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山勢拓弥氏「カンボジアの地で、「自分にしかできないこと」に挑戦し続ける」

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カンボジアの地で、「自分にしかできないこと」に挑戦し続ける

東南アジアのインドシナ半島南部に位置するカンボジア王国に単身移住した山勢拓弥さん。世界遺産のアンコール・ワットがあることで知られるシェムリアップ市に拠点を置き、バナナの木から採れる繊維でつくった紙・バナナペーパーを販売したり、日本語学校を運営したりするなど、さまざまな事業を展開している。大学を中退してカンボジアに居を移してから8年が経つという山勢さんに、同国に移住した理由や事業を始めた経緯、異国で活動する上で苦労したことなどを語ってもらった。

プロフィール
山勢拓弥(やませ・たくや)
1993年東京生まれ。3歳から高校卒業まで福岡県で育つ。高校卒業後、埼玉県にある獨協大学に進学。2013年、大学を中退しカンボジアに移住。世界遺産のアンコール・ワットがあるシェムリアップ市のゴミ山で活動を始め、2015年、一般社団法人Kumaeを設立。現地の子どもたちを対象にした日本語学校の運営するほか、ゴミ山で集めたゴミを換金する以外の選択肢をつくるためのバナナペーパープロジェクトを発起し、バナナペーパーブランド「Ashi」を立ち上げるなど、さまざまな取り組みを行っている。2018年、公益財団法人社会貢献支援財団が主催する第50回社会貢献者表彰受賞。テレビ番組「情熱大陸」(TBS)をはじめ、メディア出演も多い。

目次

  • 個としての軸
  •      
  • コミュニケーション力

ゴミ山の子どもたちに新たな可能性を提供する

 カンボジア移住後も、ゴミ山のことをさらに深く知るため、1年半ほど観光ガイドの仕事を続けました。そうして、私自身のカンボジアでの最初の取り組みとして始めたのが、ゴミ山の子どもたちに日本語を教えることでした。

 一度、ゴミ山の子どもたち100人に「将来なりたい職業」についてアンケートを採ったことがあるのですが、出てきた回答はたったの4つ、「医者、学校の先生、農業、ゴミ拾い」というものでした。世の中には多種多様な仕事があることを子どもたちが知らないのはどこの国でも同じでしょうが、いくらなんでも少なすぎます。日本の小学校で100人の児童に同じ質問をすれば、少なくとも10種くらいは出てくるのではないでしょうか。

 他に仕事を知らないから、子どもたちが大人になってもゴミ拾いをしてしまう。それでは、ゴミ山問題は永遠に解決しません。子どもたちに将来のさまざまな可能性を示してあげることで、ゴミ山から離れる道を選択できるようになってほしかったのです。

 では、なぜ日本語学校かというと、日本語を教えることなら私にもできると思えたこと。また、カンボジアには日本人観光客がたくさん訪れるので、観光関係のさまざまな職種で日本語話者の需要があることなどが理由です。

 近隣の村に英語学校があったので、そこに日本語のプログラムを入れてもらう形で最初はスタートしました。ただ、子どもたちに日本語を教えるには、教材をそろえたり、プログラムを開発・運営したりする必要があり、そのためにはお金も人手も必要になります。それらを得るには個人でやるより団体にしたほうがいいだろうと考えて2015年に設立したのが、一般社団法人Kumae(クマエ)です。クマエとはカンボジアの公用語であるクメール語で、カンボジアやカンボジア人を意味します。正しくはKhmerと表記しますが、日本人には読みづらいので音をそのままローマ字表記してKumaeとしました。

 ちなみに、私は今でこそクメール語での会話に不自由しませんが、学校や教材などで言葉を学んだことはありません。外国語を習得したければ、その言葉が話されている国で暮らすのが手っ取り早いとよく言われます。その言葉を地で行くように、日々の生活や仕事の中で少しずつ言葉を覚えていきました。ただ、当時のクメール語会話能力は今思うと全然未熟で、それでも子どもたちとコミュニケーションを交わしながらどうにか授業を行えていたのだから、やってみると意外と何とかなるものです。

バナナの木で紙をつくり新たな仕事を生み出す

 仕事の選択肢を増やすことで、ゴミ山問題の解決を図るのは、子どもだけでなく大人にも言えることです。先ほど、本業での収入が不安定だから、より安定したゴミ山でのリサイクル業を選択していると言いました。それはつまり、安定した別の本業があれば、そちらを選択する可能性もあるということ。でも、アンルンピー村にはそれがない。ないなら自分でつくればいいということで、ゴミ山で知り合ったリサイクル業からの転職を望んでいる家族と一緒に、新たな仕事づくりに乗り出しました。

