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伊尾木智子氏「世界に向けて日本の魅力を発信する」

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世界に向けて日本の魅力を発信する

幼い頃に芽吹いた海外への好奇心をその後も育み続け、海外留学や海外でのインターン経験を経て、日本貿易振興機構(JETRO)に入構した伊尾木智子さん。「対日投資を促進するため、海外に向けて日本の経済情報を発信したり、さまざまな業種の中堅・中小企業などの海外進出を支援したり、民間企業でも国の機関でもない、独立行政法人であるジェトロだからこそできる仕事に大きなやりがいを感じる」と語る伊尾木さんに、海外での勤務を通して気付いたことや、世界を舞台に働くやりがいなどを語っていただいた。

プロフィール
伊尾木智子(いおき・ともこ)
神戸大学経済学部在学中、1年間ベルリンへ留学。同大学卒業後、京都大学大学院に入学し、環境経済学を専攻。デュッセルドルフにてインターン経験後、2014年にジェトロ入構。対日投資部企業誘致課で約20社の外国企業の日本進出を支援。ジェトロ・プラハ事務所での実務研修中、中央ヨーロッパへの日本酒輸出や、現地日系企業のファクトリーオートメーション推進を担当。18年より海外調査部国際経済課にてスタートアップ・エコシステムやデジタル関連ビジネスについてレポートを執筆。

目次

  • コミュニケーション力
  •      
  • 個としての軸

海外のビジネス現場で気づいたコミュニケーションの重要性

 プラハでは主に現地の日系企業の支援に携わりました。2000年代にトヨタ自動車がチェコに進出して以来、多くの自動車関連企業がオフィスや工場をチェコに構えています。私が赴任した2017年当時は、ちょうど工場のオートメーション化・IoT化を意味する「インダストリー4.0」という言葉が広まり始めた時期で、それを実現するためのビジネスパートナー発掘の需要が高まりつつありました。そこで、現地のIoT関連企業を集めたセミナーやイベントを開催して、地元企業と日系企業のマッチングの場を提供したのです。

 また、その頃から日本食がチェコの若者の間でブームになりつつあり、日本酒の需要も高まっていました。ヨーロッパ市場を狙う日本の酒蔵から、チェコへの進出を相談されたことがあり、チェコの食文化について説明したり、一緒にプラハ市内の飲食店を視察したりしたことも印象に残る仕事でした。

 私は仕事柄さまざまな業種・業界の人とお会いするのですが、そうした経験の中で気付かされたのが、相手に合わせて適切な言葉や言い回しを使って会話をするコミュニケーション力の重要性です。

 例えば、同じチェコに進出しようと思っている企業でも、海外に事業所をすでに持っているところと、初めて海外進出するところが相手ではコミュニケーションの仕方も変わってきます。後者にはより基本的かつ丁寧な説明が必要となるでしょう。私自身、初めて関わる企業については、事前に入念なリサーチを行いますが、どうしても理解が不十分なところが残ってしまいます。相手の海外ビジネス経験やチェコへの関心度合いを探りながら、丁寧にヒアリングする必要がありました。

日本商工会、ドイツ商工会によるチェコ政府とのラウンドテーブルの様子。

日本商工会、ドイツ商工会によるチェコ政府とのラウンドテーブルの様子。

 これは外部の人とのやり取りだけでなく、ジェトロの内部でも同じことが言えます。海外の事業所にはその地域で採用した現地スタッフが必ずいます。そうした人々は、日本のビジネスの現場でよく見られる、その場の空気を読んで適切に判断するというやり方には慣れていません。彼らと円滑にコミュニケーションをするための工夫として、私はよく要点を簡潔にまとめたペーパーを1枚持っていき、それを基に会議や打ち合わせを行っていました。

 かつて就職活動をしていたとき、いろいろな企業の人から「コミュニケーション力の高い人を採用したい」という言葉を聞きました。当時は、「コミュニケーション力よりもっと大切なビジネススキルがあるのでは?」と思い、いまひとつピンとこなかったのですが、その意味するところは、いかに相手の立場により添えるかということだと、今は理解しています。

