。それを続けさせてはいけません。以下のように、すぐに言葉を発しましょう:

  • いじめをする人の行動を、直接的に、落ち着いて、職業上ふさわしい形で指摘しましょう。
  • いじめは違法であるとは限りませんが、ハラスメントや虐待に関して会社が規定を有するかどうかを確かめることは有用です。就業規則集に載っている禁止事項にあてはめることができれば、論拠を補強できることになります。
  • いじめが続くようであれば、上司に相談しましょう(上司がいじめを行っている本人である場合を除き)。人事部門でも構いません(いじめを行っている本人が組織のコンプライアンス構造上にいるのでない限り)。それでもだめなら、職場いじめに対処する上で必要となる法的アドバイスをもらえる弁護士に相談しましょう。下記の電話相談サービスやウェブサイトもチェックしましょう。

情報技術の発達やソーシャルメディアの存在により、いじめは勤務時間帯を超えて、常時人を苦しめるものとなってしまいました。そしてもちろん、私たちの多くは、子供の頃にいじめを経験し、その経験から来る心の傷を抱えてもいます。そのため、いじめがあるのは当たり前だと考え、なるようにしかならないという気持ちになるのは簡単です。でも、その考え方は間違っています。

職場やコミュニティにおけるいじめを減少させるために何ができるか、考えてみましょう。以下の貴重な資料が役に立つかもしれません:

  • Workplace Bullying Institute 包括的で、根拠に基づき、個人や組織から立法府の議員まで幅広く役立つ、実用的なソリューションが掲載されています。
  • Not In Our Town 動画やソーシャルメディア等を用いて、地域の指導者たちが、多様性に富み誰もが参加できる市や町を作る手助けをしています。
  • Stop Bullying 政府関連ドメインで提供されている、いじめを発見したり予防したりするためのサイトです。
  • The Cybersmile Foundation デジタル社会における健全性にコミットしているサイトで、オンライン上で行われるあらゆる形のいじめや虐待に取り組んでいます。
  • Stomp Out Bullying さまざまな種類の人々を対象に、さまざまな種類のいじめに関する資料やホットラインの包括的なリストを提供しています。
  • STOP BULLYING NOW HOTLINE:(米国の電話番号)1-800-273-8255. 米国保健社会福祉省により設立された電話相談サービスです。年中無休、24時間通じます。

職場における心理的安全性

職場で安全と感じられると何がもたらされるのか、考えてみましょう。私の著書 Wired to Connectでは、最高のパフォーマンスを上げるチームにとっての最大の差別化要因の一つは心理的安全性であると述べています。威嚇、ハラスメント、いじめといった行為が存在しないというだけでは、心理的安全性があるとは言えません。この概念はHarvard大学のAmy Edmondson博士により発見され、その研究により、心理的安全性こそが、チームが最高の仕事をするための環境をもたらすものであることが明らかになりました。彼女は心理的安全性を以下のように定義します。「個人がアイデアや疑問や心配事、または過失について率直に話すことにより、チームから辱めを受けたり、拒絶されたり、または罰せられたりすることがないという信頼感。個人間でリスクを伴う行動を取っても安全であるという、チーム内での共通の考え方がある状態。チーム内に相互信頼と相互尊重の雰囲気があり、個々人が自分自身であることを心地よいと思える状態。」

往々にして、ある集団(さらにはそれを含むより大きな組織)の成否は、メンバーがものを言える環境があるかどうかにかかっています。その集団や組織の成功にとっての潜在的な脅威を、個人が指摘できることが大切なのです。事実、Edmondsonの研究により、最高のパフォーマンスを上げるチームは、失敗を最もよく報告したチームでもあることがわかっています。一見矛盾しているようにも思えますが、実はこれは、健康的なチームの特徴なのです。自分の誤りについて口にしても安全でいられると思える状態は、説明責任を果たせている状態でもあります。そして、集団全体がその経験から学ぶことができ、チームの成功にもつながるのです。加えて、誤りは認識されさえすれば、それに対応し修正することができます。誤りが無視されて、より大きな問題となるまで悪化するのとどちらが良いでしょうか。

