この度IIBCは、英語学習とモチベーションとの関係について、TOEIC Testsの受験者の方を対象にアンケート調査を行いました。大人のための英語塾LEARN & TRAIN代表の高井好美氏に、アンケート調査から読み取れることを分析していただくとともに、モチベーションが低いときでも英語学習を継続するためのヒントを伺いました。
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TOEIC® Testsの受験者に実施したアンケートからひもとく
モチベーションが低くても、英語学習を継続する方法とは
「好き」「楽しい」だけでは、英語学習は続けられない
英語学習は継続が大事であるということについては、皆さんに賛同していただけると思います。では、継続を実現する上で、ポイントになることは何かという問いに対しては、多くの方が「高いモチベーションを持っていること」と答えられるのではないでしょうか。
確かに、今回IIBCがTOEIC Testsの受験者の方を対象に実施したアンケート調査でも、「モチベーションが高い」と答えた方のうち、毎日英語学習をしている人の割合は61.1%で、これに、平日は毎日学習しているという方を合わせると、74.5%に達します(図1参照)。
アンケート調査では、「モチベーションが高い」「どちらかというと高い」という方に対して、なぜモチベーションが高いのかについても尋ねています(図2参照)。それによると、「英語を使ってやりたいことや夢があるから」「英語を学習する必要性が高い状況にあるから」と答えた方が多いという結果になりました。つまり「英語力を身につけて留学したい」といった明確な目的意識や、「今の英語力では、日常業務に支障を来してしまう」といった強い動機が、そうした方々のモチベーションの源泉となっていると考えられます。

一方、この設問に対し、モチベーションが高い理由として、「英語が好きだから」「英語学習が楽しいから」と答えた方もそれなりに多くいます。英語学習において、この「好き」「楽しい」という気持ちはもちろん大切です。人は「好き」で「楽しい」ことには、夢中になって取り組めるものです。
ただし私は、「好き」「楽しい」だけでは、長期にわたってモチベーションを維持することは難しいと考えています。
人間は感情の生き物です。ちょっとしたことで気持ちが前向きになったり、後ろ向きになったりします。今は英語が「好き」で「楽しい」方も、ずっと楽しい状態が続くわけではありません。何回受験しても、なかなかテストのスコアが上がらないときなどは、誰しも英語を学習することが、つらくて嫌いになるものです。そのため「好き」「楽しい」だけに頼っていると、どうしても挫折しやすくなります。一方、明確な目的意識や強い動機があれば、たとえ苦しいときでも、粛々と英語学習を継続することができます。
今回のアンケート調査では、英語学習のモチベーションが低い方にも、その理由を尋ねています(図3参照)。一番多かったのは、「英語学習に楽しさを見付けられないから」という答えでした。この答えからも分かるように、私は、モチベーションの低い方の多くが、英語学習に「楽しさ」を求めようとしているのではないかと思っています。英語を学習していて、誰もが楽しさを感じられるわけではないですし、普段は楽しいと感じている方でも、楽しくないときが必ず訪れます。特に、英語学習初・中級者の場合、英単語や文法を覚えるといった、知識を習得する学習が中心になりますから、そこに楽しさを見付けるのはなかなか難しいものです。
モチベーションを上げたいのであれば、「楽しさ」を求めるより、「なぜ自分は英語を学習するのか。学習することでどうなりたいのか」という目的や動機を、自分の中ではっきりとさせることが重要だと思っています。
学習をする「時間」「場所」「内容」を決める
では、英語学習が好きでも楽しくもないし、学習の目的や動機も今ひとつ弱いという方は、どうすればいいのでしょう?こういう方たちが英語学習を長続きさせるのは、難しいことなのでしょうか―。
そんなことはないと思います。
実は、「英語学習において、モチベーションは必ずしも必要なものではない」と、私は考えています。あるに越したことはないのですが、なくても問題ありません。
図1 Q:英語学習の頻度を教えてください。
※小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合がある




図2 Q:なぜモチベーションが高いのか。考えられる理由・状況を教えてください。(複数回答可)
※ほかの設問で、現在の英語学習のモチベーションの状態が「高い」「どちらかというと高い」と回答された方


図3 Q:なぜモチベーションが低いのか。考えられる理由・状況を教えてください。(複数回答可)
※ほかの設問で、現在の英語学習のモチベーションの状態が「低い」「どちらかというと低い」と回答された方