 なお、私は海外で現地の人とのコミュニケーションを円滑にする方法の一つとして、その国の言葉を話すことが重要ではないかと考えています。そのため、プラハでも週に2回、地域のコミュニティセンターで開催されているチェコ語のレッスンに通っていました。ただ、チェコ語は世界の言語の中でも習得難度の高い言葉なんです。結局、1年間レッスンを受けてできるようになったことといえば、レストランで注文したり、電話でアポイントを取ったりするくらいでした。それでも、外国人が一生懸命自国の言葉を話しているところを見れば、それだけで好感を抱いてもらえるものです。言語を学ぶことは、その国の文化や歴史を理解することにも大きくつながります。現地企業とのビジネス上のコミュニケーションでも、言語能力そのものより、その姿勢を評価してもらえたことが何度かありました。

情報発信力を高め、海外の人に日本の魅力を伝えたい

 1年間のプラハでの実務研修を終え、帰国後は現在も勤務している海外調査部国際経済課に配属されました。部署名の通り、海外の市場動向を調査し、レポートにまとめて国内外に発信することが職務です。

 レポートの目的は主に二つあって、一つは日本企業に海外でのビジネスチャンスを見付けてもらうこと。もう一つは、海外の企業に日本でのビジネスチャンスを見付けてもらうことです。前者は日本の貿易を振興する組織なのだから分かりやすいかもしれませんね。一方、国内企業の競争相手になるかもしれない海外の企業をなぜサポートするのか、疑問に思われる人もいるでしょう。私がジェトロ入構後に最初に配属された対日投資部の業務もまさに外国企業を日本に呼び込む仕事でしたが、外国企業が日本でビジネスを行うということは、長期的な視点で見れば国内の雇用を生んだり、イノベーションをもたらしたりする観点から、とても意義のある取り組みだと感じています。

 日本にはすでに多くの外資系企業が進出しているので意外に思われるかもしれませんが、実は海外からの日本への投資はとても少ないのです。ある国に対する外国企業の投資額のストック「対内直接投資残高」を見ると、日本の場合、GDPに占める割合は5%程度です。先進国では軒並み10%を超えており、アメリカでは30%を上回るので、かなり低い数値といえます。これにはさまざまな要因がありますが、一つは外資系企業に日本の情報が十分に伝わっていないことにあるのではないかと考えています。

 私がこれまで国内外のさまざまな企業に勤める人々と接する中で感じたのは、日本人の弱点は、情報発信が不得手な点ではないかということです。

 例えば、初めてお会いする企業の担当者は、自社の製品やサービスなどについて、とても丁寧に説明してくれます。でも、その製品やサービスの強みや魅力の伝え方が、作り手側に寄り過ぎていて受け手の印象に残らず、話を聞き終わってもぼんやりとしたイメージしかつかめないことが多々あります。一方、海外の企業の担当者は自社の製品やサービスの魅力を端的に説明するのが巧みな人がとても多いのです。

 こうした経験から、私は海外向けのレポートを作成する際には、これまでビジネスの現場に立ち会ってきた中で培った「現場感覚」とともに、どんな言葉や言い回しを用いれば日本の良さを海外の人に理解してもらえるかを強く意識して執筆するようにしています。さらに世界の人に日本のビジネス環境を知ってもらうべく、英語でも記事を掲載しています。私も自身の情報発信力により一層の磨きをかけて、日本の魅力を少しでも感じてもらえるようなレポートを海外に発信していきたいですね。

好奇心を持って仕事に臨むことが日々の充実につながっていると、笑顔で語る伊尾木さん。

好奇心を持って仕事に臨むことが日々の充実につながっていると、笑顔で語る伊尾木さん。

――伊尾木さんが大切にしていること

好奇心です。私が英語を学びたいと思ったのも、海外の同世代の人々はどんなことを考え、何に興味を持ち、何をして楽しんでいるのか知りたいという好奇心に突き動かされたからです。ジェトロの仕事では、多種多様な業種・業界の人と接することが多く、未知の分野と出合うことも多々ありますが、新たな世界を知りたいという好奇心を持って仕事に臨むことで、充実した日々を過ごすことができています。

グローバル人材育成プログラムについて

IIBCは、国境のみならず、あらゆる境界を越えて世界で活躍する人材を育てたいと考えています。グローバル化やデジタル化で世界がますます複雑化していく時代に大切な「個としての軸」「決断力」「戦略・ビジネスモデル創出力」「異文化理解力」「多様性活用力」「コミュニケーション力」。グローバル人材育成プログラムは、これらを学び、考え、育む機会を、EVENTやARTICLEを通じて提供していきます。

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