国際的スポーツイベントと英語

2018年11月号

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ワールドカップを契機に市全体の国際化を推進

静岡県袋井市に立地し、「エコパ」の愛称で知られる静岡スタジアムは、ラグビーワールドカップ2019の開催地に選定され、予選の4試合が行われます。袋井市は、ラグビーワールドカップを機に市民と海外の方たちとの交流を深めてもらいたいと、2017年に国際交流室を設置。ワールドカップの際に海外からの観戦客をホームステイで受け入れる「ふくろい版ホームステイ」の推進や、国際交流員による出前英語講座など、さまざまな取り組みを行っています。

袋井市 市民生活部 スポーツ推進課 ラグビー開催準備室 主査

辻本 潤 氏 

 

袋井市 企画財政部 企画政策課 国際交流室長

鈴木 浩方 氏 

市担当者からのメッセージ


辻本 潤 氏 / 鈴木 浩方 氏

袋井市は、2002年のFIFAワールドカップの開催地でもありました。その際は、エコパスタジアムの建設や愛野駅の開業で、ハード面では数多くのレガシーを残すことができました。一方、国際交流をはじめとするソフト面でのレガシーの構築は、十分とは言えなかったという反省点があります。
そうした過去を踏まえ、市長がイニシアティブを取って積極的に進めているのが、ラグビーワールドカップを契機とした袋井市の国際化です。特に外国人選手と市民の交流だけではなく、多く訪れるであろう外国人観光客との交流を含めた街全体の国際化を狙っています。

その一環として2016年から取り組み始めたのが、ホームステイトライアルです。市民の方が自ら外国人を迎え入れることで、草の根レベルの国際交流を進めることができると考えています。
さらに昨年からは、市民が英語に親しむことができるよう英会話教室を本格的に始動させました。中学生以上のクラスと親子クラスを開設しているのですが、非常に人気で、ほとんどのクラスが定員を超えています。英会話教室では、日常的な英会話はもちろん、タブレットを使った勉強やスカイプを使った英語コミュニケーションなど工夫を凝らしたレッスンを展開し、英語に親しむ機会を設けています。

ラグビーワールドカップは、袋井市の国際化に向けて大きな一歩であることは間違いないと思っています。国際交流室の活動も少しずつですが市民に浸透してきました。「ふくろいまるごとインターナショナル」という袋井市の国際交流や英語にまつわる情報を発信する公式サイトをオープンし、国際交流に興味のある市民が登録をできる「ハローフレンド」には、約600世帯の会員がいて、ラグビーワールドカップを一緒に楽しもうと考えている市民が増えていると実感しています。
現在は、袋井市の国際化に向けて種をまいている状態です。ラグビーワールドカップ後もレガシーとして残していけるよう、今後もさまざまな取り組みを進めてまいります。

袋井市 国際交流員

袋井市では、2016年から、2名の国際交流員を採用しています。ラグビーワールドカップ開催に向けて、出前英語講座やイベントの企画・運営などを行っているお二人にお話を伺いました。


レイチェル・ミーハンさん
アイルランド・ダブリン出身 2018年8月から国際交流員

袋井市に来てまず思ったのは、緑豊かでとても美しいということです。ゆったりとした雰囲気のこの街で国際交流員として活動できることを、とても誇りに感じます。

夏休みには児童クラブで、子供たちを相手に出前英語講座を行いました。英語を使ったゲームなどいろいろなアクティビティをしたのですが、子供たちは英語が話せなくても積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくれたのが印象的でした。子供たちが今後も英語と国際交流に興味を持ち続けてくれたら嬉しいです。

来年のラグビーワールドカップ、静岡県で開催される最初の試合は私の母国アイルランド対日本です! ラグビーを生で観戦する臨場感は素晴らしいので、ぜひ多くの方に足を運んでもらいたいです。私たちも本番に向けて、市民の皆さんに国際交流を広めるべく、活動していきます。


サミュエル・ウィーグナーさん
ニュージーランド・クライストチャーチ出身 2016年8月から国際交流員

出前英語講座を、消防署の職員の方を対象に行ったことがあります。
緊急時に使用する実践的な英会話を教えました。ラグビーワールドカップに向けて、このような取り組みも需要が高まっていると感じています。

