コロナ禍で様々な環境の変化が生まれ、英語でのオンラインミーティングの増加などによりスピーキング力が求められる中、日々、英会話学習の指導者として活躍されているお二方をお招きし、IIBC 普及部門(営業)の責任者・永井聡一郎が、スピーキング力を高めるために必要なこと、また、TOEIC L&R やTOEIC Speaking の有効活用法などについて話を伺いました。

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2022年7月号

英会話学習のプロに聞くスピーキング力の高め方

コロナ禍で高まるスピーキング力向上への意欲

永井:お二人は今、どのような業務に従事していらっしゃるのでしょうか。

西牧:フリーランスで、英語コーチと講師をしています。「Makieigoスクール」を個人で運営するほか、大学や専門学校、英会話スクールなどで、ビジネスパーソンから子どもまで幅広く英語を教えています。

佐藤:私は、合同会社DMM.comの英会話事業部で、英語コーチングサービスのカリキュラムを設計しています。当社に入社する前は、コーチングサービス会社や英語学校などで、英語コーチや講師をしていました。

永井:コロナ禍で様々に環境が変わる中、英会話学習に関しても変化はあるのでしょうか。

佐藤:オンラインで気軽に学べるようになったことで、英会話学習者の人数が増えているのではないかと思っています。当社のオンライン英会話サービスでも、新型コロナウイルス感染症拡大の前と比べ、受講生の数が1.4倍(※)になりました。特に法人のお客様が増えてきています。
    (※) 2019年3月と22年3月で比較した場合の有料会員数

西牧:ある英語スクールの調査によると、回答者の半分以上が、コロナ禍になってから英語を身につける必要性を感じるようになったと答えています。更に、伸ばしたいと思う英語力を聞いたところ、第1位は「英語を話す力」だったそうです。
私も、今後はスピーキングの重要性が更に高まると予想しています。最近は自動翻訳ツールの精度が上がっていますが、人の心を動かすことは、同じく人の言葉でなければできません。そう考えると、意識的に英語でのスピーキング力を高めていくことが必要だと思います。

英語の能力を満遍なく高めスピーキング力の向上を目指す

永井:英語4技能の中でも、スピーキングに対し苦手意識を持つ日本人は多いと思います。スピーキング力が身につきにくいのは、どのようなことが原因なのでしょうか。

西牧健太さん Makieigoスクール運営・英語コーチ 西牧健太さん Makieigoスクール運営・英語コーチ

西牧 健太さん
Makieigoスクール運営・英語コーチ
TOEIC L&R 990点/TOEIC S&W 各200点

西牧:様々な要因があると思いますが、1つはスピーキング力のバランスが悪いことだと思います。スピーキング力には3つの要素があるとよく言われます。スムーズに話せる「流暢さ」、正しく話せる「正確さ」、複雑な文章が作れる「複雑さ」です。この3つで見た場合、日本人の英会話学習者によく見られる傾向は、正確さを重視し過ぎる一方、流暢さが欠けているということです。冠詞の“a”と“an”のようなことでいちいち迷ってしまい、話し方がギクシャクして、相手が理解できなくなるのです。

佐藤:正確さを気にし過ぎて、ほかがおろそかになっているということに対しては私も同感です。多少間違っていてもいいので、素早く気軽にコミュニケーションを取ることは、スピーキングにおいて重要だと思います。

永井:日本人のスピーキング力が低い理由には、「聞き取れていない」ということもあるのでしょうか。

西牧:英語が飛び交う会議で、リスニングに関しては全く問題ないという人は、超上級者を除いてほとんどいないのではないでしょうか。ただ、ビジネスの現場では、聞き直すとしてもせいぜい1〜2回まで。なかなかそれ以上は聞き返せません。

佐藤:英語の会議についていけない、という声は私もよく耳にします。ビジネス英会話では、日常英会話とは異なり、プレゼンテーションや報告といった、まとまった量の英語を一気に聞き取る必要があります。これができないという人が多いようです。ビジネス英語を聞くには持久力が必要で、それがないと、何を言っているのか分からなくなり、スピーキングもできなくなるのです。

西牧:そのほかスピーキングには、状況に合わせて敬語やフレンドリーな口調などを使い分ける「社会言語学的能力」、一貫した話ができる「談話能力」、英語能力が足りないときに言い換えたり、聞き返したりしてなんとかする「方略的能力」といった、様々な能力が求められます。スピーキング力を向上させるには、正しい文法で一方的に話せるようになるだけでなく、リスニング力や理解力など、英語に関わる能力を満遍なく高めていくことが大切です。

