英語がもたらした私のターニングポイント vol.11 鞘師里保さん

アーティスト

鞘師さやし 里保りほさん

1998年広島県生まれ。アクターズスクール広島にて幼少期からダンスを始める。2011年、12歳でモーニング娘。9期生としてデビュー。15年にモーニング娘。を卒業し、アメリカ・ニューヨーク市へ語学・ダンス留学。約2年間の留学を経て帰国。20年9月から芸能活動を再開し、ドラマや舞台、ミュージカルなど活躍の場をますます広げている。

2015年にモーニング娘。を卒業し、17歳で単身アメリカ(ニューヨーク市)に語学・ダンス留学した鞘師里保さん。
2年間の留学生活で気付いたのは、自分のペースで会話すること、そして、人と向き合いコミュニケーションすることの大切さだと言います。

2021年7月号

英語を学んで気が付いた
人と向き合うことの大切さ

海外で英語を学びたいと思ったのはニューヨーク公演がきっかけ

海外で英語とダンスを学びたいと思ったのは、2014年のモーニング娘。のニューヨーク公演がきっかけでした。そのとき、私は16歳。今でこそTOEIC L&Rでスコア820点を保持していますが、当時の私は英語があまり得意ではなく、be動詞が入る位置も分からないというレベルでした。

英語を学んで気が付いた人と向き合うことの大切さ 鞘師里保さん

ニューヨークではミュージカル観劇にも赴き、現地の芸術文化に触れた

ニューヨーク公演では、メンバー全員がそれぞれ英語のスピーチをしようということになり、事前に準備をし、何度も練習していました。それがいざ本番となると、緊張と興奮で覚えていたことが真っ白に。途中から日本語で話すしかなくなり、悔しい思いをしました。また、ライブ後の握手会でも、現地のファンの方が簡単な英語を使って話しかけてくれたのに、“Thank you”としか返せませんでした。海外のファンの方と話すチャンスだったのにと後悔し、そこから湧き出た「海外で英語を勉強してみたい」という気持ちを、その場で現地のコーディネーターに打ち明けたところ、「今からやれば、間に合うよ」と言われたのです。

留学するためには、モーニング娘。を卒業しなければなりません。決断を下すにはとても悩みましたし、時間もかかりました。でも、このまま、大人になっていいのかな? 新しい世界を見てみたい、という思いが強くなり、留学を決意しました。

分かったふりをせず何度も聞き返すことで克服

留学先ではまず、語学学校に通いました。レベル別のクラス編成で、私はビギナークラスに入り、易しい英語を繰り返し聞くことで“英語を聞き取る耳”を養っていきました。学校に通い始めた頃は、英語が聞き取れず、また分からない言葉があっても、聞き返すこともできなくて、落ち込んでばかりでした。分かったふりをして、相手に迷惑をかけてしまったこともあり、「このままではいけない。分からないことは、きちんと確認しなくては」と気付いたのです。それからは、理解できない言葉があったら、分かるまで聞き返すように心掛け、よく使う言い回しはノートに書きとめて、すぐに口に出せるようにしました。

英語を学んで気が付いた人と向き合うことの大切さ 鞘師里保さん

街の人との交流も印象に残っていると鞘師さん。写真はタイムズスクエアにお出かけしたとき

気持ちに余裕ができたのは、留学して3カ月ほどが経った頃。相手に分かりやすい言葉で話してもらえば、込み入った話もできるようになっていました。

語学学校に通っている間はホームステイをしていましたが、その家を出るとき、ホストファミリーから「この家に来たばかりの頃のあなたの英語はとんちんかんだったよね」と言われました。当時の私は、Whatで始まる質問にも、いつも“Yes!”と答えていたとか……。でも、今はこういう話もできるのだから、英語がちゃんと身に付いたんだな、とうれしくなりました。

1年間で語学学習を修了し、ダンスレッスンに通い始めた頃には、高度な英語力ではないけれど、ダンスを習うのに困らないレベルになっていたと思います。語学学校で学んだのは、日常生活に関する英語でしたが、ダンスの先生が使うのは、体の動きに関する言葉が中心で、シチュエーションによって、英語の使い方や意味も変わるのだと実感しました。

留学をとおして、人と向き合いコミュニケーションすることの大切さに気付く

英語でコミュニケーションする上で私が大事にしているのは、自分のペースを守ること。英語力へのコンプレックスを感じながら話していると、焦って余計に言葉が出なくなるし、相手も困惑します。でも、事前に「ゆっくり話してほしい」などと伝えておけば、お互いに楽しい時間が過ごせるのです。

こうしたコミュニケーションの大切さは、日本語でも同じ。そう気付いたのは、自分のラジオ番組でゲストを迎えたときでした。番組では、普段なかなかお会いできないミュージシャンの方や俳優の方などを招いてトークしますが、「あなたのことをよく知りたいので、教えてください」という姿勢で語りかけることで、相手も心を開いてくれて、理解が深まっていくと感じています。


留学する前の私は、人とのコミュニケーションに苦手意識がありましたが、留学をとおして学んだのは英語だけではなく、人と向き合ってコミュニケーションすることの大切さなのではないかと、今は思っています。

一方で帰国後、日本での生活が長くなると、英語を使う機会が少なくなるため、だんだん自分の英語力が落ちていくのを感じています。海外の方とコミュニケーションするために英語力は欠かせないので、それを維持する、自分なりの勉強法を模索中です。

英語を学んで気が付いた人と向き合うことの大切さ 鞘師里保さん

YouTubeで、英語圏の人のライフスタイル関連の動画を見るのもその1つ。例えば、同じことを言っていても、言葉の使い方が、人や国籍によって異なります。ジャンルを絞って、色々な人の動画を見比べることは、英語のボキャブラリーを増やすために最適だと感じています。

そして何より、もっと英語を勉強しようというモチベーションになっているのは、ニューヨークでできた友人の存在です。帰国してからもずっと連絡を取り合っている、かけがえのない存在で、留学で得た一番の財産だと思っています。

今後は、歌やお芝居などの仕事をしていきながら、人との出会いをさらに大切にしたいと考えています。できれば、海外のファンの方にも会いに行きたいですし、国際的に活躍されている、様々な職業の人と話をすることで視野を広げたい。

さらに、私が今も継続的に英語を学習していること、そして「英語の勉強はもっと楽しくできるよ」というメッセージを、若い人たちに伝えていけたらと願っています。