ロッシェル・カップ 氏
日本企業の海外進出のコンサルティングを行うジャパン・インターカルチュラル・コンサルティングの創業者。アメリカ・ニューヨーク州生まれ。イェール大学を卒業後、米国系コンサルティング会社を経て、1988年より日本の銀行の東京本社に勤務。1992年にシカゴ大学大学院を卒業後、1993年には『雇用摩擦—日本企業の文化破壊』を上梓する。現在、異文化コミュニケーションやグローバル人材育成分野で力を発揮している。
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コミュニケーション能力と英語力の両立が重要
アメリカ・ニューヨーク出身のロッシェル・カップ氏は、日本企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートしているコンサルティング会社「ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング」を創業し、現在は異文化コミュニケーション、グローバル人材育成などを専門とする経営コンサルタントとして活躍しています。高校時代から日本に強い関心を抱いていたロッシェル氏は、イェール大学で日本文化に関する科目を専攻したほか、日本の銀行で2年間勤務した経験もお持ちです。日本、そしてグローバルビジネスに精通されているロッシェル氏に、今後社会に出ていく若者に向けたグローバル人材に必要とされる素養について伺いました。
企業が求めるグローバル人材とは
言語を習得した上で自分を表現することが重要
現代はグローバル化が急速に進んでいます。もはや海外の人と交流せずに生きるのは、不可能と言っていいでしょう。私自身もアメリカ、日本、イギリス、メキシコと、世界各国でビジネスを展開していますが、そこで感じるのは、紛れもなく英語がビジネスの公用語であるということです。特に管理職層においては、日本人も現地の人も、みな共通言語である英語をつかってコミュニケーションしています。
さらに海外進出している日本企業の管理職層にとって望ましいのが、現地の言葉を習得することです。現場を知ろうと思ったら、やはり現地の言葉でコミュニケーションできることに越したことはありません。世界的に見て中国語やスペイン語を母国語とする人は多いので、そうした言語が話せると有利になるでしょう。ただ大切なのは、外国語が話せるだけでなく、自分の意志や考えを伝えられるかどうかです。会話でも、文章でも、自分を表現することは、グローバルで活躍する上で非常に重要です。
「クリティカルシンキング」は重要なスキル
グローバル人材となるには少なくとも英語が話せること、そして自分を表現できることが必要だとお伝えしました。もう1つ大切なのが、クリティカルシンキング(論理的思考力)です。私は日本の銀行で2年働いた経験があるのですが、ある時上司から「あなたは理屈っぽい」と言われたことがあります。論理的な考え方が求められるアメリカには、そもそも「理屈っぽい」という言葉がないので、はじめはどういう意味かわかりませんでした。しかし、後からその否定的な意味を知り、少々腹立たしく感じたのを覚えています。
日本人が自分の考えを伝える上では「起承転結」が大切だと教わります。確かにストーリーとしては美しいと思いますが、論理的かと言われるとどうでしょう。また「阿吽の呼吸」のように、曖昧さも美徳とされますが、これも論理的ではないと言えます。各国の競争力を示すあるデータにおいて、日本の国力は5位と評価されながらも、クリティカルシンキング力は70位と大きく順位を下げていました。これから日本人が世界で活躍するためには、物事を論理的に考え、それを的確に表現する力が不可欠です。クリティカルシンキングは、大学でも十分に鍛えることができます。社会に出る前に物事を論理的に捉える力をつけておきましょう。
さらには、多様性への理解も重要です。日本の企業ではグローバル人材の確保として外国人の採用が進んでいますが、実情は、入社して日本人と違う行動を取ると指摘されるケースも多いといいます。表面的な多様化だけではなく、中身も伴わなければ意味がないと思います。若い頃からさまざまな環境に身を置いて、世界の多様性を感じるチャンスを自らつくっていく必要があると感じます。
好奇心を持ち続けること