スピーキング力の地固めにはTOEIC® Programの活用が最適

永井:スピーキング力向上に向け、英語に関わる能力を満遍なく高めるためには、何から始めればいいのでしょうか。

佐藤 奈美さん 合同会社DMM.com 佐藤 奈美さん 合同会社DMM.com

佐藤 奈美さん
合同会社DMM.com 英会話事業部
企業法人チーム コーチリーダー
TOEIC L&R 990点
TOEIC Speaking 170点
TOEIC Writing 190点

佐藤:私は「大量のインプットと少量のアウトプット」が重要だと思います。すぐに話せるようになりたいからといって、毎日英会話の学習をしているだけでは、なかなかスピーキング力は伸びません。単語や文法の量が増えないと話せるようにはならないのです。

西牧:英会話初中級者の方であれば、中学文法を押さえてから高校文法を学び、単語を3,000~4,000個覚える。ここまでのインプットは最低限必要です。

佐藤:ちなみに私は、一応上級者の部類に入ると思いますが、これ以上英語力を上げようと思ったら、更に単語力を強化することが必要だと思っています。やはりインプットは欠かせないのです。当社のオンライン英会話を使ったコーチングサービスは、アウトプットが中心のように見えますが、実はインプットが中心です。

永井:スピーキング力を高めたい人は、どのようにインプットをしていけばいいのでしょうか。

西牧:特に勉強に慣れていない初級者の方は、何からインプットすればいいのか分からないと思います。そこで私がおすすめしているのは、TOEIC L&Rを題材にして学習することです。文法にしても単語にしても、TOEIC L&Rに関係する参考書や問題集を学べば、バランス良く身につきます。

佐藤:全く同じ意見です。私自身、長期の留学経験がないにもかかわらず英語講師になれたのは、高校時代からTOEIC L&Rに向けた学習を継続してきたからです。闇雲に勉強するよりもTOEIC L&Rをベースにした方が学習しやすく、英語力が上がりやすいのは間違いありません。

永井:TOEIC Programにはスピーキング力を測るTOEIC Speakingがあります。受験者の中には、テストを受けて自分の英語能力の現在値をスコアで知り、目標を立て、スコアが伸びなければ、学習の軌道修正を行うといった学習サイクルを回すことで、効率良く成果を上げている方がいらっしゃいます。目標にするとしたらこちらでしょうか。

西牧:TOEIC Speakingは私も受験していますが、スピーキング力を高めるには最適で、学習教材としても活用できると思っています。現に私自身、これでスピーキング力が向上しました。しかし、単語や文法などの基礎が身についていないと太刀打ちできませんので、まずTOEIC L&Rで基礎固めをした方がいいと思います。

佐藤:理想を言えば、TOEIC L&Rのスコアを上げてからTOEIC Speakingを受けると、スムーズに進められると思っています。

西牧:TOEIC L&RとTOEIC Speakingを同時に勉強すればいいと考える人もいますが、学習初心者の方は、課題が増え過ぎてしまうかもしれません。

佐藤:自分の現状の実力を確認するために、試しにTOEIC Speakingを受験してみるのはいいと思いますが、その後は、焦ることなく、TOEIC L&Rを繰り返し学習し、ある程度のスコアを取得したらTOEIC Speakingを受験するといいと思います。

英語力向上の壁は英語能力以外にもある

永井:英会話学習においてつまずきやすい方の傾向があれば、教えてください。

西牧:私の受講生でよくいらっしゃるのは、自主学習の方法がなかなか身につかない方です。これまであまり学習されてこなかった方は、その習慣やスキルが身についていないことが多いので、英会話に関してもなかなか上達しにくいところがあります。英会話を教える前に、学習のためのスキルをお教えすることは少なくありません。

佐藤:私も、英会話学習者の方をサポートしてきて思うのは、英語力以前のところでつまずいている方が多いことです。よくお見かけするのは「言いたいことがない」方。英会話をしていても、適切な単語や表現が出て来ないのではなく、何も主張がないので続かないということが少なくありません。実は、当社のコーチング英会話でも、最初に指導するのは主張や意見についてなのです。

西牧:メンタル面でつまずかれる方も多くいます。間違えたり、イレギュラーなことに対応できなかったり、と自分が思うようにできないことに対して大きなストレスを感じてしまう方は、小さな失敗でも嫌になり、学習自体が続かなくなってしまいます。

