東洋大学 国際部 部長

高橋 清隆 氏

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2019年3月号

具体的な活動目標を提示しグローバル人財を育成する

東洋大学は創立125周年を迎えたのを機に、国際化を強力に推し進めています。具体的にはどのような教育を実践していて、どのような成果が出ているのか。職員と学生、それぞれの立場からお話を伺い、同学の国際化の取り組みを探りました。

スーパーグローバル大学創成支援事業に採択され全学で国際化が加速

「私立哲学館」を起源とする本学は、建学以来、哲学を教育の根幹に置いてきました。創立者・井上円了が求めた哲学教育とは、いわゆる「哲学者」を育てることではなく、常に疑問と好奇心を持ち、一人ひとりが自ら判断できる人間を育てることです。2012年に創立125周年を迎えるにあたり、「哲学教育」「国際化」「キャリア教育」の3つに力を入れていくことを決定しました。
学生はもとより大学そのものが内向きであっては、国際化が進む多くのアジア諸国に日本はついていけなくなります。今後、さらに垣根のない世界が広がり、また一方では自国の利益を最優先させる政治の兆しがありますが、国際社会とより強固な連携を築けるグローバルな素養を持った人財の育成が必要不可欠です。本学が考えるグローバル人財とは、自国の文化を理解し、相手の文化をリスペクトした上で、自分の意見をしっかりと主張し、行動できる人財のことです。そのための1つの重要な素養である語学力についてはTOEIC Programを導入し、英語のクラス分けや成績評価、海外留学奨学金の支給基準等として活用しています。
本学の本格的な国際化は、まず国際地域学部(現国際学部)が2012年にGGJ (Go Global Japan=経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援)に採択されたことから始まります。さらに2014年にはスーパーグローバル大学創成支援事業(以下、SGU)に採択され、全学をあげて国際化に取り組む体制を整備し推進に当たっています。SGU採択以降、「国際化に力を入れているから」とグローバル志向を持った入学者が増加し、学業に向かう姿勢も向上していると感じます。

TOYO GLOBAL DIAMONDS構想を策定

大学のグローバル化を展開するにあたり、本学は「TOYO GLOBAL DIAMONDS グローバルリーダーの集うアジアのハブ大学を目指して」(以下、TGD)というコンセプトを掲げました。

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ダイヤモンドと命名したのは、2つの理由からです。1つ目は、本学のグローバルな素養を持った人財はピラミッド型に分布(正規分布)していますが、さまざまなグローバル教育を展開することで、ダイヤモンドの形のように中間層が分厚くなる形に変えていきたいと考えたからです。2つ目は、ダイヤの原石である学生を磨き、グローバル人財として成長させていくことを、シンボリックに表現したかったからです。
「グローバルリーダーの集うアジアのハブ大学」を実現すべく、留学生受け入れ増加策の一環として海外から直接入学するための渡日前入試を2016年から開始しました。初年度は50名ほどしか志願者が集まりませんでしたが、海外の優秀な学生を受け入れるためアジア各国を中心に行脚したほか、昨年からは、より本学に留学しやすいよう海外で主流の秋入学もスタートした結果、現在では240名を超える志願者があります。TGDの取り組みを始めてから、「学内の雰囲気が大きく変わりましたね」と学長は話されていて、私としても新たな道を切り拓いているという実感があります。

国際化を推進すべくグローバル・イノベーション学科を新設

国際化の推進にあたっては、ニューエリートを育成するため、国際学部グローバル・イノベーション学科を創設することとしました。既存の各学部にはそれぞれ教育のポリシーがありますので、国際化の浸透には時間がかかります。そうであれば、既存学部に影響を与えられるような、インパクトのある学部を新設したほうがよいだろうと考えたのです。すでにそうした取り組みを行っている国際教養大学さんを何度も見学させてもらうなどして、2017年4月に開設しました。1学年の定員は100名に抑え、日本人学生と外国人学生が7対3の割合で在籍しています。授業は全て英語で行い、日本人学生には1年間の海外留学を義務づけています。経済学をベースに、創造性と起業家精神に満ち、イノベーションを起こせる人財の育成に取り組んでいます。学生から教員に対するリクエストも多く、これまでの本学の学生とは層が違うなと感じています。

具体的な活動目標を提示して学生を導く

TGDを進める具体的な取り組みの1つに、Toyo Global Leader Program(以下、TGL)があります。これは、学生の「異文化環境における英語運用表現能力」「文化的な価値創造能力」「異文化環境における課題解決能力」の3要素を強化するのが目的です。
TGLでは、具体的な活動目標を学生に示し、諸活動をポートフォリオシステムで管理しています。その到達度によって、GOLD、SILVER、BRONZEという3つのランクを用意し、GOLDを取得するためには、卒業論文の英文要旨を含む外国語による論文等の執筆、海外留学・インターンシップ(3週間以上)などが必須となり、ランクが上がるごとに活動内容の難易度が上がっていきます。
TGLの大きなポイントは、留学をして終わりではないということ。帰国後も、本学が実施するTGLキャンプへの参加(もしくは運営)やインターンシップあるいは国際シンポジウムなどへの参加などを求めています。継続した取り組みを通じ、グローバル人財としての素養を身につけていくのが狙いです。

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学生を応援するさまざまな仕組み

海外留学を希望していても、語学力や経済力に不安を抱える学生も少なくありません。そこで、英語のクラス分けなどで活用をしているTOEIC Programを学生自身が能動的に好きなタイミングで受験できるよう大学として多くの受験機会を提供しています。
TGLのGOLDを取得するためには、TOEIC L&Rで730点、シルバーの取得には590点が必要要件となっています。一方、経済面においては、海外留学促進奨学金を整備しました。この奨学金は50万円までの給付には定員を設けず、一定条件を満たせば給付するようにしていて、最高300万円まで給付することが可能です。TOEIC L&Rのスコアなどによって給付金額が変わるので、学生の語学学習へのインセンティブとなっています。この奨学金制度は他大に比べて支給条件が良く、また支給規模が大きいため多くの学生が利用しています。

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国内の学生への支援の仕組みを着々と整えるのと併せ、アジアのハブ大学となるべく、海外の大学と国際編入生の受け入れに関する協議を進めています。そして最終的には、本学の質の高い教育を広めるべく、海外に本学のキャンパスを造るのが私の目標です。本学自身がより高度にグローバル化していくことで、学生の学びを後押ししていきたいと考えています。

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