英文メール強化塾相手を動かすライティング戦略
Blame it on the customer?
目的 | ![]() 相手に品質上の問題を改善させること |
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状況 |
【お客様のせいにはできないですよね?】 服飾雑貨の輸入販売会社AGJ社に勤務するカトウさんは、ABC社からアクセサリー類やファッション傘などを輸入し、日本国内で小売業者を通じて販売している。 ABC社から仕入れている傘商品のうち、Floralシリーズについて小売業者からクレームが出ており、カトウさんはこのクレームに対処すべくABC社にモノ申さなくてはならない。Floralシリーズはとても人気が高く売上も好調だが、水に濡れると生地が縮み、その後、傘がちゃんと開かなくなるとの苦情があり返品も多い。 AGJ社としては、人気のシリーズであるだけに、できれば不具合を改善させたいところだ。同社の技術顧問の話によれば、縮みの原因は綿含有量が高い生地の性質にあるというが、そもそも、水に濡らすことができないなら傘としての使い道はない。 小売業者にとって、定期的に不良返品される商品を販売し続けることは無理な話である。カトウさんとしては、何とかABC社の協力をとりつけFloralシリーズの販売を継続させたい。 |
力関係 |
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戦略 | ABC社の従業員は、職人技を看板とする老舗企業であることに高い誇りをもっているため、それを逆手にとって、彼らのプライドをうまく利用する作戦をとります。ABC社製品に対する小売業者の信頼を維持させるために、カトウさんらAGJ社のパートナーとして相手を鼓舞します。 |
表現の強さ |
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ポイント |
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強化メールの解説
1.解決への道筋を共同課題とする
- →I need to ask for your help
- この依頼表現では、相手に自発的な協力を求めています。Ms. Smithに一方的に問題解決を要求せず、書き手のカトウさんも共に課題に取り組む姿勢を見せています。
欠陥品の買い手であるカトウさんは、もっと強気なアプローチをとることもできるでしょうが、プライドの高い相手にはより説得力のあるこのソフトな表現を選択します。
2.控えめに相手の欠陥を指摘する
- →I’m sorry to have to report
- カトウさんは相手をパートナーとして説得することを決めたわけですから、当該問題については、相手にショックを与えたり怒らせたりしないよう、控えめかつ遠慮がちに説明します。
しかし、製品の不具合については、直接的にすべての事実を記載します。
3.個人的にアピールする
- →I’d be really grateful for your kind support
- この協力要請は、書き手からMs. Smithに対して個人的に発しています。ABC社の担当としてよりも、Ms. Smith個人に対する頼みとしたほうが、相手にとって断りづらくなると考えられます。しかし、問題が解決されない場合のABC社への影響は、あとで明らかにしています。
4.相手を書き手側につける
- →as we work with the retailers
- この “ we ” は相手のことを含み、カトウさんとMs. Smithが、チームとして共に問題解決に取り組むことを意味します。
5.問題が解決されない場合の影響を明確にする
- →and other
- この表現で、もし不具合が改善されなければ、店頭にあるすべてのABC製品の評価に影響する、と明確に示唆しています。
6.相手に自信を与える
- →Frankly, we love your Floral line
- 相手の製品を褒めることで、Ms. Smithを動かします。この表現では、ただ単純に製品の輸入を取りやめるのではなく、何とか製品欠陥の問題を解決したいという書き手の誠実かつ強い熱意を示します。
7.問題を最小化する
- →in that line only
- ただひとつの製品ラインの問題を解決することは、全製品に対する改善を要求されるより遥かに対処が容易に感じられます。Ms. Smithとしては、対象がABC社の全傘製品ではないことで負担が軽くなると考えられます。
8.専門家の見解を利用する
- →Our consultant at the Japan Umbrella Research Council
- 自分よりも傘製品に詳しいMs. Smithに対して、カトウさんの意見では説得力がないかもしれません。そこで、カトウさんはABC社を動かすために、専門家の見解を利用します。
9.相手の反論を予測する
- →I understand that your product label advises
- 相手からの反論が予想されるなら、できるだけ前もって答えてしまいましょう。ここではカトウさんは、予想されるABC社からの「縮みの発生は、製品ラベルにある取扱説明事項を守らない消費者のせいだ」との反論に対して、製造者による品質欠陥の責任を消費者に転嫁できるわけがない、というモラル上の問題を提示しています。
10.誰が何をすべきかを示す
- →earn the confidence
- カトウさんはこの表現で、プライドの高いABC社従業員が、同社に対するこれまでの高い評価だけを理由に、客離れしないと信じている場合に備えてクギをさします。小売業者の信頼を維持するためには、今回のFloralラインの生地欠陥を改善する努力を含め、これからも継続的な努力が必要であると指摘しています。