ブリット・アンドレアッタ博士のブログから

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「大退職時代」を考える (7)克服するための7つの戦略(5~7)

5. 仕事の定義と測定の仕方を変える

私たちが仕事を定義する方法の多くは産業革命の頃から存在するものです。世界的なパンデミックにより、多くの企業はリモートワークやオンラインコラボレーションに軸足を移すようになりましたが、私たちはこのような古くからある概念をより深く見つめ直し、変革する時期に来ているのではないでしょうか。

仕事を時間ではなく、成果で測りましょう。時間単位でサービスを提供するのでなければ、成果や結果を測定することに軸足を置くべきです。そうすることで、仕事のスケジュールをより柔軟に変更できるようになり、業績の評価方法も明確になります。人は自分の貢献度を評価されることを望みますし、このようなシステムを導入することで、偏見や差別の影響も軽減されます。

ジョブシェアリングとローテーションを導入しましょう。ワークライフバランスの充実が叫ばれる中、ジョブシェアリングは多くのメリットをもたらす素晴らしいソリューションです。ジョブローテーションも、従業員のニーズを満たしながら、従業員のスキルアップと専門能力開発の機会を提供する方法のひとつです。

ミーティングをなくしていきましょう。真剣に。会議は私たちの時間をあまりにも多く費やし、その割に見返りがほとんどありません。MITの研究によると、平均的な労働者は45年のキャリアのうち約22年間を会議に費やしているそうです。そのうちの約33%(つまり7年間)は、何の付加価値もない会議に費やされているのです。会議は、管理職が「コミュニケーションにまつわる不安を軽減する」気休めとして予定されることが多いのですが、生産性や協業をかえって損なうことになりかねません。

パンデミックの期間中、会議時間は過去最高水準まで増加しました。現在、従業員たちはパンデミック以前に比べて25%も多くの時間を会議に費やしています。Voodle社の調査によると、77%の従業員が「ズーム疲れ」を経験しており、ハーバード大学の調査では、65%の従業員が会議のせいで自分の仕事を完了できないと回答しています。

この問題を解決するには、その作業が非同期で行えるかどうかを考えてみることです。可能なら、Voodleのようなビデオメッセージのツールや、Miroのようなアイデアを共有するツールを使ってみましょう。もし一緒に会議をする必要があるなら、XemblyやGrainといったAIを用いた会議最適化ツールを使ってください。生産性を高めるために、1日または数日間、ミーティングを禁止する日を設け、その決まりはしっかりと守りましょう。ハイブリッド勤務を効果的にするための鍵は、意思決定や信頼・心理的安全性の構築といった重要な活動のために、対面での時間を最大限に活用することです。

オフィスに人間性らしさを取り戻しましょう。ハイブリッド・ワークが今後何年にもわたって主流となる可能性は高いですが、オフィスにもたらすべき重要な変革は他にもあります。従業員が何を望んでいるかを聞き、それを提供するために最善を尽くしましょう。彼らが最も重視する特典は何か、彼らの成功を支えるものは何か、見つけ出してください。

顧客に対するのと同じように、従業員にも優しく接しましょう。従業員が集まる休憩室や「裏方」のスペースを見てみてください。ある種の業界では、そうした環境はしばしば魅力的でなく居心地の悪いもので、従業員を大切にしていないというメッセージを日々送ることになってしまっています。Forbes誌の記事の中でLorna Borenstein氏はこう書いています。「サービス業や接客業に従事する人の50%がパンデミック後に同じ仕事に戻ることを拒否し、3分の1は同じ業界に戻ることを検討さえしない現実があるのに、古い考え方に固執する余裕が本当にあるのでしょうか?」 と。

6. 既存の職員の能力を認め、報いる

人材獲得競争が激化する中、企業は契約金の支払い、給与の引き上げ、福利厚生の充実などに取り組んでいます。しかし、組織に忠実に過ごしてきた既存の従業員を評価することも忘れてはなりません。

彼らはパンデミックの間、予想外の変化にも対応し、懸命に働いてくれました。あなたはもう彼らに感謝したでしょうか?人は自分の貢献を見てもらい、評価してもらうことを切望しています。今こそ、彼らを敬う気持ちを示す時です。上司やリーダーから手書きのメモをもらい、どれだけ評価され、感謝されているかを伝えられた時の効果は計り知れません。ボーナスや有給休暇の追加、「残留ボーナス」や「ロイヤルティボーナス」など、金銭的な報酬を提供することも考えましょう。

優秀な人材がいなくなることで組織に課題が生じる場合は、特別な配慮をする必要があります。多くの企業が、この重要な人材にサバティカル休暇*1を与え、燃え尽き症候群から回復させようとしています。彼らを永遠に失うことを考えれば、数カ月だけ失う方がずっとよいのですから。

要するに、人は自分が本当に評価され、大切にされる職場で働きたいと思うものなのです。そのようなシグナルを頻繁に、そして一貫して送ることが大切です。

7. 人材関連部門を充実させる

最後になりましたが、上記のような雇い入れや職場文化に関する変化は、すべて人事チームに依存しています。彼らはおそらく疲労困憊しており、休息と感謝を必要としているはずです。また、離職率が高まる間は採用担当者を増員する必要があるかもしれません。迅速に採用活動を進められるよう、競争力のある雇用制度を整えましょう。また、新入社員の受け入れ態勢を確認し、マネジャー達が新入社員を成功に導けるようにしましょう。

優れた人材育成チームを整えることも重要です。求職者が雇用主に求めるものとして、「学習と成長の機会」が常に上位に挙げられていることをご存知でしょうか。実際、Gallup社の調査によると、ミレニアル世代の87%が就職活動の際に「専門性やキャリアに関する成長・発展の機会」を最も重視する要因として挙げています。

あなたの組織は、DE&I*2の取り組み、ウェルネス(健康維持)プログラム、管理職研修を含む、幅広い学習の機会を提供する必要があります。最先端のプログラムに投資し、ベストプラクティスを活用して、真の行動変容を促しましょう。特典のあり方として、社員各自がスキルや関心を高めるために使える学習予算を確保してはどうでしょうか。大学のプログラムに限定するのではなく、競合他社に負けない柔軟性をもったものを提供しましょう。

おわりに

大退職時代をパンデミックのせいにするのは簡単ですが、実際は、何十年も前から生じていた問題を加速させただけです。この2年間、私たちは長年の習慣を断ち切り、時代遅れの思い込みに挑戦することを強いられましたが、それは幸いであったと言えるでしょう。私たちは今、仕事のあり方を見直す素晴らしい機会を得ているのです。

大退職を乗り越え、「大再建」を実現するためには、ウェルネスや仕事と人生のバランスをとりながら、仕事をより有意義で、つながりが感じられ、生産的なものにする方法を真摯に探究することが必要です。そうすることで、現在も、そして将来も、優秀な人材を惹きつけることができるのです。

「大退職時代(The Great Resignation)」という言葉を作った組織心理学者のAnthony Klotz氏はこのように言っています。「この恐ろしいパンデミックの中で希望の光の一つは、職場がより健康で持続可能な場所に変化し、従業員の幸福につながっていく点であろう。」と。

 


*1  使途制限のない、職務を離れた長期休暇。
*2  ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)の頭文字からなる略称。

この記事は、Britt Andreatta博士のブログに2021年12月17日に掲載されたものです。原文(英語)はこちら別ウィンドウで開く/Open the link in a new windowの記事の後半です。

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