日本で実績を積み、現在、グローバルに活躍する注目俳優・笠松将さん。
多忙を極めるなか、日々欠かさず英語学習に取り組むようになった理由とは?
努力というより責任感で英語のセリフを叩き込みました
高校卒業と同時に、俳優を目指して上京した頃は、根拠のない自信だけに支えられていました。朝ドラ、戦隊ヒーロー、モデル……この先一体どんな仕事が来るんだ?って。もちろん順風満帆に進むわけはなく、エキストラにも引っかからないのが現実。アルバイト先から、仕事ぶりを認められて正社員に誘われるほど、俳優の仕事はありませんでした。
今はありがたいことに仕事に恵まれてはいますが、心境は以前と変わりません。エキストラに何度も落ちて凹んでいた若い頃の自分と、もっといい演技ができたんじゃないかなって悔しい思いをしている今の自分は地続きで、常に次こそはって思うから、続けられているのかもしれません。同時に「キアヌ・リーブスと肩を並べるには、あとどのくらいかかるのかなぁ」とか思っている(笑)。結構、お調子者なんですよ。

出演してきたどの作品も自分を成長させてくれましたが、ちょうどコロナ禍に撮影が始まった『TOKYO VICE』はとても思い出深いです。英語が話せる役どころながら、僕自身の英語力は「ハロー」くらい。でも「英語なんて、方言みたいな感覚で、セリフとして丸ごと覚えたらいいだろう」と思っていて、英語を学ぶ必要性を感じていなかった。ドラマを観た人から「すごく努力されたんですね」って褒められたりもしますが、ほぼ責任感からです。なぜなら僕の横に100人くらいのスタッフと先輩俳優の皆さんが立っているんですよ。あの状況で「セリフを覚えてません」とか「発音が難しくて」なんて言えません。僕がやらなきゃ皆さんが帰れない。努力とか高尚なものじゃなく、プレッシャーに煽られて、必死にセリフを覚えた感じでした。
『TOKYO VICE』が転機になり、海外の製作陣から興味を持ってもらえたんです。トータル50人くらいとミーティングしたかな。通訳を挟んで会話をすると、皆さん優しい。「英語が話せなくても問題ないよ。そういう時代じゃないし」ってニコニコしてるんです。そんななか、ある有名プロデューサーが、僕が英語を話せないと知った瞬間、みるみる関心を失って、「今ちょっと注目されているかもしれないけど、英語ができないとハリウッドではまったく通用しないよ。あなたが今の自分を変えたその先で会えるのを楽しみにしてるから」って、たった数分でオンラインミーティング終了。パソコンの真っ黒い画面に映る自分の顔を今でも忘れられません。
最初は開き直ってたんです。「しゃべれないんだから、しょうがないし!」って。でも、そういう態度を見直して、その日から毎日、英語の勉強を続けています。
ゼロから一歩踏み出せばあとは走り続けるのみ!

勉強は試行錯誤ですね。まず中学の英文法から毎晩喫茶店で勉強し直しました。でも全然しゃべれない。だから、文法だけじゃダメなのか、発音の勉強もやるかと音声を聞いて、なんとなくわかるんだけど、まだしゃべれない。次に文の構造がわからないからなのかもと思い、また英文法に戻る。「現在進行形で表す未来ってなんだよ!?」とテキストに八つ当たりしながらがんばる。それでもしゃべれない。こうやって、壁にぶつかったときは違う方法を考えたり、前に勉強したところに戻ったりしています。
がんばる日のメニューは、英語で日記を書いたあとに、オンライン英会話をして、英語の動画を観たり。忙しいときも、すきま時間を使って、日本の漫画を英語で読んだりしています。一歩踏み出したらとにかく続ける。やる気に油を注ぎ続けるんです。海外での撮影は、僕にとっては語学留学みたいなもの。手元に10の英語力があるとして、それを資本に海外で一気に20に増やす感覚です。また20を日本に持ち帰って、地道に25くらいにして、再び海外で50にする。その繰り返しです。
俳優を目指す前の僕は、失敗しない安全な道を選ぶことばかりを考えていました。でも、エキストラに何度も落ちて、恥ずかしい思いをたくさんして、英語も毎日「わからん!」って頭を抱えながらわかったことは、できないという状態は“点”でしかないということ。動けば点は線になって、やがて形になっていく。でも点のままだと形にならず、なにも得られない。1年前の自分を振り返っただけでも「あのときに比べたら英語わかってるじゃん。成長してるじゃん」って思えるんですよ。今では、できないことがあるのは、豊かなことだと思えるようになりましたね。
俳優
笠松 将 さん
1992年生まれ。下積みを経て、2019年には、もっとも多くの連続ドラマ・映画に出演した20代男性俳優に。日米共同制作によるドラマ『TOKYO VICE』では英語での芝居に初挑戦した。3月には『ガンニバル』シーズン2がディズニープラスより配信。

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