2022年11月号

    海外留学に向け必要な英語力とTOEIC® Speaking & Writing Testsの効果的な活用法とは

    群馬県前橋市に本部を置く群馬大学は、地域に根差し、世界的なレベルで広く社会に貢献する開かれた大学として国際化を推進しており、国際センターがその中心部局として業務を担っています。同センター准教授の越智貴子氏は、海外の大学との協定締結や、学生の海外派遣のほか、同大学のブランディングや、教育のデジタル化の推進なども担当しています。コロナ禍で学生の海外留学が困難になる中、オンラインで海外の大学の講義を受け、現地の学生と交流できる「グローバルキャンパス」をいち早く立ち上げた越智氏に、留学前に身につけておきたい英語力や、TOEIC S&Wの有効な活用法などについて話を伺いました。

    留学する前に身につけておきたい基本的な語彙力

    新型コロナウイルス感染症の拡大により、学生の海外留学が困難な状況にありましたが、最近では、日本からの留学生の受け入れを再開する国が徐々に増え、当大学でも、留学先へと出発する学生が増えてきています。

    留学と一口に言っても、語学研修などを主な目的とする短期留学と、交換留学生として海外の大学で学ぶ長期留学とでは、事前に身につけておくべき英語力は異なります。

    越智貴子氏 越智貴子氏

    群馬大学国際センター准教授 学長特別補佐(グローバル化) 越智貴子氏

    短期留学においては、英語の基本的な語彙力を身につけておくことが重要です。コミュニケーションは、まず相手の話を聞き、それに対する答えや自分の考えを話すことで成立しますが、そもそも、会話の中に出てくる基本的な単語や表現を知らなければ、相手が話していることを聴きとれず、理解することができません。つまり、英語のリスニングでは、基本的な語彙力が不可欠なのです。

    当大学の短期留学プログラムでは、学生が一定の語彙力を身につけていることを前提としており、研修では主に、リスニング力とスピーキング力の強化を図ります。リスニングを行う際、「英語が聴きとれたら、今度はその答えを言葉にしてみましょう」というように、スピーキングとのつながりを持たせ、自分の考えを自分の言葉で、きちんと伝えられる力を養う内容にしています。 長期留学プログラムに関しては、現地の大学において英語での授業を受け、エッセイを書いたり、プレゼンテーションを行ったりするため、語彙力やリスニング力などはもちろん、英語で書くために必要となる、アカデミックな内容の文献を理解するリーディング力が重要になります。

    当大学の長期留学プログラムでは、短期留学のプログラムと同様の内容に加えて、リーディング力とライティング力を修得するプログラムを設け、4技能を体系的に身につけていく指導を行っています。

    外部試験の受験は学生だけでなく教員にも有益

    一方、英語学習を行っていく中で、自分がどのレベルの英語力を身につけているのか、また、自分にはどんな力が足りないのかを客観的に知ることができる外部試験を受験することは、モチベーションアップを図るためにも重要だと考えています。

    当大学においても、留学プログラムに参加する学生には、留学前と留学後にTOEIC S&Wを受験してもらい、留学によって英語力がどの程度伸びたかを測定しています。以前、留学プログラムに参加した学生が、TOEIC S&Wのスコアを後輩に見せながら、「このプログラムに参加したら、スピーキングとライティングがこんなに伸びた」「スコアは就職活動にも役立つ」などとアドバイスしているのを耳にしたことがあります。TOEIC S&Wは、英語での発信力を測定する指標になりますから、就職活動はもちろん、大学を卒業して社会人になってからも非常に役に立つと思います。

    TOEIC S&Wは、学生にとって多くのメリットがあるだけでなく、実は私たち教員にとっても非常に有益です。当大学において学生の留学前後のスコアを比較すると、留学後の英語力は総じて留学前より伸びていますが、以前、留学先やプログラムによって、その伸長度が異なることがありました。ある留学プログラムで、参加した学生のスピーキング力が思ったよりも伸びていないことが明らかになったのです。プログラムの内容を精査したところ、スピーキング力を伸ばす要素が少なかったことが分かり、その後、プログラムの内容を修正しました。

