Vol.3
現状把握の基準は「正確に読む力」
読解力別の効果的学習法
2022年3月号
本記事は、杏林大学外国語学部准教授 北村一真氏に寄稿していただきました
北村 一真氏 プロフィール
杏林大学外国語学部准教授、中央大学法学部兼任講師。1982年兵庫県生まれ。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。滋賀大学などの非常勤講師、杏林大学外国語学部助教、講師を経て、現在に至る。著書に『英文解体新書 構造と論理を読み解く英文解釈』(研究社)、『英語の読み方 ニュース、SNSから小説まで』(中央公論新社)などがある。
Point
● 自身の英文読解力を分析する
● 英文読解が苦手 ⇒ 基本文法・語彙の知識を補う
● 英文精読の力がある ⇒ 多様な英文に触れる
ビジネスパーソンなどが英語学習を進め、TOEIC L&Rといった英語試験でのハイスコアを目指す場合、まずは現状として正確に読む力が身についているかということが1つの大きな基準になります。ここで言う「正確に読む力」というのは、大学入試の標準的なレベルの英文を正しく理解できる力だと考えてください。これが身についているかどうかで効率的な勉強の仕方も大きく変わってきます。
従来、日本の英語教育は読み書きに偏っており、そのせいで難しい英語を解読することはできるのに、簡単な会話もおぼつかない人が多いということが指摘されてきました。これはある意味では真理を突いており、確かに難関大の学生などにはかなり難しい英文も自力で正しく読み解けるのに会話はからっきしという人もいます。しかし、このイメージが先行するあまり、逆のパターンに陥っていて、そこから抜け出せずに苦労している人がいることが看過されているのではないかと思います。
つまり、「難しい英文が読めるのにリスニングやスピーキングは全くダメ」という人と並んで、「英語には多少慣れているけれども、少し複雑な英文になると正確には読めない」という人が実はかなりいるということです。当然ですが、それぞれのタイプに適した学習法は異なるため、まずは正確な現状把握が必要になってきます。
1歩下がって自身の読解力を見つめ直してみましょう。例えば、これまでに受けたTOEIC L&Rでリーディングのスコアがリスニングよりもかなり低かったり、旧センター試験の過去問を解いてみて、8割程度の得点が取れなかったりする場合、まずは大学受験の参考書などを使って基本文法や基本語彙の抜けている知識を補い、一定程度の英文を丁寧かつ正確に読むスキルを磨く方が遠回りに見えて実は近道になるはずです。
一方、従来のイメージに当てはまる人、つまり、精読の力はあるのにリスニングや会話が苦手という人は、スピードアップがポイントになってきます。難しめの大学入試英文もきちんと理解できるのにリスニングが全くできなかったり、TOEIC L&Rのリーディングセクションで時間が足りなくなったりするのは理解するスピードの遅さが原因です。こういう人は時間をかければTOEIC L&Rレベルの問題の多くを自力で解けるはずなので、模擬試験が収録された問題集を使って解く速度を高める練習をしても良いでしょうし、また、インターネット上の著名人の講演やインタビューなどのうち、スクリプトが手に入るものを用いてディクテーションの練習などをするのもおススメです。
もちろん、新聞記事や雑誌記事、あるいはヒット小説など、自分の好きなテーマの英文を読んでいくことも効果的です。特に時事英文の場合、最初のうちは「The Japan News」や「The Japan Times」など日本のニュースを多く取り上げている英字新聞を活用するのが良いと思います。語学的に難しいところも背景知識で補うことができるため、継続しやすいからです。ただし、語彙力の面では注意が必要です。英字新聞であれ小説、エッセイであれ、大学受験レベルまでの単語力だけではなかなか歯が立たないのが現実です。同時並行でボキャブラリービルディングも行う必要があります。10,000語~15,000語レベルの単語を主に扱った『WORD SMART』や『Word Power Made Easy』などの母語話者向けのボキャビル本が役立つかもしれません。
こういった時事英文や娯楽的な英文は、一見、仕事で使用する事務的な英語やTOEIC L&Rなどで出てくる英語とはかなり差があり、遠回りのように感じるかもしれませんが、多様な英語の文章や文体に触れることで、1つ1つの文法や語句の理解にも深みが出るため、英語力の土台をより強固なものにするきっかけになります。日々のコミュニケーションをより豊かにしたいと考えている人はもちろん、試験のスコアが伸び悩んでいる人にも突破口を見いだすための対策として非常におススメできるやり方です。
北村氏より英語学習者へのメッセージ
There is no end to learning English, which is why I believe it is worth the challenge.
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