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2023年に、ルーツである師範学校の創立から151年、開学から50周年を迎えた筑波大学。
研究者やスポーツ選手など、幅広い領域で世界を舞台に活躍する人材を多数輩出してきました。
常に時代の先をいく教育改革を進めてきた筑波大学が目指すこれからの人材育成について、永田恭介学長にお話をうかがいました。
教育に必要なのは
学際性と国際性に富む環境
私たちの大学には、開学以来一貫して掲げている学際性と国際性を備えた「開かれた大学」という建学の理念があります。
「学際性」は一般的に、研究対象が複数の学問領域にまたがっていることを意味しますが、本学ではいろんな分野を横断的に学び、それらを統合して新しい知識や技術、価値観を創出することとして捉えています。
例えば、ロボットと暮らすことが当たり前となった近い将来、家族のように可愛がっているロボットの子犬を誰かに盗まれた、壊されたとしたら。現在の法律では盗難であり器物損壊でしかありませんが、可愛がっていた側の方にしたら、誘拐された、殺されたと同じくらいのショックを受けることでしょう。ロボットと共存する社会になる近い将来には、ロボット工学だけでなく、哲学、生命学、法学などの垣根を越えて一緒に考えていく必要がある。これがまさに学際性なのです。
「国際性」は留学生率や、英語の授業数などが指標となります。日本の大学が国際化に取り組み始めたのは2012年頃でしたが、筑波大学では2005年度から、ベトナムをはじめ海外14カ所に拠点を置いて、海外からの留学生の誘致に取り組んでいます。国立大学における留学生比率は、たいてい東京大学と筑波大学のどちらかが1位、2位です。2024年5月1日時点で、学部・大学院を合わせて16,722名いる学生のうち約14%*が留学生です。また、日本人学生の海外留学も飛躍的に増加しており、2023年度は1,992名の学生が留学を経験しています。
* 正規生だけの場合は約12%
独自の取り組みで
「国際性の日常化」を目指す

“国際社会で活躍するための発信力を高めるために英語力の向上は不可欠だと考えています”
この10年、「トランスボーダー大学が開く高等教育と世界の未来」というテーマのもと、文部科学省が実施するスーパーグローバル大学創成支援事業(SGU事業)に積極的に取り組んできました。トランスボーダー大学とは、国境や学問分野の壁を越えて、世界中の大学や研究機関と連携し、教育や研究を展開することを目指すものです。
グローバルな視野を持つ人材育成のための具体的な戦略の1つに、「Campus-in-Campus(CiC)」という事業があります。これは、世界中のパートナー大学と提携して共通のカリキュラムを構築し、教育と研究面で深い連携を推進するものです。パートナー大学も含めて、学生たちは他大学の現地キャンパスやオンラインで授業を受け、自分の大学にいるのと同じように単位を取得、研究をすることが可能です。
また、筑波大学では留学生と日本人混合で暮らす宿舎「グローバルヴィレッジ」を設けています。1つの部屋に日本人と留学生が5人で一緒に住むことで交流が自然と生まれます。
授業は、英語だけのクラスや日本語と英語のバイリンガルのクラスもあります。学内には気軽に食べられるハラルレストランもあり、これがおいしいので私もよく利用します。外国人であることや文化の違い、国境という枠を意識せず、海外に行ったような環境が普通にあるのが理想です。“日常”として一緒に暮らす「国際性の日常化」、さらにその先の「Beyond the borders」に向かい不断の改革を続けていきます。
マレーシア政府の熱意と共に
マレーシア校を開校
2024年9月に筑波大学マレーシア校が開校しました。新しい教育・研究を追求するなかで、これまでとはまったく違う教育カリキュラムを組んでみたいと考えていました。とはいえ、日本で進めるには様々な規制があって難しいだろうなと思っていたところに、マレーシアのマハティール元首相から、国家プロジェクトとして取り組むので是非マレーシアで開校させ、日本ならではの規律や勤勉さといった価値観を取り入れた教育を行いたいという熱い要請がありました。
マレーシア校は、本学としては新学群「学際サイエンス・デザイン専門学群」として、文系や理系に偏らない幅広い分野の教育を展開し、学際的な課題解決型授業を中心とした教育を実現させていきます。
グローバル人材として必要な
英語力を高めるために
筑波大学では、国際的に活躍できる人材の育成において、英語力の向上が不可欠であると考えています。学生たちが国際社会で活躍するためには発信力、高い英語力が求められます。私自身も生物学のポスドクの研究者としてニューヨークに5年間留学した経験からも、英語のレベルが上がると発信力が圧倒的に変わることを実感しています。
ですから、学生が卒業後にどのような環境でも対応できるよう、実践的な英語力の育成に力を入れています。日本人は、日本語でもディベートをするのが苦手な人が多いものの、そこを乗り越えさえすれば普通に対応できるようになるはずです。TOEIC Listening & Reading Testは、大学が費用を負担し、必ず全員が1年次と3年次にカリキュラムの一環として受験しています。
翻訳ツールによって会話がしやすくなる未来も近い将来やってくるでしょう。それでも相手と対等にやっていくためには、相手の国を尊重するだけの文化的素養と歴史的素養を持っていることが重要です。英文学などを通じ言葉の本源的なおもしろさを知ることも有効です。英語ができるようになると、さらに良いものを得ることができる、世界が広がると信じています。
筑波大学
永田 恭介 学長
1953年愛知県生まれ。1976年東京大学薬学部薬学科卒業。1981年同大学薬学系研究科博士課程修了。薬学博士。国立遺伝学研究所助手、東京工業大学助教授を経て、2001年より筑波大学教授。2013年に学長に就任。
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