もう一度、図1を見てください。モチベーションが低い方の中でも、「毎日」学習している方が10.0%、「平日毎日」学習している方が6.7%、合わせて16.7%います。16.7%といえば、およそ6人に1人の割合です。モチベーションの有無にかかわらず、コツコツと英語学習を続けている方がこれだけいるのです。
この16.7%に入るためには、環境設定がとても大切になってきます。環境設定とは、まず学習をする「時間」と「場所」を決めることです。例えば、毎日退社後は、お気に入りのカフェに寄って1時間ほど英語の学習をする、というように、モチベーションが高いときでも低いときでも、決めた「時間」になったら決めた「場所」に行き、学習を始めるのです。
このとき、学習する「内容」を決めておくことも大事です。いろいろな教材をつまみ食いしているうちに、時間ばかりが過ぎていき、結局何も身につかなかったということがよくあります。「このテキストで勉強しよう」と決めた上で、今日はセクション1の勉強、明日はセクション2の勉強というように、取り組む範囲も決め、それを粛々とこなしていくことが大切です。
とはいえ、中には「仕事と育児の両立などでとても忙しく、決めた時間に決めた場所で勉強するのは難しい」という方もいると思います。しかし、そういう方でも、「お風呂に入る」「夕食を作る」といった、毎日必ずやっていることがあるはずです。お勧めは、「お風呂が沸くまでの時間を、英語タイムにあてる」というように、毎日必ずやっていることの前後に、学習時間を組み込むことです。また英語学習は、必ずしも机に向かって取り組む必要はなく、「キッチンで夕食を作りながら、英語の教材を聞く」というように、ほかのことをしながらの「ながら学習」も可能です。学習時間の確保に悩んでいる方は、隙間時間を上手に活用してください。時間は短くても構いません。大切なのは、毎日続けられる環境を設定することです。
私たちが毎日仕事をすることができているのも、環境設定のおかげです。仕事に対して、やる気満々の日があれば、「今日はあんまり働きたくないな」という日もあるものです。しかし、よほど心身が不調なときは別ですが、多くの方は、働きたくないからといって休んだりはしません。時間が来れば働き、やるべきタスクに取り組むものです。
面白いのは、モチベーションが低い日でも、パソコンを立ち上げ、メールをチェックして、といったことをしているうちに、段々と気持ちが仕事の方へと向かっていくこと。だから私たちは、仕事を続けることができているのです。
学習の可視化によって成長を確認する
また、高いモチベーションを持てず、英語学習が長続きしない方に、学習の可視化ということもお勧めしています。
一番簡単なのは、毎日の学習時間を記録することです。記録を取り始め、毎日勉強している状態が一定程度続くと、人は記録を途切れさせたくないと思うようになります。「今日はやる気が起きないな」というときでも、記録のことを考えると、「やっぱり今日も勉強しよう」という気持ちになるものです。
英語学習をしても、すぐに成長を実感するのは難しいという点も、学習の継続を困難にさせている大きな要因の1つですが、ここでも可視化が大切になります。例えば、音読の練習をしている方であれば、英文を読み上げている自分の声を録音してみると良いでしょう。そして1カ月後に録音を聞き直してみます。すると「1カ月前の自分と比べて、今の自分は、英文をすらすらと読むことができるようになっている」と、成長を実感することができるでしょう。
また私は、自分が運営している英語塾の受講者の方には、必ずTOEIC Testsを受験してもらうようにしています。自分の学習状況を可視化する上で、テストほど効果的な手段はないからです。特にTOEIC Testsは、仕事や日常生活の中で、実践的に使える英語力がどれだけ身についているかを測るテストですし、できているパートとできていないパートが具体的に分かるため、受講者の方にとって、とてもメリットがあると言えます。そのうち、私から言わなくても、皆さん自主的に、TOEIC Testsをどんどん受けてくださるようになります。
英語学習に対して真面目な人ほど、「自分の英語力はまだまだだ。もっとがんばらなければ」と考えがちです。向上心は大切ですが、その気持ちが強すぎると、学習を続けるのが苦しくなってしまいます。そのようなときに可視化した過去の記録を見直せば、半年前や1年前の自分と比べて、着実に成長している自分を確認することができます。学習の可視化は、がんばる自分を支える心のビタミンなのです。
図4 Q:モチベーションを高める英語の学習方法やツールがあれば教えてください。(抜粋)
学習意欲を維持するための様々な工夫
今回のアンケート調査で、もう1つ印象的だったのが、英語学習のモチベーションが高い方は、学習意欲を維持するために様々な工夫をされていることです(図4参照)。例えば、「英語を母語としない者同士での英会話」「高校生の息子と中学生の娘の宿題などを一緒にやる」といったように、誰かと一緒に英語学習をしている方が多くいました。確かに、英語学習の仲間がいることは刺激や励みになります。また1人だけで学習するのとは異なり、簡単にサボれなくなります。英語学習を継続させるための工夫としても効果的です。
そのほか、オンライン英会話、アプリ、YouTube、SNS、外国映画やドラマなど、多くの方が自分に合ったツールを見付けて英語学習をしています。今の時代はいろんなツールがありますから、その中から長続きしそうなものを探し出すのは、それほど難しいことではありません。
繰り返しになりますが、私は英語学習で一番大切なのは継続だと考えています。モチベーションが低い方も、環境設定と可視化によって、継続的に英語学習ができる状態を作り上げてみてください。学習を続けることで、英語力が身についてくるとともに、「リスニング力が大分ついてきたから、いずれはハリウッド映画を字幕なしで理解できるようになりたい」「英語を生かせる部署に異動したい」といった、目標や動機が見えてくるかもしれません。
そうなったらしめたものです。明確な目的意識や強い動機があれば、元気な日もそうでない日も、勉強が楽しい日も楽しくない日も、粛々と勉強を続け、着実に成長の階段を上っていくことができるようになるからです。
今は、英語学習に対するモチベーションが低くても構いません。まずは、続けるための環境作りと可視化をすることから始めてみてください。
皆さんの英語力が向上するよう、心から応援しています。
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