英文メール強化塾 相手を動かすライティング戦略
Where’s the money!
目的 |
ABC基金に次の寄付をする前に、同基金がXYプロジェクトへ出資することを確実にすること |
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状況 |
【私たちの寄付金はどこだ!】 日本の製造会社であるAGJ社は、工業関連の海外NGO団体であるABC基金に寄付をしている。なぜならAGJ社がその目的を支持しているXYプロジェクトへの出資をABC基金が約束したからである。 ABC基金からは今年も寄付を頼まれているが、AGJ社で勤務するカトウさんの上司は、まだ対応を決めかねている。ABC基金が約束どおりにXYプロジェクトへの出資を行っていないという報告がある。ABC基金に出資先の決定権があることは認めるが、仮にABC基金がXYプロジェクトへの出資を行わない場合、AGJ社としては同基金への寄付を今後しない方針だ。 |
力関係 |
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戦略 |
資金がらみの約束はデリケートな問題であるため、XYプロジェクトへの出資について誰かを責めることなく、丁重に問い合わせするよう上司から言い渡されています。その一方で、AGJ社がABC基金への新たな寄付を認める前に、当初の約束どおりXYプロジェクトに出資していることを確認するよう指示されています。 カトウさんはABC基金がXYプロジェクトへ出資することを寄付決定の直接的な条件としてはならないと、上司から言われています。というのも、ABC基金への運営干渉と誤解される可能性もあるからです。そこで、これらの問題を分けてABC基金に対する次の寄付については未決定であることを知らせる一方で、別件として、XYプロジェクトへの出資について確認を頼みます。たとえ、これらの二つの問題を分けて書いても、ABC基金はそのつながりを理解するでしょう。 |
表現の強さ |
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ポイント |
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強化メールの解説
1.意図的にあいまいにする
- → Confirmation of support
- 相手はこの件名がABC基金の依頼した寄付金に言及していると理解しますが、XYプロジェクトへの支援についての、遠回しの導入にもなります。
2.上司の力を使う
- → Director of General Affairs
- ABC基金が依頼してきたような寄付に関する決定権は総務部に委ねられます。そこで、カトウさん個人に決定権がなくとも、決定権をもつ上司の下で働いているという立場は、今回の状況に少なからず影響力を持ちます。相手はカトウさんを軽視できないはずです。
3.間接的にプレッシャーをかける
- → your request for an additional donation this year
- この表現は次の寄付金提供についてはまだ審理中であり、確かではないと相手へ伝える最初の信号です。相手としてはAGJ社の決定に対して有利な影響を与えるよう何かしなければならないと感じるでしょう。
4.未決によるプレッシャーをかける
- → waiting for that decision
- これは、最初の問題(ABC基金に対する寄付)に対する結論です。相手は、寄付を得られるかどうかまだ半信半疑であり、AGJ社の善意を得るために努力が必要であると、はっきりとプレッシャーを感じるはずです。
5.こちらの本当の目的を紹介する
- → On another question
- この表現でABC基金の目的(寄付を得ること)とAGJ社の目的(XYプロジェクトの支援)を分離します。ABC基金の運営を干渉するような印象を防ぐために、このように二つの目的を分けても、事実関係から実際のつながりは明白です。
6.優先事項を強化する
- → the XY project is very important to us
- この表現で、AGJ社にとってXYプロジェクトがABC基金への評価に関する重要な要素であることを相手にいま一度思い起こさせます。このAGJ社の評価態度に好意的な影響を与えるために、ABC基金はXYプロジェクトに関して、もっと前向きになることが期待されます。
7.プレッシャーをかけて迫る
- → confirm your funding to that project
- ABC基金がXYプロジェクトに出資していないかもしれないことはAGJ社の調査で分かっています。もしそれが本当なら、ABC基金は過去の出資を裏付けられないでしょう。しかし、相手はこちらの寄付がほしいわけですから、相手に再考させる説得材料となるかもしれません。
8.相手にとって都合が悪い事実に言及する
- → the XY project may have to suspend 2014 activities
- このメールの中で、情報源こそ明かしませんが、ABC基金がAGJ社との約束を守っていないことを指し示す具体的な事実をAGJ社が握っていることを示します。
9.相手に正しいことをするチャンスを与える
- → may I ask you to let us know your present policy regarding support for this project?
- 前回寄付時のXYプロジェクト支援に関する約束をABC社が破ったというウワサを否定する機会を、相手に失礼がないように提示します。もしくは、もしウワサが本当ならその方針を変更する機会を与えます。
10.相手の関心事に関与するプレッシャーをかける
- → AGJ’s budget for all foundation donations for the coming year
- もし止むを得ない理由がある場合、「締め切り」は最も強い説得力をもちます。ここでは、相手が期限どおりに回答しない場合、AGJ社からの寄付決定に悪影響が出ることは切実であるため、期限までに必ず返答しなければならないと理解するでしょう。