Global Frontline~グローバルな舞台でチャレンジする人たち~

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NECの技術を活用して世界中の社会課題の解決に貢献したい

大手電機メーカーの日本電気(NEC)でアフリカ事業を担当する北濱満里子さんは、もともと海外で働くことに興味があったわけではなく、大学時代までは受験勉強以外に英語を学ぶこともなかったという。今でこそ、流ちょうな英語で海外の現地法人のスタッフやクライアントと円滑にコミュニケーションを行っているが、「実は英会話が苦手で、長くコンプレックスを持っていました」と打ち明ける。そんな北濱さんは、どのようにして世界を舞台に働くことを考えるようになったのか、そしてその実現のためにどのような方法で苦手な英会話を克服していったのか。

    プロフィール
    北濱満里子(きたはま・まりこ)
    国際基督教大学教養学部卒業後、2014年に日本電気株式会社に入社。欧州・中近東・アフリカ本部にてアフリカ事業を担当。2019年から2022年までNECアフリカ社ナイロビ事務所(ケニア)に赴任。日本政府の支援や国際機関との協業などを通じて、生体認証を活用した安心安全なまちづくりに係る事業に携わる。2022年3月より同社グローバル事業推進統括部アフリカ事業開発グループに所属。

    社会課題の解決に貢献できる仕事がしたい

     フィリピンで出会ったホストファミリーとの交流は、その後のキャリアを考える大きな契機になりました。その人は小さなお子さんを抱えたシングルマザーでしたが、保護された子どもを引き取って育てていたのです。彼女は敬虔なクリスチャンで「子どもは神様からの贈り物だから」と溢れんばかりの愛情を持って子どもと向き合っていました。滞在中は私のことも家族の一員として温かく接してくれました。

     そんな彼女からSOSの連絡があったのは、フィリピンから帰国して数週間が過ぎた頃のことでした。聞けば、台風による洪水被害に遭い、家財を失って避難所生活を強いられているという話でした。ネグロス島は台風による洪水にしばしば見舞われる地域なのです。NGOのメンバーからも写真が共有され、少し前まで過ごした場所が跡形もなく泥まみれになっている様子に衝撃を受けました。

     お世話になった人のために何か手助けをしたいという思いから、少しですが金銭的支援を行いました。当時の自分にはできることがそれくらいしか思い浮かばなかったのです。でも、学生一人ができる資金援助には限りがあるうえに継続性もありません。そもそも、どちらかが一方的に支援する・支援されるだけの関係はあまり健全とはいえないのではないかと感じました。

     洪水に限らず、各種の自然災害や飢餓など貧困に起因するさまざまな問題に直面している人が世界にはたくさんいます。そうした弱い立場に置かれた人たちを持続的に支援するために、支援される側はもちろん、支援する側も何かメリットを享受できる仕組みがあればいいのに。そんな思いから、将来はソーシャルビジネスをはじめとする社会課題の解決を目指す取り組み、できれば国境を越えてそれを実践する仕事に関わりたいという気持ちが湧き上がってきました。

     そして、どんな会社や事業があるのか調べているうちに日本電気(以下NEC)に出合ったのです。

    受話器から聞こえた「Hello」のひと言に硬直してしまう

     NECは、幅広い分野で最先端の技術を提供しています。「海底から宇宙まで」とよくお客様に説明しますが、海中では海底ケーブルのトップサプライヤーの一つであり、宇宙では衛星に関する技術も保有しています。そのような技術を活かし、海底ケーブルの振動から地震や津波を予測するシステムを構築したり、衛星画像とAIを組み合わせて橋などの大規模建造物の劣化をいち早く検知するシステムを開発したりするなど、さまざまな社会課題の解決に寄与する事業を積極的に展開しています。

     NECの名前は以前から知っていましたが、社会課題の解決に向けた取り組みを行っていることはそのとき初めて知りました。「ここだ」と思いました。

     就職活動が始まると早速NECに応募し、面接では自分がこれまで経験してきたことや世界中のさまざまな社会課題を解決するために貢献したいという思いの丈を伝えました。

     それを評価していただけたのか無事に採用され、アフリカ事業の担当に配属されました。

     南アフリカやフィリピンとの関わりから開発途上国に強い関心があったこと、成長市場であること、そしてアフリカ諸国の大半は英語が第一言語ではないことがアフリカ事業を志望した主な理由でした。当時もまだ英語を話すことへのコンプレックスが拭い去れておらず、それでも第一言語でない国ならもしかしたら何とかなるのではないかと甘い期待を抱いていました。ただ、入社早々、そのなけなしの自信が木っ端微塵になるような出来事に直面します。

