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国際連合広報センター所長 根本かおる 氏 身近な物事を世界とつなげて考え行動することで広がる世界国際連合広報センター所長 根本かおる 氏 身近な物事を世界とつなげて考え行動することで広がる世界
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身近な物事を世界とつなげて考え行動することで広がる世界

国際連合広報センターの所長として、国連活動の広報に携わる根本かおるさんは、これまで、国連職員として数々の途上国に赴き、難民問題に真っ向から取り組んできた。グローバル人材とは、必ずしも世界に打って出る人とは限らない。「自分の身の回りの課題と世界の課題をつなげて考えること」こそ、グローバルな視点として不可欠だと、自らの海外経験をもとに根本さんは語ってくれた。

    プロフィール
    根本 かおる(ねもと・かおる)
    1963年兵庫県生まれ。1986年、東京大学法学部を卒業後、テレビ朝日にアナウンサーとして入社。3年後に同局初の政治担当の女性記者として報道局政経部記者に異動。1994年、休職して米国コロンビア大学大学院に留学し、国際関係論修士号を取得。1996年から2011年末までUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)にて、アジア、アフリカなどで難民支援活動に従事。ジュネーブ本部では政策立案、民間部門からの活動資金調達のコーディネートを担当。WFP(国連世界食糧計画)広報官、国連UNHCR協会事務局長も歴任。フリージャーナリストを経て2013年8月より現職。

    「どうせ」は禁句。強い想いは必ず伝わる

    国連副事務総長を囲んで、国連広報センターの職員・インターンのみなさん

    訪日されたアミーナ・モハメッド国連副事務総長を囲んで、国連広報センターの職員、インターンのみなさんとともに。 ©UNIC Tokyo

     現在は、国際連合広報センターの所長として、国連活動への関心を高めるための広報活動に従事していますが、組織のトップとして大切だと思うことが2つあります。1つは「人を束ねる」ということです。スタッフそれぞれがもっている力や長所を見極め、健康状態ややる気などを見ながら、より高いレベルにもち上げるための動機づけをしていく必要があります。もう1つは「結果主義」であること。短・中・長期で自分達が目指していく方向性を示し、どんな結果を出さなければいけない場面なのかをしっかりと共有しなければなりません。
     現在のチームは私を含めて7名、職員全員が日本人で、国連の事務所としては例外的な環境です。国連の組織として、共通の目標や中・長期的なビジョンを常に共有し、それをニューヨークの国連本部をはじめ、世界中の人々と共有すること、「世界的な組織である国連の一部である私達」という高い次元の意識をもってもらうように動機づけることを心がけています。

    SDGsを知ってもらうための広報活動の様子

    「SDGsを私達の暮らしにかかわる課題として敷居を下げて伝えたい」という想いから、吉本興業のみなさんにご協力いただき、笑いやエンターテインメントを通じてSDGsを知ってもらうための広報活動に取り組んでいる。

     私達は国連のグローバルなメッセージや価値を日本の文脈を考慮しながら日本語で伝えるという役割も担っており、いまはSDGs(持続可能な開発目標)の浸透に力を入れています。持続可能な社会をつくるために、政府や国連機関だけでなく、民間部門、一般の市民を巻き込みながら広報活動に取り組んでいます。2017年の春からは吉本興業さんとのコラボレーションが実現し、大型イベントではSDGsを特別企画として取り入れてくださっています。敷居が高いと思われる課題でも、笑いに包んでメッセージを伝えてくれる。私は関西出身なので、お笑いに対するリスペクトの気持ちがあり、ぜひ吉本興業さんにという想いを数年前から温めていました。それが実現することとなったわけですが、人を説得するうえで大事なのは、最終的にはやはり「情熱」や「強い想い」なのだと思います。私の辞書には「どうせ」という言葉はありません。「どうせ私なんて」「どうせやってもムダだろう」などと言う人がいますが、「どうせ」と思った瞬間に、すべての可能性の芽が摘まれてしまうと思います。

    足元の課題を世界とつなげて考えてみる

    ケニア難民キャンプの子ども達と交流する根本さん

    ケニアの難民キャンプを訪れ、子ども達と交流する根本さん。

     これまで世界のさまざまな現場を見てきましたが、必ずしも「世界に打って出る」ことだけが、グローバル人材のあり方ではないと思います。例えば、いま着ている洋服がどの国で誰によって作られたのか、そういったことを出発点に、いろいろな物事を世界とつなげて考えてみる。人権や環境破壊、流通の課題などに思いをめぐらせるのです。足元の課題と世界の課題をつなげて考えることは、日本にいてもできるのではないでしょうか。
     また、他人の立場になって、痛みを理解するイマジネーション力も大切です。自分に置き換えてみたらどうだろうと想像できる力というのは、世界の人達とつながっていくうえで不可欠だと思うのです。
     多国籍のスタッフと仕事をしてきて感じるのは、日本はコンセンサス型の社会ですから、立場や考え方の異なる人達の意見を聞いて、落としどころを探る力が当たり前のように備わっているということ。この段取り力と調整力は、たいへんな資質であり美徳です。調停や平和構築、組織間の調整といった場面で、日本人としてより一層力を発揮できるのではないかと思っています。
     若い世代のみなさんには、世界のできごとに対して大いなる好奇心をもってほしいと願います。そして、世界とつなげて考える、行動することで、自分自身の考え方や暮らしが豊かになるということを伝えたいですね。一人ひとりがそのような心をもって暮らしていけば、社会はもっと成熟したものになるはずです。

    グローバル人材育成プログラムについて

    IIBCは、国境のみならず、あらゆる境界を越えて世界で活躍する人材を育てたいと考えています。グローバル化やデジタル化で世界がますます複雑化していく時代に大切な「個としての軸」「決断力」「戦略・ビジネスモデル創出力」「異文化理解力」「多様性活用力」「コミュニケーション力」。グローバル人材育成プログラムは、これらを学び、考え、育む機会を、EVENTやARTICLEを通じて提供していきます。

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