バナナペーパーの製造は、バナナの茎から繊維を取り出し、全ての工程を手作業で行う。

バナナペーパーの製造は、バナナの茎から繊維を取り出し、全ての工程を手作業で行う。

 最初はミサンガや麻製のバッグなどを手作りして観光客に販売していました。でも、次第に、それが本当に自分がやるべきことなのかと疑問を感じるようになってきたのです。私自身が商品製造に携わっているわけではないし、特に独創的なアイデアでもない。自分じゃなくてもできる仕事ではなく、自分にしかできないことに挑戦したい。そう思ってインターネットで調べたり、周囲の人に聞いたりしてヒントになりそうなアイデアを探していたときに、カンボジア在住の日本人から教えられたのがバナナペーパーでした。

 アフリカのルワンダで廃棄されていたバナナの茎を原料に、日本の伝統的な和紙技術を応用して紙をつくっている津田久美子さんという人がいると聞き、バナナならアンルンピー村のあちこちに自生しているので私たちにもできるかもしれないと思ったのです。津田さんが運営するNPO法人のホームページからメールで連絡したところ、こちらに来てつくり方を指導していただけることになり、バナナペーパーづくりがスタートしました。

 実績のある方が手伝ってくれるのだから、スムーズに事が運びそうだと期待していたのですが、ルワンダとはバナナの品種が違うせいなのか、最初はなかなかうまく「紙」になってくれず苦労しました。ただ、何度も失敗を繰り返している私たちを見かねたのか、ゴミ山で働いていた村人の中から手伝ってくれる人が現れるようになったのは、うれしかったですね。みんなで協力しながら1カ月ほど試行錯誤を重ねた末、どうにか形にすることができ、紙袋やポストカードとして販売を始めました。

 その後、バナナペーパーの弱点である耐久性や防水性を向上させるため、日本の大手繊維会社の協力を得て、特殊なポリエステルとバナナ繊維を組み合わせた新たなバナナペーパー「亜紙(Ashi)」を独自に開発。財布やカードケース、バッグなどさまざまな商品に加工して、シェムリアップ市内の3店舗のほか、オンラインストアでも販売するようになりました。

 バナナペーパー事業は順調に成長を続けていましたが、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響により大打撃を受けました。年間の売上高が前年比マイナス96%にまで落ち込んだと言えば、その被害の大きさが分かっていただけるでしょう。とはいえ、嘆いたり落ち込んだりしているだけでは物事は何も前進しません。ロックダウンや外出制限の実施中、ふんだんに生まれた空き時間を有効活用して、私は新たなアイデア実践の準備を整えることにしました。

 そうしてコロナ禍がやや落ち着きを見せたタイミングで実行に移し、何か新しいことに挑戦したい熱い思いを秘めた若者たちを後押しするためのコミュニティ「NFC KUMAE」を2020年10月に設立。同年の年末にはシェムリアップでは珍しい日本風の牛タン屋をオープンし、21年7月からは日本のファッションブランドの新古品を扱うアパレルショップを始めています。また、NFC KUMAEの「挑戦の連鎖」をつなげるため、そして日本人の働き方や生き方の価値観の変化に対応したワーケーションの場所として、アンルンピー村でコショウ畑を始めることしました。現在、コショウの苗のオーナーを募集しています。これらの取り組みから得られた経験や知見をバナナペーパー事業にフィードバックすることで、さらなる発展につなげていくことができれば理想的ですね。

ショップに並ぶバナナペーパーの製品。「亜紙」という素材名には、東南アジアから世界へ広がるように、との想いを込めた。

ショップに並ぶバナナペーパーの製品。「亜紙」という素材名には、東南アジアから世界へ広がるように、との想いを込めた。

――山勢さんが大切にしていること

「行動はメッセージ」という言葉です。私が恩師と慕う、とあるNPO法人の代表をしている人からカンボジアに発つ直前に送られた言葉で、当時はその意味するところがよく理解できませんでした。でも、8年間カンボジアで活動してきた今なら、少し分かる気がします。何かをやりたい人はたくさんいるけど、それを行動に移せる人は少ない、だからこそ、行動はどんな言葉より雄弁に人の心に響くのだと。これからも、常に「行動する」ことを忘れずにいたいです。

グローバル人材育成プログラムについて

IIBCは、国境のみならず、あらゆる境界を越えて世界で活躍する人材を育てたいと考えています。グローバル化やデジタル化で世界がますます複雑化していく時代に大切な「個としての軸」「決断力」「戦略・ビジネスモデル創出力」「異文化理解力」「多様性活用力」「コミュニケーション力」。グローバル人材育成プログラムは、これらを学び、考え、育む機会を、EVENTやARTICLEを通じて提供していきます。

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