佐藤:学習を始めるときは誰でも、知らないことばかりで間違いながら成長していくという過程をたどる、赤ちゃんと同じような状態にあると思っています。そのような状態であると認識することは、英会話学習においてものすごく大事なのですが、大人になればなるほどそれが難しくなるものです。まして、仕事でもある程度の地位があり、学歴もあると、「英会話ぐらいできるはず」と悪い意味で暗示をかけてしまい、赤ちゃんになりきれず、その結果、モチベーションが維持できなくなるのです。

永井:メンタルの課題を克服するためにはコーチの立場として何をすればいいとお考えでしょうか。

佐藤:正直なところ、メンタル面でコーチができることは少ないと思います。ご自身で克服していただくしかありません。ただ、コーチとしては、「間違っても大丈夫という気持ちになれない限り、スピーキング力は伸びません」とはお伝えしています。

西牧:そういう方は、英会話での成功体験を積み重ねることができるといいかもしれません。例えば、私の受講生で、英会話を目的とした交流会に申し込んだが、現地に行ったら怖くなってしまい、ドアを開けられなかったという方がいらっしゃいました。そういう方に「まずドアを開けることから始めましょう」と一歩一歩進んでいただくよう後押ししました。
すると後日、その方が出張先で困っている外国人を見掛けたそうで、30分迷ったあげく声を掛けたらずっと英会話が続き、仲良くなれ、すごく自信がついたそうです。
そのような「英語で通じた」という成功体験を積み重ねていくことが、メンタル面での課題を克服していくための近道になると思います。

英語でのスピーキング力を身につけるために正しい方法で効率良く継続的に学習する

永井:最後に、英会話を学習されている皆さんに応援メッセージをお願いします。

佐藤:英語でのスピーキング力が身につけられない人はいないと私は考えています。日本人の多くの方が日本語を話すことができるのですから、言語を話す能力は必ず備わっています。身につけるために大切なのは、正しい方法で効率良く学習していくことです。それを継続できれば、必ず身につきます。是非諦めずにがんばってください。

西牧:「英語なんて言葉なんだ。やればできる」と英語の名物講師の方がおっしゃっていますが、私もその通りだと思います。英会話はやればできるのです。
今後は英会話ができないと困る時代になってくると思います。日本の人口が減ることで、嫌でも海外に行かざるを得ない時代は確実に近づいています。特に若い方は、今のうちから英会話を学習されておいた方がいいと考えています。

永井:本日はありがとうございました。

西牧 健太さん/Makieigoスクール
海外留学前、日本にいながら独学でTOEIC L&R990 点を取得。日本の大学を卒業した後アメリカとポーランドに渡り、言語学習の科学を極めるために大学院で心理言語学を学ぶ。外資系企業で実践的な経験を積み、その後、英語コーチングスクールでコンサルタント兼語学研究所の所長を務める。これらの知識と経験を活かし、現在はフリーランスとして、TOEIC L&R、TOEIC S&W、ビジネス英会話を中心に、どんなレベルの人にも適切な指導ができるコーチとして活躍中。

佐藤 奈美さん/合同会社DMM.com
大手英会話スクールにて英語講師として勤務後、英語コーチングサービス提供会社にて、英語コーチとして、延べ80名の受講生の目標達成を実現。2021年DMM英会話にコーチリーダーとしてジョイン、DMM英会話コーチングサービスの立ち上げを担当。同社では、今春「法人向けコーチングサービス」がスタート。コーチによる定期面談・目標別にカスタマイズされた学習方法で、英会話力の伸びを実感できるという特色がある。

インタビューを終えて

永井 聡一郎

お二人からTOEIC Speakingの有効な活用方法についても色々と教えていただきました。TOEIC Speakingはそのほか、英会話学習のモチベーションを高める上でも役に立ちます。実際に受験者の方にアンケートを取ったところ、75%以上の方が「難しかったが、モチベーションが上がったからまた受けたい」と回答されました。
TOEIC Speakingは、実践の場で行われている英語でのコミュニケーションがリアルに反映されています。TOEIC Speakingを目標にして一生懸命学習していけば、それがそのまま実力アップへとつながります。TOEIC Speakingを活用して、間違いを恐れず、自分の意見を英語で伝えていくということに、是非トライしていただければと思っています。

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