Leader's Voice

若い日の経験すべてがいまにつながり未来に大きく実を結ぶ 太田健自 氏 チューリッヒ生命 日本における代表者兼最高経営責任者

若い日の経験すべてがいまにつながり未来に大きく実を結ぶ

スイスのチューリッヒを本拠地に、世界210以上の国と地域で展開するチューリッヒ・インシュアランス・グループ。チューリッヒ生命の日本代表を務める太田健自さんは、帰国子女でもあり、留学や国境を越えた豊かなビジネス経験と、常にグローバルな環境に身を置き、道を切り拓いてきた。「変化と混沌の時代にこそ、日本からたくさんのリーダーが出てほしい」と語る太田さんが考える、未来のグローバルマネジャーの条件とは?

プロフィール
太田 健自(おおた・けんじ)
1963年東京都生まれ。米ジョージタウン大学卒、米スタンフォード大学大学院MBA。ソニー勤務を経て、米系コンサルティング会社で、保険会社や金融機関向けに、経営戦略や事業変革プロジェクトのコンサルティングを担当し、シニア・パートナーとなる。2002年からはAIGグループで、日本および韓国の複数のグループ保険会社のシステムとオペレーションを統括。2009年、アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー日本支店(現メットライフ生命保険)のプロダクト&サービス担当役員に就任。2012年1月より現職。

目次

  • リーダーシップ
  • 外資系で働く

体当たり英語でアピールすることの大切さ

チューリッヒ生命リーダーシップミーティングのようす

クアラルンプールで行われたリーダーシップミーティングの様子。APAC(アジア太平洋)地域各国の幹部が一堂に会した。

 チューリッヒグループは、世界中で展開するスイス発のグローバル企業です。本社の執行役会もCEOがイタリア人、COOがベルギー人、アジア・パシフィック統括がアメリカ人と、外国人が圧倒的に多く、スイス人は運用統括責任者と南米統括の2人だけであり、11人中9人は外国人です。取締役会も11人のうち8人が外国人です。
 これまでさまざまな国の人達と働いてきて、私なりに気づいたことがあります。
 まず、外国人はよくしゃべります。会議などでも我先にと意見を言いますから、我々日本人もすかさず会話に割り込んでいかなくてはなりません。さもないと、たちまち周回遅れになってしまいますし、ましてや黙っていたのでは会議に参加する意味がありません。
 日本のビジネスパーソンは精一杯努力をしているのでしょうが、まだまだおとなしすぎます。会議で発言のチャンスを得るためには、エゴが必要です。体当たり英語でいいから、まずは大きな声でみんなの注意を引き、ボディランゲージも使って、「言いたいことがある!」とアピールすることです。
 これには必ずしも、高度な英語力は必要ありません。TOEIC Listening & Reading Test が700点くらいでも、話の内容がおおむね把握できていれば問題ありません。自分から積極的にアピールしていけばよいのです。一言でも二言でも発言すると、周囲は一生懸命耳を傾けて、こちらの言葉を理解しようとしてくれます。「こういうことが言いたいの?」と、助け舟を出してくれたりもします。

シニアリーダーシップコース研修後のディナーのようす

バルセロナで行われたシニアリーダーシップコース研修後のディナーの様子。

 また、「質問をする」ことも大切です。語学に自信がない人や口下手な人は、いきなり自分の意見を言うより、ずっと楽かもしれません。
 「今のお話の要点は、〇〇という理解でよろしいですか?」「それは〇〇という意味ですか、それとも〇〇ということでしょうか?」といった質問は、互いの理解の確認になりますし、必要なら相手が言葉を補って、分かりやすく説明してくれます。
 良い質問は、相手との距離を確実に縮めてくれるので、仕事でもプライベートでも使えます。
 私自身は、英語の会議では英語で、日本語の会議では日本語でメモをとります。内容がスムーズに頭に入ってきますし、その言語のまま考え、次の質問や発言に進むことができて楽だからです。同時通訳の世界では、フィルターに英語を入れると日本語が出てくる、日本語を入れると英語が出てくるという作業が行われますが、これは非常に疲れます。英語と日本語は、言語としての距離が遠い関係なので、脳の負担が大きいのです。
 言語については、私はむしろ、整理された引き出しのようなイメージをもっています。ポーランド語の勉強を始めて間もないころ、ポーランドのパン屋でパンを買おうとして、前に勉強していたフランス語が出てきて慌てたことがあります。うっかり違う引き出しを開けてしまったのです。新しく学びはじめた言語の引き出しには、まだあまり使えるものは入っていないかもしれません。少しずつ中身を足して、複数の引き出しを使いこなしていくとよいと思います。

