英文メール強化塾 相手を動かすライティング戦略
This could be a little tricky.
目的 |
ライセンシーとの契約を遵守しながら、必要な情報を得ること |
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状況 |
【ちょっと扱いにくい事案ではあるけれど】 工場や船舶向け大型機械の製造企業であるAGJ社で海外営業部に勤務しているカトウヒロシさんは、中国の造船所ABC社のG.Chanさんから、現地で建造予定の貨物船に使用するデッキクレーン製造のための見積もりを依頼された。 しかしAGJ社は、中国国内における同社造船機械の製造に関してWXY社とライセンス契約を結んでおり、ライセンシーであるWXY社との契約内容には中国国内におけるすべての市場展開および製造許可が規定されている。ただし、中国の顧客がAGJ社の日本工場で製造された機械を特に希望する場合、AGJ社の販売を許可するという事項も契約に含まれている。 |
力関係 |
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戦略 |
今回の状況は、少しデリケートです。WXY社との契約では、中国の顧客から直接AGJ社へ依頼があるなら応じることが許可されていますが、中国市場において造船機械を勧誘することはできません。そこで、積極的にビジネスチャンスを狙っているという姿勢を見せずに、この依頼について状況を確認しなければなりません。 |
表現の強さ |
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ポイント |
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強化メールの解説
1.スレッドのタイトルに自分の目的を加える
- → Clarification on your request for quotation AGJ123
- このメールの件名は、Deck Craneでした。トピックに関するすべてのフォローメッセージは件名を変えずにそのまま維持することもできますが、読み手が理解しやすく、書き手にとっても後で探し出しやすいように、メールの具体的な目的を最初の件名に加筆することも有効です。
2.トピックを丁寧に紹介する
- → Thank you for your inquiry regarding an AGJ quotation (AGJ123)
- まず冒頭で感謝の気持ちと仕事の事案を迅速に掲げます。友好的かつビジネスライクなアプローチです。
3.相手が何か間違ったことをしたと示唆する表現を避ける
- → I need to confirm one point on our eligibility to participate in this contract
- ABC社がカトウさんに問い合わせをしてきたという事実は、相手がAGJ社とWXY社間のライセンス契約を認識していない可能性を示唆しています。カトウさんとしては、相手が意図的にライセンス契約に違反する事柄を要求しているようなニュアンスは避けたいので、ABC社の問い合わせが正当か否かではなくAGJ社の適格性に焦点を当てます。従って、次のように書くことはしません。
“I would like to confirm that your inquiry complies with our legal responsibilities.”
4.具体的な質問で問題を明確にする
- → Could you let me know if the ship owner has specifically requested our quotation?
- 今回のような状況でメールを書くとき、事態の背景から書き始めて、その後で問題を提示するメールサンプルをたまに見かけます。しかし、問題を知らなければ、読み手は背景の重要性を理解することができません。ですから、ここでは問題から始め、その問題に関連する情報だけを伝えています。このアプローチで、説明全体が明確で理解しやすくなり、結果的にメール本文が短くなるメリットもあります。
5.相手が知らないと仮定する理由を挙げる
- → I'm asking this because
- 当たり前に聞こえるかもしれませんが、理由を挙げる目的は、相手がこちらの要望どおりに動くよう説得することです。もし相手が契約に関する情報をすでに知っているとカトウさんが確信しているなら、このパラグラフ全体を次のように書いているでしょう。
I need to confirm that the inquiry originated from the ship owner, and is not a response to our marketing efforts in China.
6.相手を責めずに結論を出す
- → AGJ may quote on the project
- カトウさんは、ABC社が不適切なことをしたような含みをもたせたくないので、ニュートラルな事実に焦点を当てます。そのため、ABC社を評価するような表現(In that case, your inquiry is acceptable.)を避け、自社の参加資格にフォーカスしています。
7.最後のリマインダーの前に、心のこもった文末の挨拶を書く
- → Thanks for your help on this
- 当然、最後のパラグラフは相手が最後に読む部分です。最後に読んだ内容は、後で相手が最初に思い出す事柄かもしれませんので、相手が何をしなければならないかを最後にリマインドします。しかし、相手と協力的な雰囲気をつくるためにも、友好的な挨拶を添えて、その内容を紹介します。
8.WXY社が知りたがる事柄を考慮する
- → including documentation of the ship owner’s inquiry if possible
- さまざまな理由により、実際にABC社がWXY社を通さずにAGJ社と直接取引をしたがっている可能性は否定できません。そして、WXY社が、この件がライセンス契約に違反するかどうかについて質問してくる可能性はもっと高くなります。そこで、カトウさんは相手に対して、メールの返答だけではなく、ABC社の顧客である船舶所有者からの問い合わせ記録の提供を依頼します。これで、必要があればWXY社に証拠を提示できます。