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2023年11月号

56歳で通訳を目指し定年後にその夢を実現

全国通訳案内士
旅程管理主任者

櫻井 篤氏

人事制度をきっかけに英語学習を再開

学生時代は英語が苦手で、大学受験では2次試験で英語を課さない大学を選んだほどでした。大学卒業後は自動車メーカーに就職。入社して5年目に、アメリカへ長期出張することになりました。現地ではうまく英語を話すことはできませんでしたが、少しでも私の言葉が通じると嬉しくなり、英語に興味を抱くようになりました。帰国後すぐにTOEIC L&Rを受験してみたところ結果は505点。そこからは思ったほどスコアが伸びず、英語とは疎遠になってしまいました。

転機が訪れたのは、会社が新たな人事制度を導入したときです。TOEIC L&R 700点以上を管理職の条件とし、賞与の査定にも影響するというので、慌てて英語学習を再開。55歳で760点という自己最高スコアを取得しました。社内には55歳で昇進停止の規定がありましたが、私は特例措置として56歳で部長に昇進したのです。昇進理由がTOEIC L&Rの結果によるものであったのかは不明ですが、英語力がないとスタートラインにも立てないのだと痛感したことを今でも覚えています。

そのようなときに、中学校の同窓会に出席しました。すると恩師が、「あなたたちはあと5年ぐらいで還暦を迎えますが、中学生のときの夢は実現できていますか? 叶っていないのなら、今から何か始めないと後悔しますよ」と助言してくれました。そこで私は、モータースポーツに関わる仕事がしたかったことを思い出したのです。

10年、20年後を想像し自分らしく生きる道を切り開く

恩師の言葉をきっかけに、定年後はこれまでキャリアを積み重ねてきた自動車関係と、趣味のお酒を専門とする通訳者になろうと決め、56歳で全国通訳案内士試験への挑戦を始めました。この試験では、TOEIC L&Rで一定のスコアを取得していれば外国語試験が免除されるため、それを目指して猛勉強を開始しました。

まず、英文法と英文解釈に関しては、大学入試用の参考書を何度も読み込み、TOEIC L&Rの頻出単語集を使い、分からない単語に付箋をつけて暗記し、それでも、覚えられないものは単語帳に絵を描くという方法で語彙力をつけていきました。歳を重ねていることを言い訳にせず、回数を重ねれば身につけることができるという信念を持ち、起床後にオンライン英会話をやり、通勤時に車の中で英語のラジオを聞き、帰宅後にも勉強と、ほぼ英語漬けの生活を送りました。

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2019年から通訳養成校に通い始め、20年に定年退職した後は、コロナ禍だったためオンラインの通訳講座に切り替えました。講座の仲間たちと好きな動画に合わせて逐次通訳をして評価し合い、その成果を講師の前で発表するなど、アウトプットの練習にも力を入れました。22年に全国通訳案内士の1次試験に合格。一方で、カーレースの英語ガイドや、自動車メーカーで海外研修生の通訳を行う仕事も請け負うようになりました。そして、23年2月、7度目の挑戦で、念願の全国通訳案内士の最終試験合格を果たしたのです。

その後、旅程管理主任者資格を取得し、外国人旅行客のガイドとしてもデビュー。再び自動車メーカーで通訳を行うなど、現在はフリーで通訳者の仕事をしています。

振り返ると、会社員だったときは目の前の仕事をこなすのに必死で、自分が本当にやりたかったことを忘れていたのだと思います。恩師の助言により一歩立ち止まり、やりたいと思っていたけれど、「まだ行動を起こしていないことは何だろう?」と考え、10年、20年先の自分を考えてみたことが、定年後の長い人生を自分らしく、楽しく生きるための第一歩へとつながったのだと思います。

もし、やりたいことが見付からない方がいらっしゃるのであれば、英語学習を私はお薦めします。英語力と自分の趣味や得意なことを掛け合わせれば、新たな道を開くことができると思います。年齢を重ねた分、経験も豊富なわけですから、それに英語力が加われば、オンリーワンの人材になれるのではないでしょうか。

私自身は近い将来、自分が通訳ガイドを務めるツアーを実現していくことを目標にして、これからもさらに英語学習を続けていきたいと思っています。

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