2023年11月号

    1年間親元を離れ、英語での集団生活
    小・中学生の自立心と英語力を育む山村留学施設

    山村留学と英語教育を組み合わせ日本文化の理解も深める

    群馬県高崎市は、過疎化に伴う廃校舎を活用し、先進的な英語教育を進めています。同市が2018年に開設した「くらぶち英語村」は、子どもの自立心や協調性を育む「山村留学」と、年々ニーズが高まる「英語教育」とを組み合わせた国内英語留学施設です。生活全般を英語で行う山村留学は、全国でも初の試みとして注目されています。

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    公益財団法人「育てる会」  
    今野 公彦氏(左)
    高崎市職員  
    久保田 直之氏(右)

    旧川浦小学校を改築した総木造りの寄宿舎で生活するのは、全国各地から応募があった小学4年から中学3年までの計23名。子どもたちは地域の倉渕小・中学校に転校し、1年間親元を離れます(長期休暇期間を除く)。スマートフォンやテレビのない環境で、英語に堪能な日本人スタッフ8名、ネイティブスピーカーの外国人スタッフ8名と英語に囲まれた生活を送ることにより、実践的なコミュニケーション能力を高めるのが狙いです。

    「ただ英語を話せるだけではなくて、日本人としてのアイデンティティを持った上で、世界で活躍する大人になってくれたら」と語るのは、高崎市職員の久保田直之氏。英語村ではこのコンセプトの下、英語教育のみならず、田んぼや畑での農作業に味噌作りや梅干し作りなど、自国文化の理解を深める体験活動にも力を入れています。

    実践的なコミュニケーション能力を養う
    “英語での日常生活”と“独自の学習プログラム”

    5時50分起床(土日は7時)で始まる子どもたちの生活は、英語にあふれた空間です。例えば朝食と夕食の席では、4~5人で囲む1テーブルに外国人スタッフ1名がつき、英語で会話を楽しみながらの食事。集団生活を送る上での連絡事項を共有する朝夜のミーティングも、日本語は使用しません。「消しゴムのかすをちゃんと捨ててください」といったアナウンスを、英語で行えるよう準備する子どもたちの姿も見られるそうです。

    さらに英語村では、日常生活を英語で送るだけでなく、独自の学習プログラムも整備しています。その1つが「Self Study」です。毎週1~2回、外国人スタッフと1対1で30分間のセッションを行います。子どもが自分で目標を設定し、それに対して外国人スタッフが提案を行う形で、例えば「リーディングを伸ばしたい」という子であれば、一緒に英語の本を読むなどして能力向上を図ります。

    「ある程度英語での生活に慣れてくると、『英語って簡単に使えるんだね』ということを子どもたちはよく言うんです。そうなるとステップアップが難しくなります。そこで、こちらが伸び幅の縮まりを感じた子には、新聞記事についてのディスカッションなどレベルの高い提案を行い、さらに力を伸ばしていくための働きかけをしています」と、当施設の運営を務める公益財団法人「育てる会」の今野公彦氏は語ります。

    ほかにも週末の活動について日記をつづる「Diary Time」(週1時間)や、1日に1つ日常生活でよく使う表現を学び、簡単な劇を披露する「English of the Day」など、4技能を高める様々なプログラムが用意されているのも英語村の特徴です。

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    敷地内の畑を、外国人スタッフと一緒に耕す子どもたちの様子

    1年間の生活を通した子どもたちの変化について今野氏は、「ネイティブスピーカーによる “英語のシャワー” を毎日浴びているので、4技能の中でも特にリスニングの飛躍的な伸びを実感しています。外国人スタッフの言葉をキャッチして、指示が出されたら動けるところまでは、元々英語学習の経験が無かった子でもみんな到達しています。『子どもの耳はすごいな』と感じますね」と振り返ってくれました。

    現在、英語村では1年間の留学となる「通年コース」に加え、1泊2日の「週末コース」や3泊4日~5泊6日の「短期コース」を設け、より多くの子どもたちに体験の機会を提供しています。

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