     最初は日本から海外の現地法人の営業支援を行う業務に就いたのですが、オフィスにかかってきた電話をとったところ、受話器から英語で「Hello」のひと言が聞こえました。その瞬間、私は頭の中が真っ白になってしまい、言葉が何も出てこず、受話器を握りしめたまま硬直してしまったのです。後で周囲の人に聞いたら「Hello, Hello……?」と続く英語に2,3分は無言で凍りついていたとか……。もう情けないやら恥ずかしいやら、泣き出しそうになったのを今でも覚えています。

     現地法人と英語でのやりとりがあることは事前に知らされていましたし、心構えもできていたつもりでした。おそらく、入社早々で失敗したくないという緊張感と英語への潜在的な苦手意識が表出してしまったのでしょう。これがきっかけとなり本気で英語を学ぼうと決心がつきました。

     それまでも英語の本を読んだり海外のニュースサイトを見たり、英語に触れる機会を意識的につくるようにしていましたが、それらに加えて本格的に英会話の学習をすることにしたのです。主に活用したのは、英語を教えたい人と学びたい人を繋ぐマッチングアプリです。同じ英語でも国や地域によって発音や言い回しに違いがあるので、私がこれから深く関わっていくであろうアフリカ系の先生を見つけて毎日30分ほどオンラインでレッスンを受けました。また、英語の動画をシャドーイングすることで語彙を増やしました。

     地道な学習を積み重ねた結果、入社5年目の2019年にケニアのナイロビ事務所に赴任する頃には以前より自信を持って話せるようになっていました。ナイロビ事務所では日本人は私一人だけという環境でしたが、周囲に支えられながら、ビジネスの場面で英語を使って提案や交渉ができるようになりました。私は東アフリカ地域の官庁や行政組織を中心としたお客様に生体認証技術の営業を行っていたのですが、そこでは英語を使ったコミュニケーションを前提に、さらに覚えたての現地公用語(スワヒリ語)を交えながら関係を構築していきました。

     ケニアには3年滞在し、2022年の春からは再び日本の本社で勤務しています。NECでは現在、地球規模で発生するさまざまな社会的課題の解決をビジネスとして捉え、国際機関や現地政府などとパートナーシップを組みながら、そのためのイノベーション・ビジネスモデルの創出を進めています。これは日本企業の中でも新しい取り組みであり、グローバル課題への挑戦の一つだと感じています。私個人の今後の目標としては、NECのその動きを踏まえて、これが自分の専門分野といえるものを一つつくりたいと考えています。それをきっかけとして、さらに自分の世界を広げていけるのではないかと期待しています。

     実は、ナイロビ事務所の所長は南アフリカ出身の人でした。私が大学時代に南アフリカと関わりがあったことを彼に話すととても興味を持って聞いてくれ、そこからよりよい関係を築くことができました。また、私は大学で英語に触れたことをきっかけに南アフリカやフィリピンと関わりを持ち、そこで育まれた開発途上国への関心によって入社した会社でアフリカ事業に携わっています。過去の経験がきっかけとなり現在の自分に思わぬ形で貢献してくれたり、可能性を広げてくれたりする。私のこれまでの歩みには、そういうことが多かったと思います。そして、これからの人生にもたくさんあるはずだと楽しみにしています。

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    点と点がつながって線となり、思わぬ形で道がひらけることもある。それを楽しみながら、世界の課題解決に貢献していきたい。

    ――北濱さんが大切にしていること

    努力を重ねること、相手を尊重することを大事にしていきたいと思います。私の英語習得の道のりはけっして順調ではありませんでしたが、一つひとつの積み重ねを経て、ビジネスで通じる言語と自信を持てるようになってきました。また、私はケニアに赴任したのを機に、現地語であるスワヒリ語の勉強も始めました。といっても未だに流ちょうには話せず、知っている単語をカタコトで繋ぐ程度です。それでも相手は「この人は自分たちの文化を尊重しようとしてくれている」と感じ、打ち解けてくれることがあります。まずはこちらから相手の文化に歩み寄り対話を重ねること、そのための努力をこれからも続けていきたいと思います。

    グローバル人材育成プログラムについて

    IIBCは、国境のみならず、あらゆる境界を越えて世界で活躍する人材を育てたいと考えています。グローバル化やデジタル化で世界がますます複雑化していく時代に大切な「個としての軸」「決断力」「戦略・ビジネスモデル創出力」「異文化理解力」「多様性活用力」「コミュニケーション力」。グローバル人材育成プログラムは、これらを学び、考え、育む機会を、EVENTやARTICLEを通じて提供していきます。

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