国際的スポーツイベントと英語 スポーツ通訳ボランティアとグローバル人材育成

2018年11月号

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スポーツ通訳ボランティアを通したグローバル人材育成

自らの経験を基に、学生のスポーツ通訳ボランティア推進を積極的に取り組んでいる神田外語大学の朴ジョンヨン氏。朴氏にスポーツ通訳ボランティアの語学教育における有用性やグローバル人材の育成についてお話を伺いました。

神田外語大学体育・スポーツセンター専任講師
ボランティアセンター・スポーツ通訳ボランティア推進室長

朴 ジョンヨン 氏

筑波大学大学院人間総合研究科スポーツ健康システム・マネジメント専攻を修了し、同大学院スポーツ健康システム・マネジメント専攻(博士前期課程)にて非常勤講師の他、上智大学ゲスト講師、早稲田大学委託講師等に従事している。最近はスポーツ・リベラルアーツ(教養・教育)に関する21世紀の教育について研究活動を行っている。

自らの体験から始まったスポーツ通訳ボランティアの推進

スポーツ通訳ボランティアとの出会いは、日本に留学して2年ほどたった時のことでした。千葉国際駅伝の韓国代表チームの通訳ボランティアに参加したのです。当時は日本語を勉強しながら大学で学んでいたのですが、通訳を通して、「生きた日本語」を学べることを肌で感じました。その後も、さまざまな国際スポーツ大会に通訳ボランティアとして参加し、自分の語学能力を磨いていくと同時に、大会側やアスリートたちとのコミュニケーションを通じて、世界をつなぐ仕事がしたいと思うようになりました。
2007年4月に神田外語大学にて働き始めた頃、この通訳ボランティア経験を学生たちに伝えたいと思い、これまでの人脈や経験を活かし、2007年9月1日に「スポーツ通訳ボランティア」のプログラムを導入しました。導入後、すぐに数多くの学生から応募があり、大学生、特に外語大生にとって、通訳ボランティアは、非常に興味の高い分野であることを実感しました。

国際スポーツイベントにおける高い英語のニーズ


2015年に「全国外大連合」に参加する国内7外国語大学の連携プログラムとして、神田外語大学の学長からスポーツ通訳ボランティアを提案しました。これまでの学内での実績が評価されて、「全国外大連合」のプログラムの一つとして通訳ボランティ育成セミナーがスタートすることになったのです。

2018年8月に第6回が行われましたが、第5回までに延べで1334名がセミナーを受講し、1261名がスポーツ通訳ボランティアとして登録しています。多くの学生は何かしらの言語を得意としていますが、約9割の学生が英語を通訳の対象言語として登録しています。また、スポーツイベント主催者側からのボランティアにおける語学ニーズは英語が最も多いということも、いかに英語がスポーツ大会で重要な要素であるかということを示しています。さらに、このプログラムは外国語を学ぶ学生たちの語学・コミュニケーション力の向上はさることながら外国語を学ぶモチベーションアップにおいて、大きな意味を持っているということができます。アメリカのある研究所の調査によれば、講義の受講だけだと5%に過ぎなかった学習定着率が、学んだことを実践の場で能動的に使うことによって、80~90%まで上昇するという結果が出ています(図1)。スポーツ通訳ボランティアは、まさに実践の場です。普段の授業や生活だけでは体験できない場所や条件の下で、授業で学んだ語学力を実践で試す機会であると同時に、外国語を学ぶ意義や必要性を感じる絶好の機会でもあるのです。

スポーツ通訳ボランティア × グローバル人材

スポーツ通訳ボランティアの経験は、語学力向上のみにメリットがあるわけではありません。国際スポーツイベントで通訳ボランティアとして責任を持って円滑に業務を遂行する上では、下記図2のようなさまざまな資質が必要とされます。

国際スポーツ大会における通訳ボランティア経験と言語運用能力(朴.2015)

スポーツ通訳ボランティアの現場には、グローバル人材になりえる要素がたくさん詰まっているともいえます。
第1~5回通訳ボランティア育成セミナー受講者へのアンケートでは、セミナー受講後、グローバル人材とは何か、グローバル人材になるために何をすべきかが明確になったか、という質問に対して、93%を占める参加者が単に通訳ボランティアのスキルや技法を学ぶだけではなく、セミナーを通してグローバルなマインドやグローバル人材になるための資質と条件等について理解を深めることができたと回答しています。

外大連携プログラムでは、2018年の平昌オリンピックに、初の海外への通訳ボランティアとして100名の学生たちを送り出しました。今後学生たちが通訳ボランティアとして活躍できるフィールドは日本だけにとどまることはありません。近年ますますスポーツのグローバル化が加速する中、日本の言語教育分野においても、通訳ボランティアは貴重な実践経験の場であると考えます。今後も多くの学生に通訳ボランティアの意義を理解していただき、その効果が日本のグローバル人材育成へつながっていくことを期待しています。

2018平昌冬季オリンピック大会