Vol.9
主軸とするインプット学習の質をアウトプットの気付きで高める
2023年3月号
本記事は、株式会社スタディーハッカー 常務取締役 田畑 翔子氏に寄稿していただきました
田畑 翔子氏 プロフィール
株式会社スタディーハッカー常務取締役。京都府出身。立命館大学卒、言語教育情報学修士。米国留学を経て、英語教育について研究。TESOL(英語教育の国際資格)を保持。2010年、京都にてスタディーハッカー立ち上げ時より、英語指導の責任者として参画。 2015年、ENGLISH COMPANYを立ち上げ東京へ。短期間で英語力を高めるプロフェッショナルとして、より良い教授法開発、トレーナー育成に従事する
Point
● 現在の知識やスキルを客観的に把握する
● 上級者でもインプット学習を多めに行う
● 「アウトプットの気付きでインプットの質を高める」を繰り返す
社会人の方からよく耳にする「英語が話せない」「英会話ができるようになりたい」というお悩み。そのような方に、これまでの英語学習について尋ねると、「とりあえず英会話レッスンを受けていました」と答える方が多いようです。もちろん、英会話をすること自体は有用な学習法であることに違いありません。ただ、「英語を話せるようになりたいから英会話を習おう」というように、目的をそのまま学習法にしてしまうと、必ずしも効率的な言語習得につながらない実情もあります。
1つは、自分の現状の知識・スキルを考慮せず学習法を決めてしまっている、という点です。「英語が話せない」と一言で言っても、その理由は人によって様々。そもそも、「英会話ができる」という状態は、「相手の発言を理解し、それに応答できる」という状態です。そのためには、土台として様々な知識やスキルが求められます。例えば「相手の発言を理解する」の部分だけをとっても、語彙・文法の知識、聞き取れるようにするための正しい英語の音声知識、聞いたそばから即時的に内容を把握するスキル(リーディングスピードとも言える)などがなくては成り立ちません。これらに大きな弱点を抱えている場合、「話す」練習だけに特化するのは得策とはいえません。効果的な学習のためには、「話せない」原因がどこにあるのかを把握し、弱点になっている部分に学習の比重を置くようにすると良いでしょう。
もう1つは、英会話レッスンだけだとどうしてもアウトプットに偏りがちになることです。第二言語習得の研究者である白井恭弘教授は「大量のインプットと少量のアウトプット」が言語習得の成功の鍵だとおっしゃっていますが、インプットを大量に行うことの重要性に異論を唱える研究者はいません。では、アウトプットは何のために必要なのでしょうか? 1980年代に「アウトプット仮説」を唱えたMerrill Swain氏は、アウトプットの機能として(1)気付き、(2)仮説検証、(3)メタ言語能力の向上を挙げています。(1)は、アウトプットすることで、聞いたり読んだりしているだけでは気付かないような細かい文法などに注意が向くという機能。(2)は、自分の発する言葉が正しく相手に通じるか検証できるという機能です。(3)は、話しながら「過去形なのに-edがついていなかった」などと自らコメントしたり指摘されたりすることで、言語の形式などについての意識が高まるということです。これらの機能により、自分が正しく話せない部分に気付くことで、その後のインプットの際に適切な言語表現に注意が向き、より効果的な言語習得が促されるとされています。つまり、「アウトプットを行うことでインプットの効率や質が高まる」ということです。また、アウトプットすることで「自動化」が促されます。インプットした知識があっても、それが必ずしもスムーズに口から出てくるとは限りません。このためにはやはりスピーキングの練習が必要です。しかしアウトプット時は、基本的には自分の既存の知識を使うことしかできませんから、新しい知識が増えるわけではありません。やはり、インプットが重要であるとの理解がスタート地点にあることが分かると思います。
インプットとアウトプットは何割ずつが良いのか、といった黄金比が厳密に明らかにされているわけではありませんが、初級者ほどインプットの割合を多く確保し、上級者であっても、例えば学習時間の7割以上ぐらいはインプット学習の時間を確保しておくのが賢明でしょう。英会話レッスンを受けるのであれば、話すトピックに関連する事柄について事前に英語で読んだり聞いたりした上で臨めば、インプットした知識の自動化につながります。レッスン後には、自分がうまく言えなかった箇所を振り返り、適切な表現についてインプットするようにしてみましょう。
なるべく無駄なく英語力を高めるためには、まず自分の知識やスキルを客観的に把握して、インプットとアウトプットのバランスとサイクルを意識して学習することをお勧めします。
田畑氏より英語学習者へのメッセージ
Study smart.
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