パーパスのつかみ方

従業員エンゲージメントの新たな測定方法

人事戦略においては通常、従業員のエンゲージメント* 1 を測るため、いわゆるエンゲージメント・サーベイが利用されていますが、これは従業員の実際の体験の一部しか伝えていません。コーネル大学による全米の社会調査によると、26%の従業員が「そのような調査は無駄だ」という理由で、改善のためのアイデアや直面している問題についての情報を開示せずにいます。また、開示しない理由のうち「調査が無駄だと感じる」とするものは、「開示することを恐怖に感じる」という理由の、実に1.8倍となっていることもわかっています。

従業員のウェルビーイング* 2、生産性、充実感を正確に把握することは非常に重要ですが、こうしたサーベイで部分的な答えしか得られないのであれば、どのようにすれば全体像を把握することができるのでしょうか。 この疑問は、過去20年以上にわたるRob Cross氏* 3 の研究の原動力となっています。彼は、「組織ネットワーク分析(ONA: Organizational Network Analysis)」研究の第一人者として、人員の定着率、パフォーマンス、生産性、ウェルビーイング、インクルージョンの実現などを予測する上で社内ネットワークがいかに重要であるかを理解し、大きなブレークスルーを果たしてきました。ONAは、これまでの従業員エンゲージメントの考え方を完全に刷新するものとなるでしょう。

ONAとは?

ONAは、企業内の公式・非公式な従業員の関係を可視化・分析するものです。Rob Cross氏は、長年の研究と分析の結果、これらのネットワークをマッピングし分析することが、エンゲージメント・サーベイが意図してきたことを上回る結果をもたらすものであることを発見したのです。

ONAにはなぜそれほどにも価値があるのか?

従来のエンゲージメント・サーベイには、回答は自己申告で、特定の時点で行われてきたという限界がありました。ONAを用いれば、実際の状況をより豊かに、より正確に描写することができ、分析と洞察を継続的に行えるようになります。

ONAに関する最新の研究により、以下の4つの重要なポイントが示されています。

1. ネットワークは個人の成果を予測する
従業員のネットワークを分析することで、従業員が有効で、創造的で、成果を生み出すことにつながる人間関係にアクセスできているかどうかがわかります。また、人間関係は従業員のウェルビーイングの重要な要素であるため、そのための貴重な洞察を得ることができます。

2. ネットワークは組織の成果を予測する
社内ネットワークに戦略的に投資することで、イノベーション、レジリエンス* 4、アジリティ* 5、そして生産性の向上につながります。ONAは、ダイバーシティ&インクルージョンの目標を実現するための重要な方法として、最近マサチューセッツ工科大学(MIT)でも紹介されています。

3. ネットワークは測定対象であるだけでなく、構築することができるものである
ONAは、既存のネットワークとその利点を測定するのに非常に有効ですが、企業文化の目標に沿った形で新たなネットワークを構築することも可能です。現在、ほとんどの企業は組織全体のサイロ* 6 を破壊することに直面しており、これはハイブリッドワークの導入でさらに困難になってきています。

4. パーパスこそが、つながりを維持する
ONAによって明らかになるもう一つの重要な点は、パーパスこそが従業員のネットワークや人脈を結びつけるということです。しかし、この点を生かすには、まず社員一人ひとりが個人としてのパーパスを発見できるようにする必要があります。

ONAの力を発揮させる

パーパスの発見と活性化は、私たちImperative社が行っていることの中核でもあります。当社の創業者兼CEOであるAaron Hurstは、「Purpose Economy」の著者であり、「仕事におけるパーパス」に関する第一人者です。

当社が提供しているピアコーチング・プラットフォームでも、長年の研究と専門知識に基づき、パーパスとその充足に関するデータを従来の人口統計データと組み合わせ、予測的組織ネットワーク分析を用いて、組織文化にポジティブな変化をもたらす人脈を作ることに貢献しています。

多くの組織が、社員に強い帰属意識を持たせることを試みています。当社のプラットフォームでも、目的を共有するアイデンティティを超えた関係を構築することにより、人々が人間として見られ、評価されていると感じることができるようになっていることが見てとれます。企業側から見れば、インクルージョンの文化が醸成され、リーダー候補の多様性が向上し、多様な従業員の定着率が高まります。また、従業員は、自分がもたらす多様性が評価されていると感じ、自らの成長を支援してくれる人々と関係を築くことができるようになるのです。


*1  従業員が組織に貢献したいという気持ちをもって業務に取り組んでいる度合い。
*2  幸福を感じたり、社会的にも良好な状態を維持していることなど、広い意味で満ち足りており健康といえる状態。
*3  組織のネットワーク分析の研究者。現在、バブソン大学教授。
*4  困難な状況やストレス等から立ち直る力や、しなやかさ。
*5  環境変化に対する柔軟さを含む即応性。
*6  飼料や穀物、化学原料などを格納する巨大なタンクを並べた貯蔵庫のことであるが、部門が個別最適を図った結果として孤立し、他部門と情報が連携されていない様子を表す。

この記事の原文(英語)はこちらからご覧いただけます。
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