アルムナイ特別賞受賞者とアルムナイ特別賞審査員

―住井さんにお伺いしますが、今回のエッセイではどのようなトピックを選びましたか?

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住井さん:コンテストのテーマにある「身近な異文化体験」ということで思いついたのが、昨年亡くなった祖父のことです。祖父は遠方に住んでいたのですが、私たち家族が祖父のところへ行こうとすると「来なくていいよ」と言われたことがあり、突き放されているように感じていました。でも、それは祖父の本心ではなくて、父の転勤でアメリカに住んでいた私たち一家の忙しさを気遣ってそう言っていたのだということがわかったのです。私の世代は直接的に言われないとわからない傾向があるように思いますが、祖父の世代は気遣いから遠回しにものを言うので、それが私には異文化のように感じられました。ジェネレーションギャップともいえますが。

―審査員の燕昇司さんと手塚さんには、今回、審査基準を考えるところから始めていただきましたが、難しい作業でしたか?

燕昇司さん:もう1人の審査員を含めた3人で審査基準を考えましたが、それぞれ違った価値観を持った人たちで3つの審査基準に絞るのが大変でした。それこそまさに異文化でした。思っていることを言語化する難しさも実感しました。結果、ユニーク性、メッセージ性、表現力の3点を審査基準にしました。

―改めて、住井さんのエッセイを特別賞に選んだ理由をお聞かせください。

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燕昇司さん:多くの作品が文法も単語も完璧なのですが、その中で人の心を動かす表現力があるかどうかを重視しました。住井さんのエッセイは難しい言葉は使われていないのですが、言葉の選び方や構成が良いと思いました。ユニークさにおいては、海外での体験ではなく、日本国内にいる家族の話を選んだ点が、他の作品にはない視点でした。

手塚さん:住井さんのエッセイは、表現力に優れていると思いました。単語の使い方が上手で、流れるように読めました。また、家族という身近なテーマを取り上げていて、多くの人が共感できる内容だったので、メッセージ性においても素晴らしいと思いました。

―審査員の講評を聞いて、いかがですか?

住井さん:とても嬉しいです! 胸が温かくなりました。私は中学3年生から高校2年生までアメリカに住んでいたので、最初はそのときの体験について書こうかとも考えましたが、自分にとって影響が大きかったのは海外での体験よりも祖父のことだったので、そこを深掘りすることにしました。その点を審査員に評価していただけたことに喜びでいっぱいです。

―燕昇司さんと手塚さんにお聞きしたいのですが、今回、アルムナイ特別賞審査員を引き受けようと思った理由は?

燕昇司さん:私は5年前に特別賞を受賞しましたが、おかげさまで今では英語力を生かして多くの経験を積めるようになりました。今回、審査員を務めた理由は、多くの高校生のエッセイを読んでみたいと思ったことです。読むことで自分自身の視野が広がりますし、励みにもなります。IIBCに恩返しをしたい気持ちもあります。

手塚さん:2年前にアルムナイ特別賞を受賞しましたが、この賞は過去の受賞者の現役大学生が審査員ということで、身近な存在の方々が選んでくださったことが嬉しく、自信にもつながりました。それまで賞というものをいただいたことがなかったので、なおさら嬉しかったことも覚えています。その体験から、私も高校生の背中を押してあげたいと思いました。

―ご自身がエッセイコンテストに参加されたことで、これまでの生活で何かポジティブな変化はありましたか?

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手塚さん:大学では英語で授業を受ける学部に在籍しているので、エッセイを書く機会も多くあります。その際に、コンテストに参加して学んだことが役立っています。また、現在は日米協会の学生インターンとして事務局でお手伝いをしています。

燕昇司さん:エッセイで自分の体験を書く練習をしたことで、自己開示の能力が身についたことが一番のメリットです。自己開示をすることは、話す場面でも役立ちます。社会に出るといろいろな人と知り合いますが、自分の経験を相手に話すことでその人との距離が近くなるので、コミュニケーションが円滑になります。

―実際に審査員を務めた感想は?

燕昇司さん:勉強になりました。今の高校生はこういう風に表現するんだ、といったこともわかり、学ぶことが多かったです。

手塚さん:エッセイを通じて高校生の方々が身近な問題に気付いており、感心しました。

―住井さんは、今回、エッセイコンテストに参加したことで何か得られましたか?  また、表彰式に参加されていかがでしたか?

住井さん:自分の話を書いても読む人にとっては面白くないんじゃないか、と思うことも多々あったので、受賞できたことで、エッセイを書くことに自信を持てるようになりました。表彰式では、英語力も高くて優れた同年代の人々と知り合えて嬉しかったですし、とても刺激になりました。

―本コンテストに参加を検討している高校生に、メッセージやアドバイスをお願いします。

燕昇司さん:異文化体験はいろいろなところに転がっているので、それに気付く感受性を養うとよいのではないでしょうか。また、受賞するしないに関わらず、英語でエッセイを書いてみてほしいです。何事にも能動的になることが大事だと思います。

住井さん:高校生のうちに自分の経験について深く考える機会は少ないと思いますが、エッセイを書くことで自分自身への理解を深めることができ、視野も広がると思います。ぜひ積極的に参加をしていただきたいです。

手塚さん:何を書いていいのかわからないまま進めると、うまくいかないことが多いと思います。まずは思いついたことをメモして、その中から本当に書きたいことをピックアップするとよいのではないでしょうか。エッセイを書くことは自分自身の体験を振り返る作業につながるので、チャレンジして損はないと思います。

―みなさんの夢や目標を教えてください。

住井さん:今は受験の結果待ちなのですが、経済格差の是正などに興味があるので、アメリカの大学で経済学を学びたいです。

燕昇司さん:英語のほかにドイツ語の勉強もしていますが、他の言語にもチャレンジしたいです。また、まもなく社会人になりますが、語学力を生かし、世界で働ける人材になりたいと思っています。

手塚さん:今年の秋からイギリスの大学に留学することになりました。そこでは戦争や紛争などについて学ぶ予定です。将来は外交官も視野に入れているので、これから英語も含めて多くの勉強を頑張ろうと思います。

(本記事の取材は2023年1月に行いました。)

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