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2018年11月号

世界中に「ラグビーのまち」釜石の魅力を発信

いまだ破られないラグビー日本一7連覇を達成し、「北の鉄人」と呼ばれた新日鉄釜石ラグビー部を擁した「ラグビーのまち」岩手県釜石市。2011年の東日本大震災では、津波により甚大な被害を受け、市内でも1000名以上の尊い命が犠牲となりました。
その震災からの復興計画には、当初から「国際的なラグビーの試合が行われるスタジアム」を建設することが盛り込まれていたといいます。震災から8年、復興のシンボルとして行われるラグビーワールドカップを通して、釜石市では、世界に「ラグビーのまち」の魅力を発信するべく、市民の英語啓蒙にさまざまな形で取り組んでいます。

「ラグビーカフェ英会話」レポート

「ラグビーカフェ英会話」は、市民の方がラグビーワールドカップで訪れる海外の方々を温かくお迎えし、釜石市と世界との交流の輪を広げられるようにと、ワールドカップ開催が決まった翌年の2016年から始まりました。
現在は、釜石市青葉ビルで、釜石市国際交流員のエミリーさんとアシュリンさんが講師となって、月1回、午前を初級クラス、午後を中級クラスとして英会話教室を行っています。

取材で訪問した6月17日(日)の初級クラスはエミリーさんが担当。「気軽に英会話を始めたい」「外国人との交流に興味がある」方を対象に、テーマに沿ったシンプルな会話や、カードを使ったゲームなど「英語に慣れる」セッションを行っていました。
午後の中級クラスは、アシュリンさんも加わり、すごろく形式で進めたコマに書かれたテーマについてスピーチを行う実践型の会話セッションが進んでいきました。
参加者はそれぞれ10名ほど。会社員の方や、地元でご商売をしている方、主婦、退職されたシニアの方、そして、釜石市に支援派遣で来ている自治体の職員の方といったバラエティに富んだ人たちが参加されていました。初級クラスには、親子の姿も。また、市内だけでなく、近隣の大船渡や山田町、遠野市や花巻市などから参加されている方もいて、英語への関心度の高さがうかがえました。

 

釜石市 国際交流員

釜石市では、ラグビーワールドカップ2019開催に際して、インバウンド強化を図るために、2名の国際交流員をJETプログラムから採用しています。2人の国際交流員は、英語による市の情報発信、ラグビーカフェ英会話、市の通訳ボランティアリーダー養成講座(釜石市国際交流協会の主催)をはじめとして、商店・飲食店向けの対外国人向け接客指導や英語メニュー作成のサポートまで、幅広い活躍をしています。

エミリー・ハラムズさん
総務企画部オープンシティ推進室/ラグビーワールドカップ2019推進本部事務局所属
オーストラリア・キャンベラ出身 2016年7月から国際交流員

実は配属が決まるまで釜石のことは全く知りませんでしたが、こちらに来て、この地の素晴らしさをたくさん知りました。
釜石は小さな街ですので、これまで海外から多くの人が来るということはあまりありませんでした。そういった意味でラグビーワールドカップは、とてもよい機会だと考えています。「ラグビーカフェ英会話」に参加してくださる皆さんは英語に対するモチベーションが高いので、海外の方が実際に釜石に来たときに使える英語を学んでいただきたいと心掛けています。今後は、ラグビーワールドカップの公式ボランティアとは別に、釜石でもボランティアを募集する予定です。市民の皆さんにはぜひ、完璧な英語でなくても、「英語でコミュニケーションする楽しさ」を知って、たくさんの外国人と交流してもらいたいと思っています。

アシュリン・バリーさん
総務企画部オープンシティ推進室/ラグビーワールドカップ2019推進本部事務局所属
アイルランド・コーク州マロー出身 2017年7月から国際交流員

ラグビーカフェ英会話には、子供からおじいさん、おばあさんまで幅広い年齢層の方が参加してくださいます。皆さんの意欲は高いのですが、普段英語を話す機会がなかなかないようですので、このラグビーカフェ英会話を有効に活用してくれています。中には、「このような機会を与えてくれてありがとう」と声をかけてくれる方もいて、私たちも嬉しく感じます。

また、ラグビーワールドカップを開催することで、市外から来る人に釜石を好きになってもらうことはもちろんですが、釜石の市民の方にも多くの人との交流を通して改めて釜石の良さを感じていただけると嬉しいです。最近は、街中のレストランのメニューの英語版を作成するなど、ラグビーワールドカップへの準備を着々と進めています。市民の方々には私たち国際交流員をいろいろな形で活用していただけたらと思っています。

市担当者からのメッセージ

釜石市ラグビーワールドカップ2019推進本部事務局
主幹 増田 久士 氏

釜石の街は江戸時代末期から操業を開始した製鉄所と共にあり、一時は10万人超の人口を数えましたが、製鉄所の縮小により、今では3万5000人ほどと往時の3分の1となっています。V7を誇った新日鉄釜石ラグビー部も廃部になりましたが、その血と魂を受け継いだ釜石シーウェイブス(日本初の地域共生型クラブチーム)が、今も釜石にラグビーの火をともし続けています。

2011年の東日本大震災では、当地も大きな被害を受けましたが、そこから立ち上がるための釜石市復興まちづくり基本計画を「スクラムかまいし復興プラン」と名付けたのも、「ラグビーのまち」の証しと言えるでしょう。
この復興計画には、2011年7月に作られた計画骨子の段階で「国際的なラグビーの試合ができるスタジアムの建設」を盛り込みました。まさにラグビーがこの街の精神的支えであり、スタジアムは苦難を乗り越えて復活するシンボル的存在なのです。

2015年にワールドカップ開催が決まり、スタジアムの建設とともに、インバウンドへの取り組みも本格的に始まりました。ボランティア通訳の育成や、市内の商店・飲食店への英語対応のサポート、そして2名の国際交流員を採用し、さまざまな活動を支援してもらっています。
もともと港町ということもあり、外の人々との交流が盛んなこの街でしたが、釜石シーウェイブスの外国人選手が増えたこともあり、小さな街ながら、外国人との交流に抵抗感があまりなく、市民の方々も積極的に英語に取り組んでいます。
まだまだ街中にも空き地があり、津波の傷痕も残ってはいますが、ワールドカップ開催が起爆剤となり、復興にもはずみがつくことを期待しています。

釜石鵜住居復興スタジアム

今回のラグビーワールドカップで唯一新設された釜石鵜住居復興スタジアムは、2011年の震災による津波で大きな被害を受けた鵜住居地区に建設されました。
スタジアムが立つこの場所は、約600名の児童・生徒が自分たちの判断で迅速に避難して津波の難を逃れ「釜石の奇跡」と言われた、鵜住居小学校・釜石東中学校の跡地です。メインスタンドの一部には2017年5月に発生した釜石市・尾崎半島での大規模林野火災の被害木を使った木製シートや、国立競技場・熊本県・東京ドームから寄贈を受けた「絆シート」と呼ばれているシートが使われています。

ワールドカップではフィジー対ウルグアイなど2試合が行われる予定です。

竣工直前のスタジアムの様子(2018.6.17)

メインスタンドからはこの地から移転した鵜住居小学校・釜石東中学校が見えます。(山の中腹)

 

メイングラウンドには国内初のハイブリッド芝生(天然芝と人工芝の混植)が採用されています。

 

メインスタンドから見える大槌湾沿いでは防潮堤や鵜住居川の水門の工事が進んでいます。ワールドカップ開催時までには竣工予定です。

 

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