社会人向けの英語教室では、単に英語を教えるだけではなく、母国であるニュージーランドの文化や習慣なども伝えることを意識しています。実際、ニュージーランドのことを話すと非常に興味を持っていただき、「日本ではこうだけど、そちらではどう?」といった反応が返ってくるなど、コミュニケーションの活性化につながっています。またラグビーワールドカップにちなんで、ラグビーのルールや専門知識を英語で学べるイベントも企画しました。これを機に市民の皆さんがよりラグビーに興味を持ってくれると嬉しいですね。

ラグビーワールドカップでは袋井市に多くの外国人が来ることが予想されます。市民の皆さんがその時に勇気を持って外国人に話しかけることができる、そのような環境の準備を進めていきたいと考えています。

ホームステイトライアル

袋井市では、ラグビーワールドカップを契機に市民が草の根で国際交流を体験できる取り組みを推進しています。「ふくろい版ホームステイ」は、その中でも一大プロジェクト。ラグビーワールドカップの開催時には約100軒のホームステイ受け入れ先を目標とし、2016年からホームステイトライアルを実施しています。今回、2018年8月25〜26日にホームステイトライアルに参加した3つのご家族にお話を伺いました。

<木村さんご一家>  私たちが今回ホームステイを受け入れた理由は、大学生と高校生の2人の息子に外国人との生活を経験させたいと思ったからです。アメリカ出身のリーヴァイさんは、18年ぶりの日本でのホームステイだったそうですが、2人の息子たちといろいろな話をしてくださいました。息子たちに感想を聞くと、「違う土地に暮らす人と、1つの言語(英語)で話せることに感動した」「今後も英語の勉強を続け、日常会話が話せるようになりたい」と話していて、短い時間でしたが刺激を受けたようです。私も子供たちがリーヴァイさんと英語で話している姿を見て、学校のテストの点だけでは分からない英語のスピーキング力を見ることができました。ラグビーワールドカップでも私たちにできることがあれば、ぜひ積極的に外国人とコミュニケーションを取っていきたいです。

<松浦さんご一家>  我が家で今回のホームステイトライアルをした理由は、子供たちがいろいろなことを理解できる年齢になったからです。将来は、私たち夫婦と同じように、海外で活躍してほしいという思いがあります。
緊急事態だったのは、英語が堪能な夫が急な海外出張で不在になってしまい、10年以上英語から離れていた私一人で対応をする必要があったことでした。しかし、サウジアラビアからやってきたトルキーさんはとても優しく、親身に子供たちの相手をしてくださり、不安ばかりだった私を安心させてくれました。家ではゲームをしたり、一緒にお風呂に入ったりと、子供たちも終始トルキーさんから離れませんでした。小3の娘は通っている英会話教室の実践ができたようで、緊張をしながらも自己紹介をしていましたし、「大きくなってからも外国の人と関わっていきたい」と話してくれました。この経験を生かして、来年のラグビーワールドカップの際も、ぜひホームステイを受け入れたいと思います。

<内山さんご一家> 2016年にホームステイトライアルが始まってから、すでに3人の外国人を受け入れてきました。外国に対して壁を感じない子供に育ってもらいたいという思いがあるからです。
3人の子供たちも「ウクライナってどこにあるんだろう?」「こんにちはって何て言うの?」など、リリーさんが来る前から興味津々でした。
今回来てくださったウクライナ人のリリーさんは、普段子供と接する機会が少ないので、不安だと言っていたのですが、子供たちと対面したらすぐに打ち解けてくれました。子供たちが実際にリリーさんと接して驚いたのは、麺類をすすらずに食べること。日本人との習慣の違いを肌で感じ、貴重な体験となったようです。来年のラグビーワールドカップは今からワクワクしています。通訳とまではいかなくても、何か助けになれればと思っています。

静岡県小笠山総合運動公園 エコパスタジアム(静岡スタジアム)

エコパスタジアムは2002 FIFAワールドカップの試合会場として建設されました。収容人数は約5万人。ラグビーワールドカップ2019が開催されるスタジアムの中では、横浜の日産スタジアムに次ぐ大きさです。特に芝のメンテナンスには強いこだわりがあり、サッカー関係者からは「エコパの芝は最高!」と高い評価を得るほどです。また、ラグビーワールドカップに向けて、2018年2月には両サイドのスクリーンを国内最大級の縦9.6×横19.2mあるフルハイビジョン対応のものに更新。大きなスタジアムのどこからでも試合状況が把握しやすくなりました。
ラグビーワールドカップに向けて、昨年からスタジアムのスタッフは週1回英会話のレッスンを受けるなど、ソフト・ハード面共に着々と準備を整えています。