変化と混沌の時代のグローバルマネジャーの心得とは

チューリッヒ生命おおたけんじしとすたっふの写真

Zurich Lean(チューリッヒ・リーン:「継続的改善」という哲学に基づいた、業務の無駄を減らしていくための活動)でグリーンベルトを取得したスタッフとともに。

 2017年という年は、20年後に振り返ったとき、多くの人々がエポックメイキングな年であったと感慨深く思うのではないでしょうか。政治、経済、国際問題と、世界中のあらゆる分野で変化が起きています。
 一方、私は外国で活躍する日本人と出会うたび、誰もが実に素晴らしいライフストーリーをもっていることに驚かされます。もともと、日本と日本人には世界でもユニークな文化的魅力がありますが、均一的な日本の社会土壌から頭ひとつ抜きん出た人というのは、往々にして非常に興味深いコンテンツをもっています。世界に飛び出して活躍する日本人には、ジャンルを問わず極めてクリエイティブな人が多いのです。
 変化と混沌のこの時代にこそ、私は日本からたくさんのリーダーが、世界に出てきてほしいと思います。そして、グローバルマネジャーを目指す人には、知っておいてもらいたいポイントが3つあります。
 1つ目は、「良きグローバルマネジャーは太陽であれ」です。「北風と太陽」の寓話を思い出してください。世界標準のリーダーシップは、部下を褒め、認め、のびのびと働いてもらう「太陽型」が主流です。企業は社員の一人ひとりに、独自性や想像力を発揮してもらいたいのに、「北風」のような上司が相手では、社員の想像力は萎縮するだけです。
 2つ目は「人の意識は行動を通して変わる」で、これは私の鉄則です。「北風型」の上司は、叱ることで部下の態度や意識を変えようとしますが、これは間違いです。人間は行動を通して自ら学び、変わっていく生き物です。まずやるべきは、部下とよく話し、助言をし、本人にアクションプランをつくってもらうこと。どうすれば問題を乗り越えられるのか、自ら一生懸命考えてつくったアクションプランに沿って行動するうちに、「ああ、こうすればいいんだ!」と、人は自分自身で気づいていくのです。こうした積み重ねが、変化や向上へとつながるはずです。
 3つ目は、「バーバルとノンバーバル・コミュニケーションの一致」です。全社を挙げて残業を減らそうとしているとき、上司が平気で残業をしていては、いくら声をかけても、部下は定時に帰れません。グローバルマネジャーは常に言行一致、自分がロールモデルになるべきです。
 これら3つのポイントは、海外に出ると、よりいっそう重要な鍵になってくると思いますが、加えて、「上司と部下の関係はできるだけフラットに」という点についても述べさせていただきます。最近は日本でも、360度評価を導入している会社が増えているように、部下のフィードバックを積極的に求めることが重要です。上司だから偉いわけではなく、上司も部下も、そのポジションなりの役割を果たして仕事をしているのです。チームで仕事をしていることを、忘れてはいけません。
 いま私が、自分の青春時代を振り返って思うのは、どんなささやかな経験も、どこかで、何らかの形で、その後の人生に活かされてきたということです。無数の小さな「点」が、年を追うごとに少しずつつながって「面」となり、若いときには思いもかけなかったようなことが、いまになって実現したりしています。人生に無駄はありません。未来のリーダーたるみなさんには、好奇心をもち、自らモチベ―ションを高め、自分なりのアクションプランを立てて臆せず前進していってほしいですね。

  • 前へ
  • 1
  • 2

関連記事

ページの上部に戻る/Back to TOP