彌榮自動車株式会社 人事部 人事課

江畑 明宏 氏

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2019年7月号

自発的な行動を促す環境をつくり全社的な英語力アップを目指す

創業から100年以上の歴史を持つ彌榮自動車株式会社は、地元の方たちや観光客から、国賓や要人に至るまでの送迎を行う、京都府において業界大手のタクシー・ハイヤー会社です。現在、訪日外国人旅行者の増加といったビジネス環境の変化に対応すべく、全社的に英語力を底上げする取り組みを行っています。
自発的に乗務員たちの学習意欲が向上するための環境づくりや、それによる変化について、同社人事部人事課の江畑明宏氏に話を伺いました。

外国人の利用客が増加し、日常業務で求められる英語での応対

京都市に本社を構える彌榮自動車株式会社は、創業100年を越え、京都府において長い歴史を持つ業界大手のタクシー・ハイヤー会社です。地元住民や法人、観光客はもちろんのこと、国際会議などで京都を訪れた国賓や要人の送迎も行っています。またバス事業や自動車販売事業、不動産事業なども手掛けている、ヤサカグループ17社の基幹会社でもあります。
現在、京都でも訪日外国人旅行者が増えており、多くの外国人客がタクシーやハイヤーを利用するため、英語での応対を求められる場面が、日常業務の中で頻繁に発生しています。
同社人事部人事課の江畑明宏氏は、「世界経済がリーマンショックから立ち直った頃から、京都に訪れる外国人旅行者が増えてきていると実感するようになりました。中国や韓国、欧米系のお客様だけでなく、東南アジアからのお客様も増えているのが近年の傾向です」と話します。

国賓にも英語を使って応対できる、レベルの高い乗務員を増やしたい

そのような中、乗務員と外国人客が、行き先確認ぐらいの簡単な英会話を行うことができる「指差しシート」を導入するなど、京都のタクシー業界においても対策を講じてきたそうです。しかし同社では、「更に高いレベルでの応対を目指す必要がある」と考えたのです。

「現在当社では、一定の英語力を有する乗務員を『英会話ドライバー』として認定し、外国人の乗客の送迎や観光タクシーを担当してもらっています。観光タクシーの場合、1日から数日にわたり、外国人のお客様を英語で案内することになります。また各国の国賓や要人が京都を訪れた際、その送迎を担うこともあります。このような場面で、英語を用いたコミュニケーションがしっかりと取れる乗務員を増やしていきたいと考えたのです。またそこまで英語力は高くなくても、街中で外国人客をお乗せした時に、英語で基本的な意思疎通ができる乗務員の育成を図りたいという思いもありました」

そこで同社は、乗務員たちの英語力向上を図るため、2015年にTOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)を実施。更に、英語学習初・中級者が気軽にチャレンジすることができるものとして、2017年にTOEIC Bridge Test※を導入しました。
またこれらのテストのスコアを指標として、個々の乗務員に、実際どの程度の英語力があるのか、客観的に把握をしたいという狙いもあったそうです。
※TOEIC Bridge Testは2019年6月にTOEIC Bridge Listening & Reading Testsへ変更になりました。

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洗車・清掃を行い出庫に備える彌榮自動車のタクシー

英語力アップの取り組みを乗務員の意識変革に結びつける

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英語で話しながら外国人客を観光案内する同社乗務員

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警察車両が先導する中、外国要人の送迎を行う同社の車両(写真左から2台目)

現在同社では、有志の乗務員が、月1回の頻度で英会話に関する勉強会を開催しています。同会では、参加者が観光タクシーの乗務員役と外国人乗客役とに分かれ、乗務員役が京都の名所旧跡を案内しているといった想定の下、全て英語でやりとりをしていきます。そして場面ごとに、適切な英語表現についてお互いアドバイスをし合うという、より実践的な内容になっています。
また「天皇と将軍の違いは何か」「なぜ店の前に盛り塩をしているのか」など、外国人旅行者が日本の文化などに関して抱きがちな疑問に対して、「英語でどのように答えればいいのか」というような情報交換もこの場で行われています。
更に、TOEIC L&RやTOEIC Bridge Listening & Reading Testsの受験直前期には、元塾講師の社員による勉強会も開催しています。
勉強会への参加やTOEIC Programの受験は、あくまでも自由参加にしています。義務化しないのは、「乗務員の自発的な行動を期待しているから」と江畑氏は話します。

「当社としては英語力だけでなく、観光知識や接遇マナーも含めて、自ら意欲的に自己の能力を高めようとしている乗務員を育成したいと考えています。このような乗務員が増えれば、『彌榮の乗務員はレベルが高い』という社会的評価が高まり、重要な仕事を発注していただく機会が増えていきます。するとやりがいのある仕事を求めて、より意識の高い乗務員が当社に入社するようになり、先輩の乗務員もその刺激を受けて意識が変わっていく。そうした相乗効果を狙っています」

既にその効果は現れつつあります。最近では、「得意の英語力を生かしたい」という理由で入社してくる乗務員が増えてきたそうです。
またある乗務員は、TOEIC L&Rを受験したところ、500点台だったことにショックを受けて一念発起。勉強を重ね半年後に受験した時には、850点にまでスコアを伸ばしました。更には、京都に特化した通訳案内士「京都市認定通訳ガイド(京都市・宇治市・大津市地域通訳案内士)」の資格も取得。今では英会話ドライバーとして、やりがいを持って第一線で活躍しています。
彌榮自動車では、乗務員の英語力を向上する取り組みを通じて、社員の業務に対する意識改革へつなげていきたいと考えています。 

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