英文メール強化塾 相手を動かすライティング戦略
It may seem small to you . . .
目的 |
間違いを繰り返す相手に送り状に正しく記載させる |
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状況 |
【そちらにとっては、小さなことでしょうが……】 警備会社の日本法人に勤めるカトウさんの頭痛のタネは、本社勤務の仕事相手が小さな事務的ミスと思われることを繰り返すことで、そのせいでカトウさんには意外に面倒がかかるのである。 海外本社から日本国内での運用に必要な機器が定期的に送られてくるので、カトウさんは税関で関税を支払い、その機器を引き受けなければならない。関税は日本円での総額に基づき算出される。送り状(invoice)のなかには総額を記載する箇所がふたつあるのだが、本社の担当者はなぜだかときどき、それぞれ異なる総額を記載してくるため、関税が計算されず、荷物の引き受けができないのである。 本社の人間にとっては単純な事務的間違いかもしれないが、カトウさんにはとても面倒なことになるのである。税関の職員からは、積荷の引き渡し前に送り状の記載ミスを修正するよう要求され、そのせいで必要のない手間と遅延が生じることになる。そして、今回もまた同じ間違いのある送り状を受け取った。 |
力関係 |
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戦略 |
この件は最新の送り状でもまた起きており、問題自体は簡単に解決できることです。日本円での総額は、XYデータベースに示されている正味価格と同じ金額であり、データを確認すれば済む話だからです。 |
表現の強さ |
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ポイント |
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強化メールの解説
1.丁寧かつ個人的に依頼する
- →I wonder if I could ask for your help
- これまでそれなりの期間、相手と一緒に仕事をしていて、それなりに友好的な関係が築けているなら、個人的なレベルで相手に訴えることが可能です。この丁寧な表現は、かなり上の立場の人に対して使うことがありますが、相手の力添えを特に訴えかけたいとき、同等な立場の相手に対しても使えます。
2.リマインドする
- →once again
- この表現は、同じ問題が前にも起きていて、まだ解決していないことを相手に思い出させるために役立ちます。やや直接的ではありますが、執拗すぎることもありません。特に、丁寧かつ個人的な依頼を添えている場合には有効です。
3.相手を責めずに、問題があることを示す
- →There still seems to be a misunderstanding
- 相手を個人的責任から守る表現です。例えば、次の表現と比べてみましょう。
I’m afraid you still have not corrected this procedure. - “misunderstanding”という単語によって、これは誰にでも起こり得ることといったニュアンスが加わり、問題の大きさを抑えられます。次の表現と比較すると分かりやすいでしょう。
I’m afraid you’re still doing this wrong.
4.相手の反論を予見する
- →I realize that for your staff this may not be such a big issue
- 本社の事務スタッフが、この送り状への記載は大した仕事じゃないと考えている可能性もありますし、日本円での総額を2回も書き込むことさえ嫌がるかもしれません。相手のこのような態度(気持ち)を理解していることを示すことで、それが正しくない理由を示しやすくなります。
5.遠慮しつつ、事実をはっきり述べる
- →to tell the truth
- この“to tell the truth”という表現により、腹を割って相手と接する姿勢を伝えると同時に、遠慮の気持ちを添えつつ問題を述べることで、相手に対する配慮も示します。
6.実際に問題が起きていることを示す
- →cause us problems with Customs
- 相手が、自分たちのやり方が日本で税関との間に問題を引き起こしていると理解すれば、こちらに共感するようになります。「税関との問題」と聞けば、国を問わず誰でもできれば避けたい問題と理解するはずです。
7.ほかの誰かのせいにする余地を相手に与える
- →you could get the staff concerned to take care of
- この表現が伝えているのは、“the staff concerned”がメール相手本人ではなく、ほかの誰かがミスをしているというニュアンスです。これと同じニュアンスで、もう少しフォーマルな表現として、“have the staff concerned take care of . . .” も使えます。
8.命令せずに、必要条件を説明する
- →. . . have to be the same
- 書き手のカトウさんには、この件を正すよう相手に命令するだけのチカラはありませんが、この状況が要求することとして、相手に伝えることができます。
これは、“must be the same”と同じくらいの強さがあります。相手へ直接的に“You must make both values the same.”と命令するに足りるチカラがなくても、“Both values must be the same.”と説明の形で要求できます。
9.百聞は一見にしかず
- →As you can see in the attached invoice
- 添付された送り状のスキャンデータ(間違い個所を明記したもの)は、詳細に説明するよりもはるかに明確に問題を提示します。
10.相手がするべきことを、情報として提供する
- →You can find the correct value
- この文で、必要な事柄をどうすればできるかを、友好的かつ参考として相手に伝えます。
もし、要求内容をもっと強く示したいなら、次の表現も考えられます。
(Please) use the Net Value from the XY data base as the Total Value JPY for the customs invoice.
11.(送り状記載の)修正が必要である旨をより明確にする
- →could I ask you, please, to . . .?
- このパラグラフでは、問題のある送り状を修正するという明確かつ具体的なアクションを指示します。カトウさんは相手が取るべきアクションを明示する表現を使います。この文では、依頼(要求内容)の度合いを少し強める傾向のある“please,(please+,)”を文中に使い、相手に訴えます。
12.なぜこんなに急いでいるかを伝える
- →. . . we cannot pay it without the corrected invoice from you
- 急な締め切りのある依頼の場合は、相手が理由を知っていることが確かな場合を除いて、その理由を添えるべきです。