English Frontline

2019年11月号

世界水準の英語登山ガイドを育成し訪日外国人旅行者の誘客を図る

地元の観光資源などを活用し、地域経済の活性化を狙う


安曇野市役所商工観光部の齋藤 研一氏

雄大な北アルプス連峰がそびえ、ワサビなどの産地として有名な長野県安曇野市。地域の特色を生かし、訪日外国人旅行者を誘客するため、同市では世界水準の登山ガイドを育成する「英語登山ガイド(English-speaking Hiking Guide)養成講座」が、2019年6月より開催されています。講座を主催するのは、市や商工会、観光協会などで構成する安曇野市海外プロモーション協議会です。協議会は、安曇野産の農産物の輸出や、訪日外国人旅行者の誘客などで地域経済の活性化を図るため、16年に設立されました。

協議会では誘客を始めるにあたり、欧米豪の旅行会社やメディアの方を招くといった基礎調査を実施。その結果、北アルプスパノラマ銀座(燕岳・大天井岳・常念岳・蝶ヶ岳)は観光資源としてのポテンシャルは高いが、登山者の安全性や満足度をより高めるためには、英語登山ガイドの配置といった受け入れ体制の整備が必要であるという結論に至りました。

「英語でコミュニケーションができることはもちろん、標高3,000m近くある高い山々で有事が発生した場合でも応急処置ができる、ワンランク上の英語登山ガイドの養成を目標に掲げました」と語るのは、講座の事務局を務める、安曇野市役所商工観光部の齋藤研一氏です。
そのため講座を受講するには、20歳以上で基本的な英語力があり、全国・地域通訳案内士(英語)の資格を有するか、英語テスト(TOEIC L&R※など)で一定点数以上の実績を満たしていること、更に十分な登山歴を有していることが条件となっています。
※TOEIC L&RはTOEIC Listening & Reading Testの略称

燕岳でのガイド実習へ出発する前に、メイン講師の加集安行氏(左から4人目)と横堀勇氏(右から2人目)によって英語で行われた、登山ストックの使い方に対するレクチャーの様子

英語登山ガイドとして世界のスタンダードを身に付ける

講座では、信州山岳高原観光特例通訳案内士(英語)などの資格を持ち海外での生活経験がある加集安行氏と、全国通訳案内士やカナダ山岳ガイド連盟の資格を持ち、野外救急法の指導者でもある横堀勇氏をメイン講師として迎え、8カ月間で10回にわたる講習会を行っています。
講習会ではまず、訪日外国人旅行者の現状や通訳案内士の基礎、英語登山ガイドの基礎や野外救急法などを、講師が作成したオリジナルのテキストを使い、座学や実技で学びます。次に、1泊2日で行う燕岳・常念岳・蝶ヶ岳でのガイド実習を経て、そのまとめとして、パノラマ銀座を縦走しながら外国人モニター講師をガイドする実習を実施し、中間評価を受けます。最後に、座学と実技で安曇野観光ガイドについて学んだ後、筆記と面接試験を行い終了する予定です。

「訪日外国人旅行者の興味の対象や考え方は、日本人とは異なります。登山ではちょっとしたミスや行き違いが生命に関わる危険を招くため、一人ひとりと向き合い、細かいことでもコミュニケーションをきちんととる必要があります」と加集氏は言います。そのため実践を想定し、講習会ではポイントや外部講師からの説明以外、講師と受講者とのやりとりは全て英語で行っています。ロンドンでの生活経験がある受講者は、「登山ガイドの英語は日常会話とは全く別物です。必死で勉強しないと英語での講習についていけませんが、その分、自分が成長するのを実感しています」と言います。
また横堀氏は、「日本で登山する外国人旅行者は他国でもガイドを雇い登っており、世界水準を知っています。本講座では安全性の確保はもちろん、そのような方たちを満足させる、英語登山ガイドとしての世界のスタンダードを身に付けてほしいと考えています」と受講者への期待を語ります。
講習会で一定の成績を修めると、終了証が発行され、観光協会に入会すれば、英語登山ガイド資格証が授与される予定です。訪日外国人旅行者が増える中、安曇野地域の経済を活性化するため、協議会の挑戦はこれからも続いていきます。