70年前にイギリスで始まったギネス世界記録®。
日本人初の認定員として世界中で奇跡の瞬間に立ち会ってきた石川佳織さんにお話をうかがいました。
新たな経験を求めて
ギネス世界記録本社へ転職
私は音楽を通して英語に夢中になりました。中学生の頃ビートルズの大ファンになり、自然と他のイギリスのバンドにも興味が広がりました。英語はもちろんイギリスの文化にとてもポジティブなイメージを持っていたことが、学びの大きな原動力になったと思います。
いずれイギリスに住みたいという理由から、大学では英語を専攻しました。周囲は帰国子女で英語の堪能な人が多く、初めて挫折感を味わったのもこの頃でした。そんななか、イギリスのマンチェスターに留学し、独特の方言に苦労しながらも、好きな音楽を通じて現地の人との交流を深められたことが、自信につながり、気持ちを軽くしてくれたように思います。帰国時には「また来たい」ではなく「また帰りたい」と思うほどでした。日本で就職し、お金を貯めて、再びイギリスに“帰る”ことができました。

世界100カ国以上で販売されてきた『ギネス世界記録』。2026年版の日本語版は11月20日に発売
その後、ロンドン大学のプレマスターコースで言語学を学びながら大英博物館で働き始めました。歴史と文化が凝縮された場所で、博物館の生き字引のような職員と働ける最高の環境でした。
当時の環境に満足しながらも、新たな世界を見たいと思っていた頃、日本語のできるスタッフを募集していたのがロンドンに本社があるギネスワールドレコーズでした。求人募集の時点では社名も仕事内容も知らされておらず、詳細がわかったときは驚きつつも、俄然興味が湧きました。
採用にあたっては、「自分で考えて行動できるか」はもちろん、「何かに打ち込んだ経験はあるか」ということが重視されていたように思います。「音楽が大好きで、バンドを組んでいます」と話すと、興味を持ってくれましたね。多くの国から人材を募っていた幸運も重なり、日本人で初めての認定員となりました。
“見知らぬ土地でも仲間を築いてきた”
それが、働く自分を支える力に
認定を行う現地には基本的に一人で向かいます。大勢の人が挑戦に参加する場合は、私だけでは目が行き届きませんから、現地の運営側にチェックするスタッフの用意をお願いします。指示を出し、適切に動いてもらうことも大切な役目です。初めて行く土地、初めて会う人たち、英語力も様々。だからこそ、事前に文化風習や名物料理などをリサーチするようにしています。これは大英博物館で大勢のスタッフと働いていた頃に学んだことです。イギリスは、音楽とサッカーの話題になると、熱く盛り上がります。ベストを尽くせる環境づくりの一つとして、相手を知り、大切にしようという気持ちを示すことで、よいコミュニケーションが生まれるものです。

挑戦の日に至る過程を知っている認定員にとって、もし残念な結果であれば、悔しい気持ちにもなります。でも、そこを曖昧にしてはギネス世界記録へのリスペクトが失われてしまうので冷静な視点が不可欠です。さらにルールを伝えるときや、正式な記録として登録するときには、徹底した正確さが求められます。専門用語も多く、慣れるまでは戸惑うこともありました。そんなとき、私を支えたのは、“これまで、見知らぬ土地であっても、熱意をもって人と関わることで仲間を築いてきた”という自分への誇りのような気持ちだったのだと思います。
これまで約30カ国を訪れ、携わった記録は500を超えます。一つひとつが本当に思い出深いですね。雪だるまの数を凍えながら数えたり(笑)。アメリカの小さな町で行われた、コインを並べる挑戦の認定のときは、皆さんが大いに盛り上がって、存分に楽しんでいる姿が印象に残りました。空港から何時間もかけて到着した私を温かくもてなしてくれたこと、あちこちに歓迎の旗が飾られた風景は、幸せな記憶です。
挑戦の内容は千差万別ですが、世界一を目指す皆さんからは明るいエネルギーがあふれています。そのエネルギーが絆を生み、地域の交流が再び活性化することもあります。そんな物語を間近で見られることが、一番の醍醐味です。
現在は帰国し、ギネスワールドレコーズジャパンの代表になりました。代表として日本オフィスの運営に携わっているため、認定員としての活動からは一歩退いていますが、今でも現場の雰囲気が大好きです。緊張感あふれる現場で働く認定員には、あらためて尊敬の気持ちを強く感じています。ギネス世界記録への信頼は、関わる人すべての誠実さが支えています。それを守りつつ、誰もが世界一になれるというわくわく感を発信していきたいです。個人的な夢は、認定員として訪れた地に再び足を運ぶこと。繰り広げられた物語の続きを自分の目で確かめてみたいですね。

ギネスワールドレコーズジャパン代表
石川 佳織 さん
日本での勤務経験を経て2000年代初頭に渡英。2007年よりギネスワールドレコーズ本社に勤務。世界中をまわり、立ち会った記録挑戦は500を超える。2012年日本支社に異動後、2019年代表に就任。
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