    TOEIC Program全体に言えることですが、TOEIC S&Wは、比較的易しいものから難易度の高いものまで様々なレベルの問題が出題されるなど、英語力を細かく分析できるよう体系的に作られています。そのため、学生に定期的に受験してもらうことで、どんな力が身につき、どんな力が伸びていないかを客観的なデータとして把握することが可能です。それゆえ、教員が教育内容を見直す指標にもなり、より効果的な英語学習法や留学プログラムを提供するためにも、大いに役立つのです。

    また、「英語力を高めるには、外国人と話すのが近道だ」とよく言われますが、普段の生活の中でそういった機会が多くあるわけではありません。そのような状況の中で英語学習を進めていく場合、例えばTOEIC S&Wの問題は、日常生活のワンシーンや会話などに基づいたものが非常に多く、文脈にもリアリティがあるため、いわゆる“使える英語”に触れることが可能です。つまり、TOEIC S&Wを受験したり、受験に向け学習することで、英語でのコミュニケーション力が、自然に身についていくと考えています。

    外部試験の中には、コツさえつかめば、ある程度の点数がとれてしまうものもありますが、TOEIC S&Wの問題は、英語の文脈を理解し、その文脈の中で問われたことについて考え解答する必要があるため、留学先で英語を実際に使うことができる力、つまり真の英語力が測定できると思います。

    英語でのコミュニケーションが自分の可能性を広げる

    教員が教育内容を見直しても、学生の中には、自分なりに英語の勉強を続けているのに、なかなか成果が出ないという人がどうしても出てきます。そうした学生のほとんどは、英語の語彙力が十分でないという傾向があります。

    私はそのような学生に対して、英語の語彙力を上げるために、単語帳などを使い暗記するのではなく、目と耳を使うように指導しています。例えば英語のテレビドラマを、英語の字幕を表示しながら視聴することは非常に効果的です。ドラマを見ていれば、シーンや登場人物の会話の流れといった文脈から、「こういうときに、この単語を使うのか」「英語にはこういう言い回しがあるのか」と気づくことが可能で、かつ、登場人物が話す英語を耳で聴きとり、同時に英語の字幕を目で見て確認するため、より自然に語彙力を向上させることができるのです。

    ひと昔前の日本では、英語力を向上させる理由を聞かれると、多くの人が「学校の教科の1つだから」と答えていたのではないでしょうか。もちろん、学校で英語を学ぶことは重要ですが、英語力を向上させる本来の目的は、世界中の様々な人たちとコミュニケーションするためだと私は考えています。英語はあくまでコミュニケーションのためのツールです。自分が今まで行ったことのない場所に行って人と出会い、お互いを理解し、未知の文化に出会うための手段だと考えれば、英語学習もきっと楽しくなるはずです。

    とはいえ、日本人にとって英語は母語ではないため、「相手の言うことが聴きとれないかもしれない」「自分の話していることが伝わらないのではないか」と、緊張してしまうこともあるでしょうし、学習の途中でつまずくこともあると思います。そういうときはまず、意識的に英語との距離を縮める工夫をしてみるといいのではないでしょうか。例えば、英語の映画やドラマを見るのも良いですし、家族や親しい友人など、誰とでもいいので日本語を使わずに英語で話してみたり、自分が日常的にやっていることを頭の中で英語に置き換えたりしながら行動してみるのも1つの工夫です。普段の生活の中に、積極的に英語を取り入れてみることをお勧めします。

    英語でのコミュニケーションは、今まで知らなかった世界を知ることができ、人生を豊かにしてくれると思います。将来を担う学生の皆さんには、身近なところに英語を取り入れ、外部試験を上手に活用しながら学習を進めることで、自分の新しい可能性を開いていってほしいと考えています。

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