インバウンド対応の最前線で活用される、英語でおもてなしをするための教科書
さらなる増加が見込まれる訪日外国人旅行者の受け入れ態勢を強化
旅館やホテルなどでは、年々増加している訪日外国人旅行者に対し、日本ならではのおもてなしができるよう、多くの事業者が日々研鑽しています。そのような中、全国約1万6,000軒の旅館・ホテルの組合組織である「全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(以下、全旅連)」の青年部では、流通・インバウンド委員会を設置。訪日外国人旅行者の受け入れ態勢の整備や、海外に向けた旅館ブランドの発信などを行っています。
同委員会の前身にあたるインバウンド戦略委員会では、2013年に、全国の旅館を対象にアンケートを実施。「外国人宿泊者に英語の案内は通じたか」という質問に、「通じた」と答えたのは、4割ほどにとどまりました。ほかの回答でも、言語の不安が大きいことが分かり、不安を解消し、自信をもって接客するための態勢強化が進められることになりました。
旅館目線で必要なことを厳選した英語対応のマニュアルを製作
その1つとして、2016年に製作されたのが『旅館の、旅館による、旅館のための インバウンドの教科書』です。
「旅館目線で内容を厳選し、現場ですぐに使える英語のマニュアルとしてつくりました。簡単な単語や文章を用いて、『英語が苦手なスタッフでもコミュニケーションを取ることができるようにする』のがコンセプトです。また、外国のお客様の受け入れでは、文化の違いを認識する必要があるため、教科書の冒頭で各国の文化を紹介しました」と語るのは、同委員会副委員長(元委員長)で、製作を手掛けた倉沢晴之介氏です。
ほかにも、同書には宿泊予約への返信メールや、館内での過ごし方、食事の案内などの英文フォーマットも掲載されていて、旅館だけでなくホテルでも活用することができます。倉沢氏は、「流ちょうな英語での会話だけがおもてなしなのではなく、お客様が困らないよう案内の充実を図ることも重要だ」と言います。
実際に同書を活用する、「信州別所温泉 旅宿 上松や」の仲居・小林愛美さんは、「それまでは翻訳サイトを使っていましたが、『インバウンドの教科書』は手元ですぐ確認ができ、また、旅館特有の、従業員がよく使うフレーズが載っているので、すぐに外国のお客様とのコミュニケーションに生かすことができます」と言います。小林さんは英語をもっと話せるようになりたいと思い、自主的に学習を始めたそうです。
『インバウンドの教科書』の配布後には、営業に関する内容も入れてほしいなどの要望が高まり、2019年に中級編を製作して配布しました。外国人が多く滞在する旅館・ホテルの事例なども掲載され、さらに旅館の訪日外国人旅行者受け入れを推し進める内容になっています。
また、同委員会では、外国人旅行者の多くが宿泊予約に使う外資系のオンライン・トラベル・エージェント(OTA)との調整も進めています。同委員会委員長の芝野尚氏は、「外資系OTAからの予約では、旅館と外国のお客様の間に複数の企業が入ることもあり、事前情報と、旅館が提供するものが違うというトラブルが生じることがあります。これを避けるため、OTAと交渉し、予約手続きの簡素化を図っています」と語ります。
英語によるおもてなしというソフト面、そして宿泊予約システムなどのハード面の双方から、訪日外国人旅行者の受け入れをサポートする、同委員会の取り組みはこれからも続いていきます。
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