グローバル人材となるためにさらに求められる要素が、強い好奇心を持っているということでしょう。相手はどんな人なのか、世の中はどうなっているのか、未来をどう切り拓くのか、これらは全て好奇心あってこそのことです。幅広い分野に興味を持ち、自ら探究する姿勢は非常に役に立ちます。
日本では就職に不利になる、大変そうなどの理由から、留学する大学生の数が減っています。日本人の好奇心が薄らいでいる表れです。また、大学入試で燃え尽きてしまい、授業をさぼる学生も日本では珍しくありません。暗記中心の勉強で疲れ果ててしまうのは無理もないかもしれませんが、非常にもったいないことだと思います。
好奇心が生まれるには、余白の時間が必要です。日本の中高生は勉強をどんどん詰め込まれ、暇な時間がほとんどありません。ですから、いざ大学生になって時間にゆとりができても、有益な時間の過ごし方がよくわからないのだと思います。現代はものすごいスピードで変化しています。その動きはさらに加速していくでしょう。そのような状況下では、新しいことに関心を持ち、学び続けることができなければ、生き残ることさえ難しくなるのです。人、社会、世界に目を向け、好奇心を糧に一歩踏み出す勇気が必要です。
真のグローバル人材となるために
英語能力を高めるにはともかく使う機会を
今の日本の英語教育は、文法に力を入れ過ぎていると思います。もし、真の英語力を身につけたいのであれば、たくさん聞き、たくさん話すこと。これに勝るものはありません。たとえば、地域の外国人に日本語を教える、外国人留学生と交流するなど、日本にいても外国人とたくさんコミュニケーションをとることは英語力の上達に結びつきます。
また現在はオンライン英会話レッスンや、オンライン上でのランゲージエクスチェンジ、ハーバードをはじめとする海外大学の講義を聴講できるサイトなど、ネットを通して英語に手軽に触れることができます。ある日本企業の社員の方で、シリコンバレーに6週間研修に来た人がいました。流暢に英語を話すので「海外に住んだことがあるのですか?」と聞くと、ないとのこと。実は研修が決まってから、オンライン英会話で1日1回必ず練習して英語を身につけたそうです。20年以上前、私が日本語を学んだ時の環境とは劇的に変化していてうらやましい限りです。こんなチャンスを使わない手はないと思います。
英語の語彙力が自らの品格を高める
単にグローバル人材としてだけではなく、一段上の「グローバルエリート」を目指すことで、活躍の場は一層開けるでしょう。そのためには語彙力を高めなくてはなりません。多くの言葉を知っていることは教養の裏付けであり、より高度な意思疎通を可能にします。実際、アメリカの大学入試では、語彙力が試されることもあります。英語はゲルマン語、ラテン語、フランス語といったいろいろな言語の影響を受けて成り立っているので、語彙が豊富です。どの語彙を選択するのかが重要な鍵となってきます。
英語の語彙力を高めつつ洗練した英語を話すために何をしたらよいのか、そんな質問をよくいただきますが、私がいつも良質な教材としてお薦めしているのは、表現力に秀でた人のプレゼンを集めたTED Talk、1950~60年代の映画、ケネディ大統領やオバマ大統領のスピーチなどを聞いてみること。これらの英語は非常に洗練されたものであり、「グローバルエリート」にふさわしい英語だと考えています。
外国人と積極的に接する機会を持つこと
日本人の中には、グローバル化とアメリカナイズを勘違いしている人も見受けられます。グローバルとはアメリカのみならず、ヨーロッパ、アジア、アフリカなど全世界のことを指しているのであって、アメリカ=グローバルではありません。
また、日本人は自己肯定感が低いとも言われますが、日本もグローバルの中の1つであって、自国のことを否定する必要は全くありません。日本人としてのアイデンティティを確立しながら、相手との違いを認識し、どうやってそれを埋めていくかを考えるべきです。
グローバル人材に必要な素養は、多くの方法で身につけることができると思いますが、若い時に外国人と接する機会を持つことはとても重要になります。外国人と触れ、学生のうちに経験から学ぶ、その習慣をつけることで、グローバルに活躍できるビジネスパーソンに一歩近づくことができるでしょう。
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