しかしながら、現実には多くの人が、恥ずかしい思いをしたり、拒絶されたり、罰せられたりすることを恐れて静かにしています。最近の新聞の記事を見返してみれば、誰かが黙っていたことでひどい結果になったり、時には致命的な結末に至ったりする場合があることがわかるでしょう。スペースシャトル・コロンビア号の事故の調査では、NASAには心配事を上司に安心して報告できるような文化が醸成されていなかったことが明らかになりました(Edmonson氏は著書“Teaming”の中で、この事故に関する訴訟記録を紹介しています)。このような不健康なチームは工場の運転室から役員室まで、あらゆる種類の職場に見つけることができます。

このことから、どんなチームにとっても心理的安全性は特に重要なのです。不可欠と言ってもよいでしょう。チームが高度な不確実性の中で仕事をしていて、メンバーが相互依存関係にある場合にはひときわ重要です。

最良のチームやリーダーは共感します

「習慣の力(The Power of Habit)」の著者であるCharles Duhigg氏は、2016年のニューヨーク・タイムズ紙の記事で、心理的安全性の重要性を詳しく説いています。ここで彼は、Google社の「プロジェクト・アリストテレス」という、チームに関する大掛かりなグローバル規模の研究を紹介しています。最良のチームと平均以下のチームを分かつ要素は何であるかを追究したものです。それはEdmondson氏の調査結果とも整合するもので、メンバー個々人の能力やパフォーマンスの水準なども含め、心理的安全性よりも大切なものはないことを明らかにしています。この研究では特に、最高のチームは二つのことをしていたことがわかりました。一つは共感をもってお互いに関わりあうこと、そしてもう一つは全てのメンバーの意見を尊重することでした。メンバーに意見を促すだけでなく、全てのメンバーの貢献を引き出すことを積極的に行っていたのです。

Edmondson博士はこの行動を「チーミング」と呼びました。強いリーダーの力を借りて、チームが最高の仕事をすることを可能にし、力づけるやり方です。私はチームという名詞がチーミングという動詞に変わることで、誰もが参加できる行動となっている点がとても気に入っています。

加えて、Edmondson氏は、リーダーが心理的安全性を積極的に作り出す必要があると説いています。なぜなら彼らが有する権力や地位は、それだけで自然と集団の発言を抑圧してしまうものだからです。能力のある指導者は、意見やアイデア、異論や批判を促すよう、意図的に行動しているものなのです。

心理的安全性は、最も重要なスキルです

私はチームのリーダーやマネジャーに対して研修を行うとき、心理的安全性を作り出す能力が最も重要なスキルであることを強調します。それにもかかわらず、心理的安全性とは何か、ましてその作り方をほとんどの人が知らずにいます。そして、チームやリーダーの良し悪しは、その観点から評価もされていません。でも、実際にはそうすべきなのです。

心理的安全性とは、万人に好かれることではなく、心地悪い意見や信条から身を守ることでもありません。Edmondson氏の心理的安全性の定義は以下の通りです。

「個人がアイデアや疑問や心配事、または過失について率直に話すことにより、チームから辱めを受けたり、拒絶されたり、または罰せられたりすることがないという信頼感。個人間でリスクを伴う行動を取っても安全であるという、チーム内での共通の考え方がある状態。」

言い換えれば、まさに、誰かが率直に発言することに対して集団がペナルティを課さない状態です。彼らの意見は食い違うかもしれないし、誰かの発言によりひどく心地の悪い思いをするかもしれません。しかし、健全なチームは意見の提供やフィードバックを歓迎します。なぜならそれが成功に向けた大変革をもたらすかもしれないからです。

Edmondson氏の心理的安全性の定義の続きを見ましょう。

「チーム内に相互信頼と相互尊重の雰囲気があり、個々人が自分自身であることを心地よいと思える状態。」

それは、職場において個々を尊重し、信頼することです。つまり、集団の取り組みにもたらされる個々の貢献価値を見出し、信頼できる存在として頼りにすることができる状態なのです。

いじめやハラスメントを決して許さないことはもちろん、全員が最良の仕事をするための環境をもつ職場を、私たちは共に責任をもって作っていかなくてはなりません。

この記事は、Britt Andreatta博士のブログに2020年10月26日に掲載されたものです。原文(英語)はこちらからご覧いただけます。


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